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Withコロナを見通した教育ICT活用 -GIGAスクール端末の活用と注意点-

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2020年春は、新型コロナウィルス感染拡大の影響で学校が休校となり、教育現場では厳しい対応を迫られることになりました。そこで、シリーズとして望月陽一郎 先生に「Withコロナを見通した教育ICT活用」についてお話を伺っていきます。

【望月陽一郎先生・略歴】
大分県立芸術文化短期大学 非常勤講師。Forbes Japan 電子版オフィシャルコラムニスト。元公立中学校教諭(理科)・大分県教育センター情報教育推進担当主事・指導主事・大分県主幹等を経験されています。
望月陽一郎 個人サイト:http://mochizuki.net/

GIGAスクール関連の予算の確保について

Googleが作成したGIGAスクール関連の資料だと、予算の確保に課題があるという教育委員会が多い印象を受けました。

※教育委員会向けGIGA スクール構想リサーチ2020
https://services.google.com/fh/files/misc/giga_research_2020.pdf

GIGAスクール関連のグループでも、以前、端末だけでヘッドセットなど必要だと思われる周辺機器の整備がなかったという話題があったように思います。予算について、現状はどうなのでしょうか?

望月先生:もともと令和元年度(2019年度)〜令和5年度(2024年度)にすべての小学校1年生〜中学校3年生までに、一人一台の学習者端末を貸与するという計画でした。

※GIGAスクール構想の実現のロードマップ(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/content/20200219-mxt_jogai02-000003278_402.pdf

ところが今回の一斉休校を通して「1人1台端末」の必要性がクローズアップされたため、前倒しで今年度(2020年度)以内にすべて端末整備をすることになったのです。

※(リーフレット:追補版)GIGAスクール構想の実現へ(令和2年度補正) (文部科学省)
https://www.mext.go.jp/content/20200625-mxt_syoto01-000003278_2.pdf

この中には、「学校側が使用するカメラやマイクなどの通信装置等の整備を支援」も含まれているので、ここを自治体が予算化・整備していなかったということでしょう。

実際すでに整備が終わり日常的に使っている学校の様子を見ると、ヘッドセットを使って授業で使っている様子も見られるので、そういった自治体は整備の中に含んでいたということですね。せまい教室の中で、ヘッドセットはあるととても便利だと思います。全国学力テストなどでも、聞いたり話したりする場面が増えていますからね。

MicrosoftのTeamsGoogle for Educationの違いについて

-オンライン授業を行うにあたって、MicrosoftTeamsを使われている学校とGoogle for Educationを使用している学校があるようです。それぞれの個性と言いますか、違いを教えてくださいますか?

望月先生:

※Microsoft Teams
https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/microsoft-teams/education

※Google for Education
https://edu.google.com/intl/ja/

リンク先でわかるように、それぞれMicrosoftGoogle が提供している無料のオンラインシステムです。それぞれオンライン学習システムやオンライン会議システムを備えているので、大きな違いといえば、MicrosoftGoogleかということですよね。

ただ、一度使い始めるとずっとそのシステムを使い続けることになるので、最初にどちらを選ぶかで悩むことがあると思います。どちらも、WindowsChromeOSiOSどのOS(タブレット)でも使うことができるので、端末に依存する部分は小さいと思われます。

接続台数の問題について

-授業で使う端末以外にもアクセスポイントやホスト用PCにも接続台数を取られてしまい、ルータの余力がなくなってしまう問題が生じてしまうという話も聞きました。現場ではそういったルータの性能に関する問題をどのようにカバーしているのでしょうか?

望月先生:実際には、ルータの性能だけでなくそれらをつなぐ校内LANの機器・ケーブルの性能そしてインターネットに接続する回線の太さまで増強しないと学校内のすべての学習者端末を十分に活用することはできません。

ルータが配置されたけれども、ちょっと多くの台数を接続したらとても遅くて端末が動かない、という話は意外とよく聞きます。これは、校内の回線や学校からインターネットまでの専用線の太さが変わらないため、台数で割るととても細くて使い物にならない→使えない→使わない→アナログに戻るという逆行を招きかねない問題です。

ネットワーク増強については、先程示した令和2年度補正資料にも書かれています。トータルパッケージ(インターネットから端末まで)を構想している自治体はネットワーク関連もあわせて予算化し工事をしていると思います。単なるルータの問題ととらえるといざ使うときに動かない、ということになるので注意が必要です。

-なるほど。ネットワーク増強についてはトータルパッケージを意識する必要があるのですね。貴重なお話を今回もありがとうございました。

そして、「Withコロナを見通した教育ICT活用」の連載は今回(4回目)が最終回となります。今までお読みくださった読者の皆様、お話しくださった望月先生に大変感謝しています。

来年度には子供たち一人一人が端末を使う時代になります。そのころまたお話をきいてみたいと考えています。次回作が連載された際もどうぞ、よろしくお願いいたします。皆様、良いお年をお迎えくださいね。

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望月先生がmicro:bit を活用したプログラミング教育について、当ブログで連載した記事のまとめは以下の記事からご覧いただけます。

▼【連載まとめ】micro:bit プログラミングとこれからのプログラミング教育https://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/2019/02/microbit.html

※連載まとめは、望月先生の連載(5回分)を片岡が再構成してまとめたものです。

 望月先生は、全国各地で依頼によりプログラミング教育やmicro:bitに関する講演やセミナーをハイブリッド型(オンライン+オフラインなど)していらっしゃいます。プログラミング教育が必修化された小学校の先生方も参加されてみてください。

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