"グーグル ネット覇者の真実~追われる立場から追う立場へ~"の感想
Googleの創業からつい最近の中国撤退や本のスキャン問題まで扱った本になります。
IPO前後にGoogle本は多く出ていた時期にいくつか読んでいるため、創業時の大まかな話は知っていましたが私が読んだGoogle本の中では本書はもっとも詳しいと思います。
中国撤退の話は中国からアタックが契機かと思っていたのですが、違うのですね(それが不満を爆発した理由のようですが)。
中国政府による圧力(検索キーワードの除外と短期間の停止)と中国ユーザの反応(短期間の停止が海底ケーブルの問題だと思っている)があまりにも違いにぞっとしました。本書が全て真実を語っているか私には調べる術がないため判断できませんが、中国で商売するのは難しいそうですね。また、政府のコントロールがここまでできるのかと思うほどです。
また、Google Chinaメンバーの対応、マウンテンビューにいるメンバーの意識が違うのも大きいですね。文化や商慣習の違いと言ってしまえば簡単なのですが、文化の違いを解消するには相当大変なことなのでしょう。
Googleが以前政府から要請があったコンテンツ削除及びユーザ情報の提供状況を"Google Transparency Report"で公開しています。この数字を見ると考えさせられます。
本のスキャンに関してもGoogleは非常にもめました。
"20歳のときに知っておきたかったこと"には、"許可を得るな許しを請え"とあります。Googleの本のスキャンはこの方針です。確かに非デジタル情報は持ち運びも運用も決して楽ではありません。このため、スキャンして検索できることは有意義ですし、それによる本の購入を促すことになれば著作者にはメリットがあります。知らないこと=存在しないことなのですから。
日本でも著作権を持つ方々が自炊業者を訴えることがありました。確かに現状自炊業社は" #333333"よりも真っ黒です(個人利用じゃないですからね)。ですが、ユーザは何を望んでいるのでしょうか?すばらしい作品でしょうか?それとも手軽に手に取ることが出来る作品でしょうか?
現在は紙と言う前時代的な製造・輸送・保管にコストがかかるメディアで配布させていますが、本当にみんなあんなものを今でも望んでいるのでしょうか(重いiPadで本を読みたいとは私は思いましませんが)。Googleの本のスキャンはユーザの利便性を追求した行為であり、確かに現状著作権者とはそりが合わないことでしょう。
ですが、お互いに解決策を模索することはできるはずです。将来的に本はほとんどがデジタル化して、紙の本は一部の好事家か紙でしか表現できないようなものしか売られなくなるでしょう(コストを考えても早く転進して欲しい)。このため、現状の電子書籍が網羅されていない状況は単なる過渡期でしかありません。たぶん今本のデジタル化に関しておきている問題の多くは、将来的に”そんな時代もあったね”で終わるでしょう。いつまでも紙しかないなんてありえません。
このため、最終的にはGoogleの行為は悪くないと思いますが、もう少しソフトランディングでいけたように思えなくもありません。ただし、時間との勝負を考えるとGoogleやAmazonの様な強引な進め方のほうが時間ロスがなくて良いのかも知れません。特に日本の電子書籍の状況を見るとあまりにもソフトランディングされることばかりパワーを使って、逆にみんながアンハッピーになっているように思えます。"許可を得るな、許しを請え"を実践するリーダーのほうが相対的コストが少なくなっているのかも知れません。
後、Googleが試したマネージメントのひとつであるOKR(目標と主要な成果)に関して業務的に効果的とあります。OKRはアンドリュー・グローブの"インテル経営の秘密"にあるとありますが、読んでなかったかな...探してみようと思いました(本ブログのタイトルにあるとおりグローブ氏の本は大概読んでいるはずなのですが、記憶にない)。
本書はGoogleが協力して書き上げられたため非常に面白い本になっています。特に最近の話(中国問題と本のスキャン問題)は割と詳しいと思います。一度手にとって読んでみても良いのではないでしょうか。ただし、600ページクラスなので電車通勤で読むのは苦痛でした。この本こそ電子書籍にして欲しかった。