"IBM 奇跡の“ワトソン”プロジェクト"の感想
IBMがJeopardy!(ジョパディ! or ジェパディ!)と呼ばれるクイズ番組に勝利するためにワトソンを作りました。本書はワトソンをプロジェクトX風に紹介(冗長な説明が多い気がしますが)した本になります。ジョパディ!はちょっと難しいクイズ番組なので、WikiPediaを参照することをお勧めします。
ワトソンは、チェスの世界チャンピオンに打ち勝ったディープ・ブルーの後継の開発として行われました。現在のところチェスは既にコンピューターが人間を超えたと言われています。将棋は2010.10にあから2010が清水女流王将に勝利後、対戦がされていませんでしたが、2012.1に2011年チャンピオンのボンクラーズが米長邦雄永世棋聖がチャレンジすることになっています。 今のところ将棋は人間超えが確定しているわけではありません。囲碁はまだコンピューターは勝てないと言われています。これは打つ手が量に差があるためのようです。
IBMとしては、チェスの後にどのようなことをすべきか難しいものがあったでしょう。もうゲーム系は継続できなかったでしょうが、それ以外は人間との壁もあるため安易に採用しづらいものがあったでしょう(むやみに負けるわけにもいきませんし)。ジョパディ!への挑戦も勝てる保証も無かっただけになかなか挑戦だったと思います。
結果はワトソンの圧勝で、チャレンジは成功になりました。
ただワトソンの開発は単に試合に勝利することだけが目的では無いため、就職先が必要です。コールセンター等いろいろと模索されているようですが、未だに決定的な箇所が無いそうです。私もこのニュースを最初に読んだときに、この機能をどこで使うのか疑問でした。ジョパディ!で勝ち続けて賞金を得ることもできませんしね(2011.2の試合の賞金は全額寄付されている)。
ですが、AppleがiPhone 4Sで音声入力によるサポートサービスであるSiriを発表して、風向きが大きく変わったと思います。Siriは文脈を考えて、行動を取ってくれます。ユーザにとっては、UIに音声が加わっただけに見えますが、Siriの可能性は相当高いと思います。
ワトソンはジョパディ!にあまりにも特化しすぎていますが、両者は同じ方向なのではないかと思えてなりません。曖昧な情報から状況を判断して、答え(もしくは行動)を導き出しています。思考が人間的以上に出来る可能性があります。
Siriはクラウド側で解析しているようです(このため、iPhone 4Sに限定している)が、ワトソンはサーバ側でクイズの解答考えています。IBMが今のところワトソンの就職先をコールセンター等と模索しているようですが、過去のデータを活用する領域にはほとんど進出できるのかもしれません。
本書はワトソンがジョパティ!に勝利までの苦労が書かれていますが、将来においてそれがターニングポイントだったと言われる時代が来るかも知れかも知れません。