教員のための仕事効率化 -GIGAスクールアンケート編-( 2021アップデート版 )
シリーズとして、中学校で教諭(理科担当)をされてきた望月陽一郎 先生に「教員のための仕事効率化」についてお話を伺っています。アップデート版最終回の第6回目は、先生が実施されているという「GIGAスクール端末導入状況に関するアンケート」についてお聴きしていきたいと思います。
大分県立芸術文化短期大学非常勤講師。Forbes Japan電子版オフィシャルコラムニスト。公立中学校理科教諭(理科)・大分県教育センター指導主事(情報教育)・大分県主幹等を経験されています。自作の「micro:bit『サンプルプログラミング集』2.0版」が、2019年第35回学習デジタル教材コンクールにて「学情研賞」を受賞されました。
望月陽一郎 個人サイト:http://mochizuki.net/
GIGAスクール端末について
-望月先生は、GIGAスクール端末導入状況のアンケート調査(小学校中学校に導入されている一人一台端末に関するWeb アンケート)をされたそうですね。
望月先生:はい。昨年度急に前倒しで全国の小学校・中学校に導入されたGIGAスクール端末ですが、実際、どのくらい活用されているのか、現場の先生方にきいてみました。
- ほぼすべて導入見込みとされていた、2021年3月。
- 新年度が始まって連休に入った、2021年5月。
- 1学期が終わり夏休みに入った、2021年7月末。
と、3度実施して結果を集計しました。
-まず、GIGAスクール端末について、今一度説明をお願いします。
望月先生:全国の自治体・学校にGIGAスクール構想が知らされたのは、2019年末ごろだったと思います。
「子供たち一人ひとりに個別最適化され、創造性を育む教育 ICT 環境の実現に向けて ~令和時代のスタンダードとしての1人1台端末環境~」https://www.mext.go.jp/content/20191225-mxt_syoto01_000003278_03.pdf
教育委員会担当者の方々が、予算を獲得するために資料づくりにあわてて取り組んでいたのが、2019年の年末頃でしたね。
-それはずいぶん早いですね。全国一斉休校より前ですか。
望月先生:そうです。2019年度つまり2020年3月までに導入されば、予算的には国が100%補助の形になっていたからです。一斉休校より前に導入が終わっていた自治体はこういった取組が早かったグループですね。
2020年度に入ると補助が少なくなるという感じで、とにかく早く導入するように、ということだったようですね。
「令和元年度補正予算『GIGA スクール構想の実現』に関する説明資料」17P
https://www.mext.go.jp/content/20200323-mxt_jogai02-000003278_502.pdf
5年以内に小学校1年生〜中学校3年生まで導入完了という導入計画が示されていました。ところが、
- 一斉休校
- オンライン授業の必要性
- 2020年度以内に導入すれば補助がある
など、前倒しで導入しなければならない状況になってしまったのです。
-それだと早めに取り組んでいなかった自治体は、あわてたのではないでしょうか。
望月先生:実際には、
- 納入されたが、指示がなく使えない。
- 端末の設定がされていない。
- 納入予定だが実際には届いていない。
など、当初、2021年3月末までに96.5%の自治体が、子どもたちの手にわたり使える状態にする、という見込みとは違ってしまったのです。
「GIGAスクール構想の実現に向けたICT環境整備(端末)の進捗状況について」
https://www.mext.go.jp/content/20210518-mxt_jogai01-000009827_001.pdf
GIGAスクール端末に関するアンケート結果について
-では、先生がとられたアンケートの結果を教えていただけますか。
望月先生:全国47都道府県の先生方・教育委員会事務局などの方々から回答をいただきました。集計結果はあくまで回答中の割合であって、全国のすべての自治体の状況を示すものではありません。
導入されたか、活用が始まっているかという質問に対する回答をグラフ化したものについて見ると、
導入・活用状況(3月)
グラフの通り、3月末の段階では、
- 活用を始めている。
- 導入されたがまだ使えない。
- 導入されていない。
に分かれています。96.5%が活用を始めている、というのはやはり「見込み」だったようです。
導入・活用状況(5月)
一学期が始まり、連休くらいの時期になってくると、活用を始めている学校の率が高くなっています。
導入・活用状況(7月)
7月末、夏休みに入った段階では、ほぼすべての学校で活用が始まっているという回答になっているのが明らかですね。
-これはわかりやすいですね。気になった点が2つあります。「7月末、夏休みに入った段階では、ほぼすべての学校で活用が始まっている」ことがこのデータからよくわかりますが、オンライン授業はどの程度、進んだのでしょうか。
また、「GIGAスクール端末を持ち帰り可とするか、学校で保管して使用させるにとどめるか」の問題もあるかと思いますが、活用の推進とともに端末の持ち帰りも推進されたのでしょうか?
望月先生:オンライン授業については、いままさに必要性が問われていますが、1学期通常の授業が行われていた中では、オンライン授業はほとんど行われていなかったのではないでしょうか。
持ち帰りについては、
- 7月の時点で持ち帰っているという回答は4割ほど。
でした。そのうち夏休みに持ち帰っているのが8割。つまり回答全体の中で3割ほどの学校は夏休みに端末を持ち帰らせているようです。
一そうなのですね。この夏休みに持ち帰って学習に使っている子供たちがいるということがわかりました。それでは、最後にまとめをお願いできますか。
望月先生:以前のシリーズで、
もし1人1台の学習者端末が入ってきたとしたら、
- 教科書やノートへの記録がさらに簡単になる。
- 先生側から動画や説明も配信できる。個人ごとに見直すことが簡単になる。
- 自分の活動を記録することで、リフレクション(振り返り)が進む。
など、デジタル化のメリットをこれまでより受けるので、授業がスムーズに進むようになると思います。という話をしましたが、
例えば、端末と、
- Google Workspace
- ロイロノート・スクール
- Microsoft Teams
などのクラウドサービスを使えば、これらは実現できますね。
また、それだけでなく、先生と子どもたちの対話・子供同士の対話である「相互のデータのやりとり」が簡単にできるようになっているため、先生と子どもたちが向かい合っている、今の教室のあり方もこれから少しずつ変わっていくかもしれません。
子供たちに「ツール」としてどううまく活用させるか工夫・アイデアを出していくことも、これからの先生方が行う「授業づくり」の内容になっていくでしょう。さらに発想の転換が求められていきますね。
-ご教示ありがとうございます。端末が整備されたら端末を主役(授業の軸)にしてしまう実践が多くなりそうですが、あくまでも子供たちが授業を進めるための「ツール」であることを忘れてはいけないですよね。
学校における効率化についての連載は今回が最後となります。今回は、最新のデータで大きく内容をアップデートしたものになりました。望月先生のご厚意と読者の皆様に支えられての連載でした。望月先生、今まで読んでくださった皆様、大変ありがとうございました。当連載が少しでも皆様のお役に立つことを願っています。
また次回のシリーズでもよろしくお願いします。