先生方にプログラミング教育へ取り組んでもらうには?
情報教育に関するさまざまな取り組みをされている望月陽一郎 先生に、今シリーズでは「GIGAスクール時代のプログラミング教育は?」というテーマについてお話を伺いたいと思います。第3回目では「先生方にプログラミング教育へ取り組んでもらうには」についてお聞きします。
【望月先生 プロフィール】
大分県立芸術文化短期大学非常勤講師。ForbesJapan電子版オフィシャルコラムニスト。公立中学校理科教諭(理科)・大分県教育センター指導主事(情報教育)・大分県主幹等を経験されています。プログラミング関係では、自作の「micro:bit『サンプルプログラミング集』」をサイトにて公開されています。
望月陽一郎 個人サイト:http://mochizuki.net/
●先生方のプログラミング教育への取り組みは
―前回までのインタビューでは、全国の先生方にアンケート調査「GIGAスクール端末を用いたプログラミング教育について」をされた結果からピックアップしてお話を伺いました。
―アンケート結果を見ると、「学校で子供たちに対するプログラミング教育が行われているか」という質問に対して、「行われていない」は4.2%しかなく、アンケートに回答した先生方の学校のほとんどで、現在「プログラミング教育が行われている」ことがわかります。
―アンケート結果から、子供たちが普段使っているGIGAスクール端末は、Chromebookと iPadがほぼ同率で37%程度、Windowsタブレットは22%くらいと、学校によって選ぶ端末が違っています。望月先生は「プログラミングに使う端末」についてどのようにお考えですか?
「導入されているGIGAスクール端末のOS」
望月先生:GIGAスクール端末導入はは2020年度末には小学校・中学校ではほぼ完了しています。この比率はしばらく変わりません。ただ数年後には機器更新が必要になってきますが、価格の変動や使ってきた実績からこの比率が大きく変わるかもしれません。
この「プログラミング教育に関するアンケート」では、これまでとってきたアンケートよりも「iPadを使っている」という回答が多かったので、iPadでプログラミングに取り組んでいる事例が多いのかもしれませんね。
私は、iPadでプログラミング教材と接続するのに無線で接続しなければならない(USBケーブルによるプログラミング転送が標準ではできない)ので、難しいだろうと思っていたのです。ChromebookやWindows端末のほうが、USBケーブルによる接続でプログラムを転送できるので、その点ではプログラミングに取り組みやすいですね。
また、キーボード・タッチパッドが標準でついているため、ブロックプログラミング・コードプログラミングとも、iPadよりやりやすいと思います。
今後の更新では、機器のOSが変わることもありえるでしょう。
―「2022年度 所属先にプログラミング教育に関する分掌がありますか」では、情報教育担当が兼ねている50.4%、独立していないが担当する分掌はある12.6%となっており、6割強はプログラミング教育に関する分掌があることがわかりました。
望月先生:先生方のプログラミング教育への取組は
・・・先生方の取組に偏りがある
・・・研修が行われていたり、行われていなかったりする
・・・GIGAスクールにプログラミング教育が埋もれてしまっている
これらは、アンケートの記述で多く見られる回答です。
―「2022年度 先生方のプログラミング教育に対する意欲は十分ですか」についても、十分である4.2%、偏りがある(特定の先生のみが取り組んでいる)58.8%となっています。
また、「2022年度 所属先でプログラミング教育に関する校内研修や授業研究は行われていますか」において、行われていない51.3%という数値が出ています。
―情報教育に堪能でない先生方にとって、プログラミングを教えるのはご負担が大きそうです。望月先生のお考えを教えていただけますか。
望月先生:記述による回答にもありますが、GIGAスクール端末活用が優先され、小学校などではプログラミング教育の優先度が下がっているようです。
つい先日検定が終わった、2024年度から使われる教科書では、プログラミングに関する内容が、算数・理科以外の教科にも増えていくということです。取組に使える資料をどんどん増やし、使い方を紹介していくことが大切ですね。
―「2022年度 プログラミング教育に関する校内研修や授業研究が行われている場合、その回数は1年間に何回くらいですか。」については、年1回が62.3%、年2回が24.6%となっており、8割を超えます。
―研修会等を行なっている場合も1〜2回くらいが多く、大学等でプログラミングに関わっていた先生くらいでないと児童・生徒に教える負担が大きいのではないか思いました。
望月先生:研修を望む記述回答は多いものの、先生方の時間は限られているので、難しいですね。
―教育現場の実情について、貴重なお話をありがとうございます。今回が「GIGAスクール時代のプログラミング教育は?」シリーズの最終回ですので、最後にまとめをお願いできますか。
望月先生:よく使われている教材は固定化(使いやすいものが使われる)してきています。例えばScratch やmicro:bit。そういった教材を使えば、事例も多くあります。小学校では算数・理科だけでなく、他の教科でもプログラミングでよく使うトライアンドエラーの考え方は通用します。特定の教科に偏らず、普段からプログラミングの考え方を取り入れていくとよいですね。
「プログラミングを学ぶ3段階」資料の一部
私がよく話すのが、「まねる」→「変える」→「つくる」という段階を踏んでいくことで、考え方が身につくという「プログラミングを学ぶための3段階」です。
- まねる・・・サンプルプログラムをまねてプログラムの仕方を身につける。
- 変える・・・サンプルの一部を変えてみて、うまく動くかトライする。
- つくる・・・最初から自分でプログラムをつくってみる。
この資料を使っていろいろな場で先生方に伝えていければ、と考えています。
―望月先生がfacebookで紹介されていましたが、型がない人が型(基本)がないまま努力しても「形無し」、守・破・離をきちんと習得した上で型を破ると「型破り」という言葉を思い出しました。
型(基本)がないまま、がむしゃらにプログラミングの練習を繰り返してもなかなか上達できません。望月先生が今回ご紹介くださった「まねる」「変える」そして「つくる」を意識することで、基礎を習得し、根拠のあるプログラミングができるようになりそうです。トライ&エラーの大切さなど、大事な点をご紹介くださり、ありがたかったです。
―アンケートによる調査結果などを通して、プログラミング教育に関するお話をたくさんしてくださりありがとうございました。望月先生のお話がこの記事を読んでくださった皆様の参考になることを願っています。
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