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NVIDIAのメディアタブレット戦略

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後藤弘茂のWeekly海外ニュース
NVIDIA CEOが語るタブレットの未来【前編】
NVIDIA CEOが語るタブレットの未来【後編】

NVIDIAがTegra(2008/6)を発表したときに私は、"なぜスマートフォン向けを?モバイルゲームコンソールにでも入れるのか?CPU(x86)を開発したほうが良いんじゃないの?"と思ったものです。

当時は、NVIDIAはGPUで好調だしたがスマートフォンの勢いが現在ほどではありませんでした。TegraはAtom対抗製品とも言われましたが、それならばx86を手に入れるか開発するほうがNVIDIAには良いのではないかと思ったものです。

また、最初のTegraは採用した製品は出なかったと思います。

ですが、私の将来を見通す能力がさっぱりなかったようです。

2010年になってメディアタブレットはiPadの大成功のおかげでブレイクすると言われています。また、斉藤さんの「iPadの衝撃。米国タブレット出荷台数は,2012年にネットブックを,2013年にデスクトップを凌駕する」にもあるとおりメディアタブレッドは、非常に伸びると予想されています。

大きなシェアを持つと予想させるメディアタブレット市場を、NVIDIAはTegra 2で乗り込みます。

後藤氏のNVIDIAのCEO Huang氏にメディアタブレットに関するインタビューの記事は、NVIDIAのメディアタブレットへの興味深い戦略が書かれています。

2009年にはARMを搭載したスマートブックが出てくると言われていましたが、その流れは現時点は無くなったようです(メディアタブレットが普及したら、キーボードをデフォルトとした製品が出てくるかも知れません。スマートフォンを見ていると若干ニッチかも知れませんが、ハードキーボードへの要求は根強いからです。)。

Huang氏がメディアタブレットに必要なの3つの条件として、タッチディスプレイ、モバイル向けプロセッサ、OSが揃うことだと明言しています。Appleはそれらを非常に早く、高い完成度で出すことができました。これはiPhoneで十分練習していたからでもありますが、垂直型プレイヤー(OSと製品を作れるという意味で)の最大のメリットです。

垂直型ができない水平型プレイヤーにはAppleほど早く・完成度が高いガジェットをだすことはできません。プロセッサーサプライヤーであるNVIDIAは強力なプロセッサは作れてもOSを作れるわけではありませんし、製品をだすこともできません。また、この分野ではAppleに対してライバルになれる可能性があるMicrosoftは、モバイルOSでは後手に回ったためメディアタブレットを現時点でも出すことはできていません。

ですが、その懸念事項はAndroidの登場(Google)で解決でき、Tegraを搭載する製品が2010年秋には出てくるそうです。特にTegraのメリットも生かす製品が出てくるようです。

Huang氏の発言にもあるとおり水平型のメリットは一度転がりだすとコストと多様性においては垂直型を上回ります。それがPCにおきたAppleとMicrosoftとの競争です(今はまたAppleに傾き始めましたが)。スマートフォン・メディアタブレットでも歴史は繰り返されるかも知れません。

このため、NVIDIAが市場拡大の可能性があるスマートフォン・メディアタブレットのTegraに注力するのは妥当な判断です。

NVIDIAのメディアタブレットの戦略の話を読むとQualcommのSnapdragonの開発とダブって思えます。SnapdragonはARM系チップでそれほど高性能なものが必要なのかと思っていましたが、現在の高性能なスマートフォンのデフォルトCPUとして人気です。

プロセッサメーカーとは言え、市場を作り上げるつもりで製品を開発しないとシェアを拡大することはできないのだと思わされました。

【メディアタブレット/NVIDIA】
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