特殊な業界の単位系
CERNでヒッグス粒子が探索の報告がありました("ATLAS実験とCMS実験がヒッグス粒子の存在を示唆")。
ヒッグス粒子の質量に関して"115-141GeV/c2"とか"116から130GeV"とかありますが、高エネルギー物理学の質量の単位はeVです。
eVの単位はエネルギーを表します(詳細はWikipediaに)。ですが、高エネルギー物理学では質量を表す単位としても用いられています。
その理由は物理学で最も有名なエネルギーと質量の等価交換を表した公式の登場を願いましょう。
E=mc2
Eはエネルギー、mは質量、cは光速です。この公式はエネルギーと質量は交換可能を示唆しているため、m=E/c2となります。E(エネルギー)の単位がeVなので、mの単位はeV/c2となるように見えます。
光速は三大物理定数の一つと呼ばれるほど不変な値です(最近ニュートリノが光速超えを果たしたかも知れない実験結果が発表されましたが)。このため毎回計算するのは面倒ですし、光速なんて誰(すいません即答できません...c=1が身についていたので)でも知っている値ですし、書くのも面倒です。
なので、高エネルギー物理学では、c=1で計算することにしちゃったのです。
物事は相対評価しかしないので、c=1でも実質問題はありません。グラムに変換して表示する必要性は皆無ですし、出されても見るのも書くのも面倒です。
このため素粒子関係の質量単位はeVが正しいです(一般的ではないですが)。CERNが公開しているグラフなどをみてもeV/c2の表記は一切ないはずです。
ついでに素粒子の発見時期と重さは以下になっています(Wikipedia参考...ストレンジクォークの発見時期がかいていないので記載せず)。
μ 105MeV 1936年
アップクォーク 1.7Mev 1968年
ダウンクォーク 4.1MeV 1968年
チャームクォーク 1.27GeV 1974年
τ 1.77GeV 1975年
ボトムクォーク 4.19GeV 1977年
ウィークボソン 80.3GeV/91.1GeV 1983年
トップクォーク 172GeV 1995年
ヒッグス 1**GeV 2011/2012年?
どんどん重い粒子が見つかっています。これはその粒子を生成できるほどエネルギーを作る装置のコスト及び技術が必要なためです。このため、徐々に重い粒子が見つかってきています。
ウィークボソンもCERNで見つかっているはずです(発見グループのボスは他グループの嫌がらせとかして発見第一人者になったとか...また聞きなので本当か知りませんが)。
残っている素粒子で見つかっていないのは重力子だけになります。見つかればそれこそ世紀の大々発見でしょう。ただし、検出するには技術的ブレイクスルーが必要なような気がしますが。
単位系一つとってもその業界の慣習によって違うものです。wikipediaでも明確に記載がありませんね。