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グローバル化する中で日本人はどのようにサバイバルすればよいのか。子ども×ICT教育×発達心理をキーワードに考えます。

今、学校でよく使われているプログラミング教材は?

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情報教育に関するさまざまな取り組みをされている望月陽一郎先生に、今シリーズでは「GIGAスクール時代のプログラミング教育は?」というテーマについてお話を伺いたいと思います。第1回目は「学校でよく使われているプログラミング教材」についてお聞きします。

【望月先生 プロフィール】

大分県立芸術文化短期大学非常勤講師。Forbes Japan電子版オフィシャルコラムニスト。公立中学校理科教諭(理科)・大分県教育センター指導主事(情報教育)・大分県主幹等を経験されています。プログラミング関係では、自作の「micro:bit『サンプルプログラミング集』」をサイトにて公開されています。

望月陽一郎 個人サイト:http://mochizuki.net/

●学校でよく使われているプログラミング教材は?

―昨年連載した「情報Ⅰ」についてのインタビュー記事では、特にプログラミング分野についての反響が大きく、印象的でした。読者の皆様の関心の高さが伝わってきます。

参考: 「情報1」のプログラミング分野について:教育ICT研究室
https://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/2022/08/informatics.html

全国の先生方にアンケート調査「GIGAスクール端末を用いたプログラミング教育について」をされたとのことですが、その調査結果に基づいて望月先生にご質問させていただきたいと思います。

―「プログラミングの授業を行っている場合、どういうプログラミング教材・プログラミング言語を扱っていますか(複数回答あり)」という質問の回答を見ましたが、Scratch(スクラッチ)が圧倒的多数で1位、Scratchの半数程度の値で2位micro:bit、3位がViscuit(ビスケット)となっています。

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「授業で使われているプログラミング教材・言語」
(複数回答あり・上位部分)

ビジュアルプログラミング教材・言語が人気のようですが、micro:bitはPythonなどコードでもプログラミングできるなど、それぞれ個性があると感じています。

望月先生から見たそれぞれの言語の魅力や、教える際の注意点があれば教えてください。

望月先生:回答されている先生方は、比較的プログラミング教育に取り組んでいる先生が多いのですが、Scratchは毎回多くの先生方が使っていると回答をしています。ビジュアルプログラミングで取り組みやすいというよさがあるからだと思います。micro:bitもビジュアルプログラミングですがコードでもプログラミングでき、対応できる幅が広いですね。高校「情報」の教科書にもScratchやmicro:bitが取り上げられています。

―「コーティング(テキスト入力でプログラミングする)。子供たちはいつ頃から始めるとよいと思いますか」という質問の但し書きに「(負担を感じない、ハードルが高くない、プログラミングを学ぶ段階として)」と書かれていますね。

以前、職業訓練校でプログラミングを教えていたことがありますが、大人になってから始めた場合も、アルゴリズムやプログラミングが苦手な人はいて、習得に苦しんでいらっしゃった記憶があります。

望月先生のアンケートでは、小学校3,4年生18.5%、小学校5,6年生30.3%、中学校37.8%となっており、幼年期はビジュアルプログラミング言語、小学校の高学年前後からコーティングに取り組むのが良いと先生方が考えていらっしゃるのではないかと思いました。

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「コーディングをいつ頃から始めたらよいと思うか」

コード入力を教える際に注意した方が良いことは何でしょうか。また、プログラミングの習得に困っている児童・生徒がいた際に、望月先生はどのように対応されていましたか。

望月先生:コーディング(コード入力)は、ベースがローマ字ではなく英語であるので、外国語が始まる小学校高学年から始めたほうがよいと考えている先生が多いのではないでしょうか。ローマ字で一部打ってしまったというスペルミスだけで、プログラムが動かなくなることがあります。ローマ字と英語の違いを先生方は最初によく押さえておく必要がありますね。私もコードプログラミングを教えてきた経験上、ローマ字入力に慣れている人のほうがスペルミスは出やすいです。

―「コーティング(テキスト入力でプログラミングをする)。をするのに負担を感じる、ハードルが高いと感じる理由」では、「コードを英語(ローマ字ではなく)で書かなくてはならないから」という回答が多いですね。

そして、小学校でも2020年から英語教育が始まったと以下の記事に書かれています。

参考: 【英語】小学校の英語教育はいつから、どう変わるの?
https://best-kobetsu.co.jp/column/2864/

時が過ぎて英語教育がさらに浸透していけば、小学生であっても上記の問題は改善されるものなのでしょうか?

