micro:bit プログラミングとこれからのプログラミング教育(第4回)
中学校で教諭(理科担当)をされてきた望月陽一郎 先生に、「教育とICTを学校現場でどのように実践されてきたのか」について、お話を伺っています。今回は「小学校でのプログラミング教育のために必要なもの」を中心に、文部科学省の資料やmicro:bit等を使いながら、お聴きしたいと思います。
【望月陽一郎先生・略歴】
短期大学非常勤講師。元中学校教諭(理科担当)。大分県教育センター情報教育推進担当主事、指導主事、大分県主幹等を経験されています。
〇プログラミング教育のために必要なもの
望月先生:これから始まる小学校でのプログラミング教育について、先生方も不安が多いと思います。まず、何が必要か、何があればよいかについて話したいと思います。
(スライド)
- 小学校プログラミング教育の手引き
- 教科書
- 教科の指導案
- ICT機器
- サンプルプログラミング集
-文部科学省の「小学校プログラミング教育の手引き」は前回のインタビュー(第3回)でも繰り返し紹介されていましたね。
望月先生:文部科学省の「小学校プログラミング教育の手引き」は、先生方にぜひ持ってもらいたい資料ですね。これを参考にするだけでいろいろなことがわかると思います。
▼小学校プログラミング教育の手引(第ニ版)(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1403162.htm
次に授業で使う教科書ですが、新学習指導要領にあわせて改訂があります。
▼今後の学習指導要領改訂スケジュールhttp://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/siryo/__icsFiles/afieldfile/2016/08/29/1376580_3.pdf
これで見ると、小学校の新しい教科書は、2019年度に採択され、2020年度から使用開始になるわけです。
そのため、先生方は2020年の4月に初めて見る方が多いのではないでしょうか。しかし、前年の教科書展示会(6月~7月)に見ることができるようになるので、それからどんな教材を使うのか、どんな整備が必要かなど一気に進むのではないかと思います。
-2019年の教科書展示会(6月~7月)がターニングポイントになりそうなんですね。
望月先生:教科書の内容がわかってくると、
- どんな教材を使うか
- どんな授業展開をするか
などが書かれた「指導案」が書かれてくるようになるわけですが、先行実践している先生などから示されるこういった指導案は、自分が授業する際のとても参考になる資料となります。
そうはいっても、「ICT機器がない」といわれる方がいるでしょう。しかし、上記のように、まだ教科書の内容がわからない段階では、整備も難しいわけです。教育委員会の担当の方も様子を見たり情報を集めたりする段階でしょうね。
-確かに教科書の内容がわからないと、整備するにも判断に困りますよね。コンピュータ室でないとできない内容か、それとも普通教室で行える内容なのか、等でも違ってきそうですし。カリキュラムによっては、コンピュータ室の利用がバッティングする可能性もありますし。
望月先生:これからは、コンピュータ室に行って使うというよりも、普通教室や特別教室で使う機会が増えるので、プログラミング活動でもつかいやすくなると思います。
▼教育のICT化に向けた環境整備5か年計画http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/04/12/1402839_1_1.pdf
そして、機器(プログラミング教材)が整備されても、どう使うことができるのか、ソフト面の資料が必要だと考えて作ってみたのが、micro:bit「サンプルプログラミング集」です。
〇プログラミング教育の評価とは
(スライド)
- 教科の評価でプログラミングの評価ではない(プログラミングは活動)
- 教科の目標にてらして評価を行う
「小学校プログラミング教育の手引き」にも書かれています。
・各教科等の学習を通じて、「プログラミング的思考」等を育むとともに、それぞれの教科等の学習をより深いものとすることが重要です。プログラミングを実施した際の評価については、あくまでも、プログラミングを学習活動として実施した教科等において、それぞれの教科等の評価規準により評価するのが基本となります。すなわち、プログラミングを実施したからといって、それだけを取り立てて評価したり、評定をしたりする(成績をつける)ものではありません。(前掲資料 18P)
