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"スティーブ・ジョブズ II"の感想

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"スティーブン・ジョブズ I"の続きです。Apple復帰から病気療養までになります。スティーブ・ジョブズ物語としてはここから本番です。

実は私は本書で知りたかったことが2つあります。1つ目はiOSのアプリ展開がどうしてiPhone発売からしばらくたった後だったかと2つ目がA4/A5のARMチップ製造を決断したことです。

前者の答えは、本書のなかで少しだけ触れられています。当初はジョブズ氏は反対していましたが、シラー氏などが説得してアプリを作れるようになったようです。マイクロコントロールしたいジョブズ氏によって今のアップストアの形式に落ち着いたようです。これが今のところいい方向に向かっています。

Androidマーケットとよく比べられていますが、どちらがいいかと言われれば今のところアップストアの方が分がいいでしょうか。もう少しセキュリティ面のコストを払えばAndroidマーケットも良くなると思います。

A4/A5の製造に関してはトニー・ファデル氏の発案で、ジョブズ氏が押されて決断したようです。マイクロコントロールしたいジョブズ氏の発案かと思っていました。この決断は当初は私は懐疑的でしたが、iPadへの展開やモバイルゲームプラットフォームの可能性を見ているとA4/A5の製造設計は悪い選択肢は思えなくなってきました。今後の製品次第では好手になるかも知れません。そうなるとある時期に半導体Fabとか持ってしまうこともあるのでしょうか(ジョブズ氏がいないからそれは無いか)。

なぜ、Appleがジョブズ氏の復帰でどうしてここまで復活を遂げることが出来たかに関しては、よく言われるのが集中と選択だと言われていますが、それはまた別のことではないかと思えてなりません。

最初のiMacで複数色をアイブ氏(デザイナーの方)がジョブズ氏に提示したところ、30分もしないで経営幹部を集めて新色を採用を決めた話が復活した要因の一つではないかと思います。アイブ氏が語っているようによくある組織では新色を採用するのにコストや流通など数ヶ月議論するのに、それをたった30分で決めることが出来るスピード感がジョブズ氏をトップにいただいた組織の優秀性が垣間見れる逸話です。

不採算部門の廃止やMacを4つのカテゴリのみ減らすことを決めたスピードもやはり強いトップだから出来たことでしょう。

ただし進路を間違わなければの話になります。

ジョブズ氏でもいくつかの失策しています。例えばiPhone 4の電波状況の問題の引き金はジョブズ氏(とデザイン部門)の失態でした。iPhone 4の失敗は、うまく回避は出来たと思います。

ただ、いつも独裁的かと言われるとそうでもない場面も紹介されています。

例えば、iPodをWindowsで使用できるようにしたときはジョブズ氏は反対だったらしいですが、幹部全てWindowsでの使用を訴えて採用になりました。結論としてiPodが大量に売れたのはWindowsに対応したためでしたし、それにともなってMacの売り上げにも寄与しています。iPhoneの外部メーカによるアプリを許容する話も同じです。

独裁者でも必要ならば意見を聞くのでしょう。ただし、現実歪曲空間の使い手だから以前からその傾向はありましたが。後半では現実歪曲空間に関する言及が少なくなってきた感じがします。

また、ジョブズ氏の"自分で自分を食わなければ、誰かに食われるだけ"の言葉が紹介されていますが、非常に大きな意味合いがあります。過去にデジタルオーディスプレイヤーが普及しなかったのはCDの売り上げを守るためだと言われています。探せば他にも似たような事象があるでしょう。

ですが、AppleはiPadでMacbookの売り上げを落としていることを関わらずチャレンジしています。そうしなければ、誰かが似たような製品を出して食われることがおきるためです。ですが、自分で自分を食えば損害の割合は小さいでしょうし、イノベーション阻害の要因もありません。iPodのラインナップを見てもその傾向があります。

ジョブズ氏は後半のAppleの復帰後の結果はすばらしいものがあります。ジョブズ氏の功績は多くありますが、最後の作品はAppleだと思います。ジョブズ氏の引退後でも変わらずイノベーションをおこなす製品群を提供することが出来れば、それはジョブズ氏のすばらしい組織を作り上げた功績ではないでしょうか。

本書の最後にジョブズ氏の言葉が加えられています。"最後にもうひとつ"はかなり印象的でした。

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