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教員のための仕事効率化 ー校務編ー ( 2021アップデート版 )

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以前公開した「教員のための仕事効率化シリーズ」をアップデートするというスタイルで、望月陽一郎 先生に再度お話を伺っています。第5回目は「校務(出勤簿)における時短術」を中心にお聞きしたいと思います。

大分県立芸術文化短期大学非常勤講師。Forbes Japan電子版オフィシャルコラムニスト。公立中学校理科教諭(理科)・大分県教育センター指導主事(情報教育)・大分県主幹等を経験されています。自作の「micro:bit『サンプルプログラミング集』2.0版」が、2019年第35回学習デジタル教材コンクールにて「学情研賞」を受賞されました。

望月陽一郎 個人サイト:http://mochizuki.net/

校務における時短術について

-先生方は教科の授業だけでなくそれ以外の仕事にも多くの時間を使われているのではないかと思います。そこで、それら校務に関する時短術について今回はお聞かせいただけますか。

〇「表簿」とは

望月先生:校務に関係するものとして、

  • 学校における公簿である「表簿」

とは何をさすかというところから考える必要があります。

法律には次のような条文があります。

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学校教育法施行規則

第28条 学校において備えなければならない表簿は、概ね次のとおりとする。

 1 学校に関係のある法令

 2 学則、日課表、教科用図書配当表、学校医執務記録簿、学校歯科医執務記録簿、

   学校薬剤師執務記録簿及び学校日誌

 3 職員の名簿、履歴書、出勤簿並びに担任学級、担任の教科又は科目及び時間表

 4 指導要録、その写し及び抄本並びに出席簿及び健康診断に関する表簿

 5 入学者の選抜及び成績考査に関する表簿

 6 資産原簿、出納簿及び経費の予算決算についての帳簿並びに図書機械器具、

   標本、模型等の教具の目録

 7 往復文書処理簿

○2 前項の表簿(第24条第2項の抄本又は写しを除く。)は、

   別に定めるもののほか、5年間保存しなければならない。

   ただし、導要録及びその写しのうち入学、卒業等の

   学籍に関する記録については、その保存期間は、20年間とする。

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望月先生:太字及び下線をつけた部分が、授業をされている先生方に直接関係するものですね。よく出てくる話として、ここに「通知表」はありません。通知表は公簿ではないので、作成義務もありません。なくてよいのですね。

-そうなんですね、知りませんでした。

私が表簿について気になったのは保存期間です。 数年前、教育免状を今からでも取得できるか調べた際、「高校の成績証明書等は卒業から20年経つと取れない」ことを知りました。知らない間に自分の情報が破棄されていることに気がついた次第です。

個人情報がずっと保存されるリスク・情報流出のリスクもあるとは思うのですが、「表簿がデジタルデータ化されていれば、半永久的に必要な情報を保存できるのに」と思ったものです。教育の現場で今、どれくらい表簿のデジタルデータ化が進んでいるのか、大いに気になるところです。

望月先生:条文で書いてあるように、デジタルデータでも「成績保存は5年」ですね。

-デジタルデータでも保存期間5年というのは驚きました。5年間に何か意味があるのでしょうか。

望月先生:学校ではずっと紙保存が前提でした。

場所をとる・紙が変質するなどの理由からか、保存年数が法律で決められているのだと思います。 もちろんそれを過ぎてすぐ廃棄(処分が難しい個人情報を含むので)しない・できない場合が多いですね。

-紙保存が前提なのですね。驚きました。

〇押印が多かったのが作業量を増やしていた?

