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グローバル化する中で日本人はどのようにサバイバルすればよいのか。子ども×ICT教育×発達心理をキーワードに考えます。

リブート第14回「ICT活用とジグソー法について-中学校教諭・望月陽一郎先生のお話より-」

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現役の先生に教育現場のICT活用について伺いました(2015/11/21初公開分をリブート)

リブートシリーズ・・・2013年から不定期で掲載してきた「教育・授業・ICTに関するインタビューシリーズ」を、今に合わせて「再構成」していく企画です。


中学校で教諭をされておられる望月陽一郎 先生に教育とICTを学校現場でどのように実践されてきたのか、お話を伺っています。

【望月陽一郎先生・略歴】
大分市中学校教諭(理科担当)。大分県教育センター情報教育推進担当主事、指導主事、大分県主幹等を経て、現職。


【前回の概要】

前回(リブート第13回目)は、望月先生が自作したデジタル教材(ランダムフラッシュカード)について説明していただきました。

  • 「ランダムフラッシュカード」の特徴は表示される順番が毎回変わること
    ※「スライドショーするたびに表示される問題の順番が変わるフラッシュカード(この記事ではランダムフラッシュカードと表記)」を望月先生がPowerPointのマクロで作成。子どもたちからは「これやりやすい!」という感想が多かったそうです。
  • マクロが表示スライドの内容や枚数に関係しないので、問題の書きかえ、スライドの追加削除が自由。
    ※理科だけでなく他教科にも使える。教科を越えて活用できるので、教材としての汎用性が高い。

スライドショーをするたびに出てくる問題がその都度変わるので、子供たちが新鮮な気持ちで取り組むようになったとききました。14回目の今回は、「子供たちが主体的に取り組む授業の工夫」についてお話を伺いたいと思います。

子供たちが主体的に取り組む授業とICT活用の関係とは

―今回は「子供たちが主体的に取り組む授業」について質問させてください。というのは、私がNPO法人に勤務していた時、「教育のユニバーサルデザイン」という言葉を耳にしていたからです。

望月先生:「教育のユニバーサルデザイン」をどのようにとらえているのですか?

―同僚が、学習に困難さがある生徒も含めたすべての学習者が学びやすい環境づくり・教え方が「教育のユニバーサルデザインだ」だと教えてくれました。しかし、子供たちの個性がそれぞれ違うのに、共通して有効な教育方法がありえるのか、疑問があったのです。

望月先生:どのような子供にも有効な方法というものは難しいと私は思います。

しかし、「学びやすい環境づくり」については、これまでもずっと工夫をしてきました。小テストを、スライドとワークシートの組み合わせ(デジタルとアナログの組み合わせ)にしているのも、それです。問題をスライドで大きく表示することで、問題に集中できるようにしています。

また、子供たちが持っている教科書を大きく投影し、その画面に直接書き込みながら大切なところを示していくのもそうですね。教科書に書いてあることをわざわざ黒板に書き、それを子供たちがノートに写すよりもずっと時間を有効に使うことができます。

―なるほど。「教育のユニバーサルデザイン」を「学びやすい環境づくり」ととらえるとよいかもしれませんね。先生が取り組んでいる、「学びやすい環境づくり」についてさらにお話しいただけますか?

ジグソー法とICT活用について

望月先生:今(2015年当時)、「ジグソー法」に取り組んでいるところです。

―「ジグソー法」に取り組まれているのですね! このインタビューの前にサイトで、ジグソー法について調べて読んでみました。

▼ジグソー法―授業の作り方― 大学発教育支援コンソーシアム推進機構
http://coref.u-tokyo.ac.jp/archives/5515

上記のサイトを参照してみると、

「ジグソー法は、あるテーマについて複数の視点で書かれた資料をグループに分かれて読み、自分なりに納得できた範囲で説明を作って交換し、交換した知識を統合してテーマ全体の理解を構築したり、テーマに関連する課題を解いたりする活動を通して学ぶ、協調的な学習方法の一つ」(http://coref.u-tokyo.ac.jp/archives/5515より引用)

と解説していますね。

「学力の差があっても子供たちが意欲的に取り組むことができる学習法」ではないか、と思いました。望月先生がジグソー法を授業に取り入れたのは「協調学習しやすいから」という理由でしょうか。また、そこでICT活用も取り入れたのでしょうか。