望月先生:こういった記事もありました。

参考:英語好きの小学生が減少、中学生は成績が二極化の傾向 その原因は?
https://news.yahoo.co.jp/articles/6d61def3babd58dce0e82fb93c709f903afeee82

外国語教育でも、問題が少しずつ出てきているようです。コードプログラミングにも影響が出るのではないかと思います。

―記事を拝読しましたが、以下の点が特に気になりました。

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・・・定期テストの回を重ねるごとに90点台が減る一方で10~20点台が増え、3学期の学年末には中間層が少ない「ふたこぶ分布」になっていた。伊藤さんは「英語の4技能のうち、『聞く・話す』中心の小学校英語でつまずきが見逃されたまま中学校に入学し、『読む・書く』が重視される授業についていけない生徒が増えている」ことが原因ではないかと推測。

他の地域の定期テストや模試の結果を調べ、塾の先生らにも聞いてみた。同様の「ふたこぶ化」や、その前段階の可能性がある「均等化」が起きているケースが複数あったという。

https://news.yahoo.co.jp/articles/6d61def3babd58dce0e82fb93c709f903afeee82より引用

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―私は、「コーティング(テキスト入力でプログラミングをする)。をするのに負担を感じる、ハードルが高いと感じる理由」を質問する際に、「子供たちにとって、という限定ではありません」と先生が書かれている点は非常に大事だと感じました。

私は学生時代に日本文学専攻だったにも関わらず、家庭の事情でプログラマー(見習い)の職種に就職しましたが、学生時代にプログラミングを含むITを学んだことがなかったので、就職後、プログラミング経験者の他の同期と違い大変苦しい状況に置かれました。

学校の先生方も大学や大学院でプログラミングに関連することを学んだことがない長場合、研修会等に参加してもご苦労が多いのではないかと思います。

ハードルが高いと感じる理由で、「コードミス、文法ミスが多くなると嫌になる」と「文法の書き方(コードの書き方)が難しい」が特に多いのが印象的でした。

私がプログラミングの仕事をしていた頃の話で10年以上前になりますが、上記の問題を改善するため、Javaを教える際に「Eclipse(エクリプス)」という開発を効率化するための統合開発環境(コンパイラ・エディタ・デバック機能などがセットになったツール)を使っていた先生がいらっしゃいました。

参考: 今さら聞けない!「Eclipse」とは何か?キホンを解説します!
https://www.sejuku.net/blog/72127

学校環境の都合でEclipse(エクリプス)を使えない場合は、「サクラエディタ」を使って、プログラミング言語の文法やエラーがわかりやすいように工夫していた先生もいらっしゃいました。

参考:サクラエディタ
https://sakura-editor.github.io

プログラミングの授業をする際にこのようなツールを利用すると、「コードミス、文法ミスが多くなると嫌になる」「文法の書き方(コードの書き方)が難しい」と言う問題も改善できるのではないかと思います。

学校でこういった、プログラミングを補助するツールを使うことは難しいのでしょうか。

望月先生:子どもたちの一人一台端末には、端末に制限がかけてある場合があるので、まずその「ツールを使うことができるか」という問題があるかもしれません。

―そうなんですね。それでは難しいかもしれませんね。

―今回のお話のまとめなのですが、学校でよく使われているプログラミング教材は

  • Scratch
  • micro:bit
  • ビスケット

などが多いということですね。

望月先生:それらよく使われている教材を使うと、事例も多いですからね。より使われていくのではないかと思います

―確かに活用事例が多いと、現場の先生方にも参考になりますね。

―今回は、「学校でよく使われているプログラミング教材について」のお話をありがとうございました。

次回は今回のお話を踏まえて、「どの教科でプログラミング教育は行われているのか」について伺いたいと思います。望月先生、この記事をお読みくださった皆様、ありがとうございました。

>>「どの教科でプログラミング教育は行われているのか」に続く(2023年3月公開予定)

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