教員のための仕事効率化 -授業編-( 2021アップデート版 )
前回から以前公開した「教員のための仕事効率化シリーズ」をアップデートするというスタイルで、望月陽一郎 先生に再度お話を伺っています。第2回目は「授業の時短術」を中心にお聴きしたいと思います。
大分県立芸術文化短期大学非常勤講師。Forbes Japan電子版オフィシャルコラムニスト。公立中学校理科教諭(理科)・大分県教育センター指導主事(情報教育)・大分県主幹等を経験されています。自作の「micro:bit『サンプルプログラミング集』2.0版」が、2019年第35回学習デジタル教材コンクールにて「学情研賞」を受賞されました。
望月陽一郎 個人サイト:http://mochizuki.net/
〇授業で時短できる部分とは
-デジタル的な時短術、アナログ的な時短術など、いろいろ組み合わせて授業されているかと思います。望月先生が授業で行っていた「時短術」の例を教えてください。
望月先生:先生が話して説明するという一斉講義型という意味でなく、クラスの子供たちが一緒に授業を受けるという意味での「一般的な一斉授業」では、
- 先生が説明する時間・・・先生
- 先生が板書する時間・・・先生
- 子供たちが板書を写す時間・・・子供
- 子供たちが考える時間・・・子供
- 子供たちが話し合う時間・・・子供
- 子供たちが実験や観察をする時間(理科での活動)・・・子供
- まとめをする時間・・・先生、子供
などが考えられます。限られた授業時間の中で最初の2つ、「先生が説明したり板書したりする時間」は縮められます。この時間を短縮することで「子供たちが考え、話し合って実験をする時間」をより確保できます。
〇縮めるための工夫「板書をできるだけしない」
「教科書を投影し、説明する」という工夫をしていました。
こうすることで子供たちは、手元に持っている教科書で説明を確認したり、メモしたりできるので、「子供たちが板書を写す時間」も結果的に短くなるのです。
全国の子供たちに貸与される「GIGAスクール端末」で学習者用デジタル教科書が使えるようになると、先生は指導者用デジタル教科書で説明し、子供たちは自分の画面(デジタル教科書)に書き込むようになるかもしれませんね。
-授業を行う際「これは極力しない」ということがあれば教えてください。
望月先生:話したように板書を極力しなかったことですね。黒板に書くのは、
- 関連について図示したり、まとめをしたりするとき
でした。項目と項目などを結びつけて考えるときといえます。「関連を図示」してまとめることが多かったです。
〇「スライド」はつくらない
また、「授業用のスライド」はつくったことがありません。教科書に書いてあることを、わざわざスライドにする時間がもったいないですし。また、子供たちがスライドを見て「わかったつもり」になるのを避けたかったからでもあります。
先生方向けの研修でもよく話したことですが、
「スライドは消えるもの(すぐに次の画面に変わってしまう)」
で、もともと記憶に残りにくいのです。
-確かにPowerPoint等のスライドは便利ですが、どんどん流れて行ってしまいますね。記憶に残したいものは表示したままにできる形(アナログの掲示物で見せる、板書する等)にしたいですよね。
望月先生:その通りです。
〇実物投影機を活用するメリット
-「教科書を投影し、その画面で説明する」方法として、実物投影機を使われていたということですよね。実物投影機を使うメリットを教えてくださいますか。iPadのカメラ機能で実物を撮影してもいいのではないか?と思ったからです。
望月先生:例えば、実物投影機の向きを変えることで、理科の授業で行う演示実験などを「横から映す」ことが簡単にできます。iPadのカメラでもできるのですが、うまく支えるスタンドがないと実験するために両手が自由になりません。
教科書やワークシートという平面的なものだけでなく、立体物も映すことができるので「実物投影機」なのです。書画カメラという商品名的な呼び方をする方がときどきいますが、理科で書画カメラと呼ぶのはちょっと違うと思います(笑)。文部科学省の「学校におけるICT環境整備について」でも「実物投影機」と書かれています。
-iPadのカメラ機能を使うのとは違うメリットがあるんですね。
望月先生:説明したり指示したりするとき、口で説明するよりも「そこにあるもの」を見せる方がわかりやすいですよね。
ビーカーに液体を入れるとき、「これくらい」とビーカーをただ大きく映せばよいのです。
動画(デジタル教材)を見せるという先生もいますが、実際に実験で使う器具で説明しないといけませんよね。
〇MicrosoftLens(OfficeLensから名称が変更されました)とは
-望月先生は「MicrosoftLens」というアプリを使ってワークシートを画像に変換する工夫もされているそうですね。AppStoreで確認したのですが、「Microsoft (Office)Lensは簡単に使える便利なスキャナ 」としても使えるんですね。「ワークシートを画像にする」メリットは何ですか?
望月先生:学校に勤務していた頃、授業でよく使っていました。
机に置いたプリントを撮影しようとした段階でプリントのふちが「自動認識」され、撮影された画像を2D(平面)にひきのばしてくれるのです。斜めから撮っても「真上から撮ったような画像」になるのです。
黒板を斜めから撮影しても、正面から撮影した横長の画像にしてくれます。便利ですよね。画像を加工する時間が不要ですから、とても時短になります。
-紙の書類や黒板など手書きのデータを簡単にデジタル化できるのは授業する上でも多くのメリットがありますね。
〇時短の効果は
-いろいろな時短術で時間を捻出したことで、子供たちの理解度など違いがありましたか?
望月先生:子供たちが活動する実時間が増えたので、いろいろ考えたりじっくりと実験したりする余裕が増えましたね。毎時間、授業の最後に「リフレクション(振り返り)シート」を書いてもらっていましたが、その時間がゆっくり確保できていたので、子供たちはじっくり頭をひねりながら考えていました。
これからは、端末でGoogleフォームに振り返りを入力するようになるでしょうね。
-GIGAスクール端末の導入・小学校でプログラミング教育が必修化され、来年度からは中学校でのプログラミング教育の高度化など、教育とICTの結びつきが強くなればなるほど、どうしてもデジタルな観点が注目されやすいのではないかと思います。
しかし、「授業全体を見通し時間の配分を考える」考え方自体が大切だと感じました。
>>「教員のための仕事効率化 -クラウド編-( 2021アップデート版 )」に続く(2021年4月公開予定)