望月先生:今回は、「主体的・対話的で深い学び」を促す(2015年当時ここでは、アクティブ・ラーニング(子どもが主体的に学びに取り組む)と表記していた 以下同様に修正)取組のひとつとしてジグソー法に取り組みました。ICT活用は、あくまで補助としてジグソー法をスムーズに行うために使いました。

―そのような意図がおありだったのですね。サイトには

具体的には、まず、今の単元でしっかりわかりたい「問い」を設定します。この時、「一つの知識では解けないけれど、みんなが既に知っていることや今教科書に沿った資料を読めばわかること」を3つか4つ、部品として組み合わせて解けるようなものが良い問いになります(http://coref.u-tokyo.ac.jp/archives/5515より引用)。

と書かれていました。先生の授業では、どのように取り組みましたか。

望月先生:今回は、動物分野のまとめとして、3時間をひとつのテーマで進めました(ここが「主体的・対話的で深い学び」の視点からの単元デザイン)。

「動物について、これまで学んできたことを活かしながら、種類ごとの特徴を調べて分類してみよう」

1時間目

・各グループで担当した種類の動物について(たとえば魚類)、教科書で調べなおしながら「ワークシート」に書き出しまとめる。説明者(プレゼン担当)を中心に、どのようにその種類の特徴について説明するか準備を行ってもらいました。

・・・ワークシートを準備。種類ごとのつながりを意識したイメージマップに書き込むよう、ワークシートを大きく映し説明しました。(ICT活用①・・・視点を示す)

2時間目

・説明者がグループに残り、他のグループから集まってきた取材者(プレゼンを聴きに行く担当)に対して、一次プレゼン(説明)を行いました。取材者は説明者の説明を聴き、グループで報告できるようワークシートに書き込み、また質問も行いました

・・・プレゼンを見てまわり、よい発表の様子を写しておき、参考になるよう映す。(まっすぐ立ってはっきり説明している様子など。これは他のクラスの参考にもなりました)(ICT活用②・・・動きを示す)

・取材者は自分のグループに戻りそれぞれ二次プレゼン(報告)を行いました。他のメンバーはそれを聴きながら、自分のワークシートにまとめました。(取材して集まってきたパズルのピースを組み合わせるように)

・・・説明時間を確認させるため、アナログ時計を大きく示す(時間を意識させる)。(ICT活用③・・・時間を示す)

3時間目

・種類同士のつながりを中心に全体のまとめを行い、自分たちのワークシートにたりないところを書き込みました。

・・・子供たちと同じワークシートに書き込んだものを大きく映しながら解説。(ICT活用④・・・視点を示す)

このように、あくまで子供たちのジグソー活動をサポートする役割として、ICTを活用しました。

―なるほど、ジグソー法とICT活用をそのように組み合わせたのですね。私は二次プレゼンをするところがいいなあと思いました。一回目のプレゼンを振り返らざるをえないので、プレゼンする子供が客観的に発表内容と向き合うことができるのではないかと思いました。

自分でいろいろ情報を組み合わせたり、新たな疑問が思いついたりできそうなのもいいなあと感じました。

まとめ

今回は、「子供たちが主体的に取り組む授業」というテーマで、ジグソー法を行った事例を教えていただきました。子供たちの活動をICTでサポートするときに、望月先生が示してくださった三つの要素、

  • 視点を示す。
  • 時間を示す。
  • 動きを示す。

は、とても大事なことだと思います。

パソコンの授業を担当していたとき、これから教科書の何ページ目の授業を始めるのかページ数を黒板に書いたり、作業の残り時間を生徒たちに口頭または板書して伝えたりするように、先輩からアドバイスを受けました。

タイピング練習の時は声かけや音声時計を使い、グループワークの時はアナログ時計を使いました。アナログ表示だと、残り時間が視覚的にわかるメリットがあるからです。

ジグソー法は仲間と情報を教えあうことで、さらに理解が深まります。望月先生がおっしゃるように、「主体的・対話的で深い学び」を促す足がかりになりそうですね。お話しくださった望月先生、この記事を読んでくださったみなさまに感謝しています。

次回は「主体的・対話的で深い学び」について、さらに質問したいと思います。この記事が読者の皆さまの授業作りのご参考になる事を、願っております。

>>リブート15回「アクティブ・ラーニングとICT活用について」(3月1日公開予定)に続く

Reboot Produced by Yoichiro Mochizuki

参考記事

先導先生 - DiTT(デジタル教科書教材協議会)
※望月先生の45の取組みが紹介されています。

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