「プログラミングを先生方はどう評価するのか?」といった誤解は、マスメディアなどでよく見られる勘違いのひとつだといえます。算数や理科など教科で評価するのですから。このあたりは誤解をしないようにしたいですね。
micro:bit サンプルプログラミング
望月先生:micro:bitは、手のひらサイズの基盤に
- 光センサー、温度センサー、磁気センサー、傾きセンサーという入力
- LED、音、電流という出力
を持っているマイクロコンピュータです。
〇「音を出力する」プログラム
(図は10/26に新しくなったプログラミングサイト
https://makecode.microbit.org/#editor )
望月先生:自作したサンプルプログラミング集(11/2現在50個)では、分類のため、こういった表示をプログラムごとにつけています。
ボ・・・ボタン セ・・・センサー L・・・LED 出・・・出力
通・・・通信 オ・・・オプション機器
この場合は、「出力をするプログラム」という表示です。
micro:bitは、音を出力することができます。ただスピーカーを内蔵していないので、シミュレータ(プログラミング画面の左側)に表示されているように、端子にイヤホンやスピーカーを接続することで、音を鳴らすことができます。
-もしかして、プログラミングの仕方次第では楽器としてmicro:bitを利用できますか。音楽の教材にも使えるのかな、と思った次第です。
望月先生:楽譜を見ながら、音のブロックをつなげていくとメロディを奏でられます。
光センサーと組み合わせると、
「明るくなったら音を鳴らす」→「箱の中にmicro:bitを入れたオルゴールを作る」
といったアイデアもわきますね。
-「箱の中にmicro:bitを入れたオルゴールを作る」なんて、ステキですね。母の日や友達へのプレゼントにも利用できそうです。プログラミングの学習はパソコン上でソースコードを入力して、実行して、と言うイメージがあります。
しかし、micro:bitのように基板を利用したプログラミングだと、勉強の場以外にもひろがりが出てくるのが魅力的ですね。
〇「方角を表す」プログラム
・・・センサー・LEDを使用
micro:bitには、磁気センサーも搭載されています。
北を0度とした角度で示されるので、それを使ってNEWSをLED表示するようにしたものです。簡単なコンパスになりますね。
-コンパスにもなるとはすごいです。センサーがあると、スマートフォンのアプリのようなこともできますし、アイデア次第で様々な展開ができそうですね。子どもたちの思考の幅を広げるのにも良さそうです。ありがとうございました。
○まとめ
今回は「これから始まる小学校でのプログラミング教育について」というテーマでお話いただきました。
「小学校の新しい教科書は、2019年度に採択され、2020年度から使用開始」されることを踏まえて、
- ICT機器は「コンピュータ室に行って使うというよりも、普通教室や特別教室で使う機会が増えるので、プログラミング活動でもつかいやすくなる」と思われる点、
- プログラミング教育の評価は「教科の評価でプログラミングの評価ではない(プログラミングは活動)」「教科の目標にてらして評価を行う」点、
- 機器(プログラミング教材)の整備に加えて、ソフト面の資料(今回の例だとmicro:bit「サンプルプログラミング集」)も必要ではないか
という点を中心にお話しくださいました。
なお、望月先生がサンプルプログラミング集を今回の関西EDIXで公開された際、多くの方(教育委員会など)がmicro:bitに関心を持ってくださったとのことでした。人だかりになっている写真からも参加した皆さまの熱気が伝わります。
そして、12/27にmicro:bitサンプルプログラミング集を資料に、大分市情報学習センターで、小学校の先生方・一般の方向けの小学校プログラミング教育に関する講座の講師をされるそうです。
非常にお忙しい中でお話しくださった望月先生、最後まで読んでくださったみなさま、大変ありがとうございました。
>>「micro:bit プログラミングとこれからのプログラミング教育(第5回)」(12月15日公開予定)につづく
編集履歴:2018.11.15 21:45 以下の資料を第2版の情報に差し替え。
▼小学校プログラミング教育の手引(第一版)(文部科学省) http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/03/1403192.htm
↓
▼小学校プログラミング教育の手引(第ニ版)(文部科学省) http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1403162.htm<:p>