望月先生:私は若い頃からパソコンで作業していましたが、データ保存が前提ではありませんでした。出力(印刷)して、押印(笑)。間違えたら訂正印を押す。

デジタルデータ保存がOKと示されているのは、指導要録ですが、電子押印(記入者が誰であるかの証明)のシステムが必要ですね。

-それらの公簿にそんなに押印が必要というのは驚きました。

望月先生:地域によると思いますが、休暇欠勤処理簿や出張命令簿などの書類がいまだに手書き・押印の学校はあると思います。

私が県行政にいた頃(10年以上前)は、すでに電子決裁だったのですけどね。学校現場に戻ったら手書き・押印でびっくりでした(笑)。
今は違うでしょうけどね。

-県では電子決裁なのに、学校現場ではアナログ決裁なのはどうして?と思います。

パソコンでデータ保存した方が便利だと思います。 使いこなせない先生がいるからとか、システム導入の必要があるからとか、何か理由があるのでしょうか?

望月先生:指導要録をデジタルデータ保存できるのは、「電子押印がある」前提ですからね。デジタルデータでただ保存するという単純なことではないのです。

指導要録については通知が出ていたという根拠がありますが、他の部分はまだまだシステム化が進まないのかもしれませんね。

また、「紙+押印」は安上がりです。電子押印を含むシステムを構築したり導入したりするには多額の予算がかかりますから。

最近やっと、名簿管理・成績管理・通知表・指導要録が一つのサービス(システム)でできる「校務支援システム」の導入が進んできたようですね。GIGAスクール端末の導入と合わせて、先生方のタブレット導入も進んでいる自治体が増えています。

〇出勤管理はタイムカードへ

望月先生:一旦システムが導入されてしまえば、楽になるのです。電子システムでは、紙の出勤・出張申請・残業申請もすべて電子決裁でした。

学校現場で一番デジタル化が進んでいるのは通知表だと思いますが、通知表は説明したように公簿(表簿)ではないので、比較的導入が早かったのでしょう。

-やはりシステムが入るかどうかがポイントなのですね。 公簿でないもののほうがデジタル化が早いというのは印象的です。

県で勤務されていた頃は出勤簿がなかったとのことですが、学校現場での出勤管理・タイムカードの扱いはどうなのでしょうか。

望月先生:数年前全国の先生方にアンケートしてみたことがありますが、その当時

  • 手書きで押印
  • ICカード
  • パソコン(ログイン時間など)

とさまざまでした。

タイムカードが正確な勤務時間を示すかどうかというと、タイムカードを押して残業する場合もあるということが最近問題視されています。それでは残業(時間外勤務)時間が正確には出てこないことになります。

〇出席簿の電子化

-デジタル化すると校務の時短化ができるのではないかと思ったのですが、まだまだ課題は多そうですね。他には「出席簿」とかはデジタルデータ化したほうが便利ではないかと思うのですが、そのあたりはいかがですか。

望月先生:出席簿のデジタルデータ化はけっこう難しいことです。

出席簿を扱うのは教室だけでなく、理科室や音楽室などで教科担任の先生のもとに出席簿が届き、そこでそれぞれの先生が記入します。 デジタルデータ化するということはすべての教室で入力できる環境にないといけないのです。

そのためには、

  • すべての先生方が入力用の端末(タブレットなど)を持っている。
  • 出席簿のデータにどの教室からもアクセスできる。

ことが必要です。

そのためには、ネットワークやアクセス権限も整備されないといけませんから、単にExcelデータに入力するというのではなく、電子認証を伴う「システム」も必要です。

-確かに通知表を含め表簿は個人情報の塊なので、セキュリティはどんな風にされているのかも気になりますね。ただ、学校現場でのデジタルデータ化は進んでおり、ある程度効率化されているものもあるという理解でよろしいでしょうか。

望月先生:私が若いころは、通知表や学級通信も「手書き」でした。高校受験に伴う調査書も1人ずつ緊張しながら書いたものです。

校務パソコン・教育用ネットワークが完備されてきてかなりの時間短縮がされてきたのは事実です。

-そうなのですね。ご教示をありがとうございます。今回は「表簿」を切り口にして校務の効率化を教えてくださり、大変ありがとうございました。よそではなかなか読むことのできない内容でした。現場経験の長い望月先生だからこそお話しいただけたことだと思います。また次回もよろしくお願いいたします。

>>「教員のための仕事効率化 ー授業編ー」に続く(2021年7月公開予定)

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