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核反応ってどうして熱が出るの

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139I等が検出されてもめている核分裂炉(こんな表記もあるらしいです)ですが、核分裂の動作に関して軽く説明してみます。

原爆や核分裂炉で良く使われる235Uはどのように反応しているかは以下になります。

235U + n →95Y + 139I + 2n
(nは中性子)

端的に言えば、235Uに中性子がぶつかってより軽い原子核に分裂します。

物理法則は基本的に何でも保存します。質量保存の法則、運動量保存の法則、レプトン数やスピンや電荷なども基本的に左の式から右の式に移動しても何でも保存します。ですが、上記は核分裂は質量が保存されていません。

ここで物理で最も有名な公式の出番になります。アインシュタインが発表した静止状態のエネルギーの質量の等価性の公式です(光速に近づくと違う公式になりますが、ここでは関係がない)。

E = mc2(cは光速)

これは、質量(m)をエネルギー(E)に変換可能であることを示しています。核分裂による生成物の質量が欠損してそのぶん熱になります(一部運動エネルギーに使われる)。この熱で水を沸騰させてタービンを回して発電します。

ただし、ここでもう一つ重要なことがあります。235Uは、軽い原子になる理由は、より安定した物質に移行しようとするためです(大概物質はより安定したものに移動しようとするものです)。これを端的に現したのが、結合エネルギーと質量数(陽子と中性子の数)の関係のグラフです。

(出典:ミクロの世界2-3:原子核の質量,結合エネルギーの一番下の図です。とてもわかりやすいサイトで参考にさせていただきました。もし勝手にグラフを使用を禁止されれば削除いたします)

ここでこのグラフを説明すると、質量数が最も軽いH(水素)から始まり、右へ行けばいくほど重い原子を示します。小難しい計算式もありますが、ここではグラフのイメージだけ理解すればいいと思います。また、Wikipdiaの核分裂のページに結合エネルギーのグラフを入れたほうが分かりやすくなると思います。

結合エネルギーは誤解を承知で説明すれば、この数字が大きいほど安定であることを示します(安定を示すために逆のグラフもありますね。そちらのほうが安定であることが見た目で分かりやすいと思いますが、私も学生時代は上の様なグラフで勉強したので、一般的に物理を学んだ者には上のグラフの方が見慣れています)。また、最も結合エネルギーが大きくなるのは56Feになります。原子核で最も安定しているのはFeになるわけです。

Feより重いものは、核分裂を行いFeに近づきます。また、上記のグラフの差分が欠損質量=核分裂時のエネルギーも表しています。

Feより軽いものは当然のように核分裂してもFeに近づけれるわけではありません。分裂の逆の核融合を行い重い原子核になり、Feに近づきます。核融合は太陽などで行っている物理現象です。恒星のサイズ次第では、最後Feの星になる可能性もあります。太陽は小さすぎるため、Feの星までたどりつけません(もっと手前で終焉を迎えます)。

よくある核融合のモデルは以下になります。

D(重水素) + T(三重水素) →4He + n

核融合は、核分裂と違って放射性物質は生成しない場合が多いです(まったくしないかな?)。このため、以前は核融合炉は期待されていました実現が難しく夢の装置とも言われていました。ですが、今は夢でないレベルにきているそうです。とは言え、核融合炉でも中性子は出ますし、他にもいろいろと問題があるようです(すいません、そこまでは詳しくはありません)。

現在の日本ではもう核分裂炉の新設は難しいでしょう。アメリカもスリーマイルの事故から新しく作ることはできなくなったそうです。とは言え、現在の関東の電気使用量を見るかぎり、核分裂炉なくして立ち行かないのも現実です。節電は何も今回の問題が発生する前から行うべきだと思いますが、経済活動の支障がでるほどの過度な節電は難しいものがあります。

とはいえ、他の発電システムは大なり小なりの問題をはらんでいるのもまた事実です。マグネシウムを使ったり、効率的な炭化水素を生成する藻等の新しいエネルギー生成方法を模索されていますが、未だに決め手があるものが存在していません。

新しいエネルギー製造システムの一つに核融合炉がありますが、いつ運用できるかわかりませんし、核分裂炉に対してどの程度放射線関連でクリーン化も重要になります。核融合炉の導入するときに地域住民への、核分裂炉との違いを説明するのになかなか理解してもらえないかも知れません(このエントリは核分裂炉と核融合炉の違いを理解してほしいためですが...これを読んでくれた人が覚えてくれている間に実現できるか怪しいものです)。

エネルギー問題は本当に難しいものですね。今回の節電でいやと言うほど理解できました。

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