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グローバル化する中で日本人はどのようにサバイバルすればよいのか。子ども×ICT教育×発達心理をキーワードに考えます。

「6×8は正解でも8×6はバッテン?」(かけ算の順番)の話は教える先生の日本語力・読解力次第か・私考

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はじめに

先日、オルタナティブ・ブロガーの白川さんが執筆された「6×8は正解でも8×6はバッテン?あるいは算数のガラパゴス性」は非常に興味深い問題だと感じたので今回、私見を考察することにしました。

私が最初、この記事を読んだ時は計算式の解法のプロセスが人それぞれ違っていても正しい答えが導き出すことができたならば良いのではないか? と思いました。「6×8」と「8×6」のかける順が逆だったとしてもお子さまの認識・書きたかったことは間違ってはいないのではないか? と疑問を感じました。

というのは、元記事に紹介された問題文は数通りの解釈の余地が許されると考えたからです。私は現在、IT業界で働いておりますが物語文学を研究していたため日本語の読解に関することはとても気になります。

参考:「 『苔の衣』にみる「かぐや姫と八月十五日」というメタファー 」   研究と資料   Vol.43, (2000.7) ,p.53 - 64                    
http://sucra.saitama-u.ac.jp/modules/xoonips/detail.php?id=A3000334

「 「紫のゆかり」と氷室冴子 : 『ざ・ちえんじ』にみる古典受容の一様相 」  研究と資料 Vol.47, (2002.7) ,p.51 - 61
http://sucra.saitama-u.ac.jp/modules/xoonips/detail.php?id=A3000335

※参考:片岡麻実の学術論文。全文掲載しています。

計算式の等価交換が成り立つと習ったあの時の授業は何だったのか?

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「順番を正しく書かないと正解にならない」という意見は確かにそうだと感じました。数学の理論に従って考えれば物を数えるときの単位「本」との関連もありますので、順番を正しく書くという習慣を幼いうちから身につけたほうが良いというご意見は納得がいきます。

とはいえ、子どもが理由を理解できないまま、ただ単に順が逆だとバツという教育には疑問があります。私が学生時代には計算をする際の等価交換を習ったからです。Wikipediaからの引用で恐縮ですが、

等価交換(とうかこうかん)とは等しい価値を有するものを相互に交換すること。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AD%89%E4%BE%A1%E4%BA%A4%E6%8F%9B より引用

小学校の授業で数式は等価交換が成り立つので、かけ算は6×8でも8×6でも数学的に成立していると算数の授業で習ったあの授業は一体なんだったのか......。そして子どもが問題をどう理解するかについての視点で考えても問題文のあいまいさがあるように私見では感じました。以下にその理由を書きたいと思います。

問題文を子どもはどう理解するのか

問題文を拝読した限りでは、

8人に ペンを あげます。1人に  6本ずつあげるには、

ぜんぶで 何本 いるでしょうか

式・答え 各10点(20)

http://blogs.itmedia.co.jp/magic/2011/12/6886-2d5b.html より引用

コメント欄にご指摘があったように、この問題分だと8人に1本ずつ渡す行為を6回行なうと解釈して8×6と書くという解釈も可能ではないかと私見では思いました。問題文を読んだ際にプログラミングを書くときのループ文のような発想をするお子様もいらっしゃる可能性があると感じております。

お茶を淹れる時にいきなりお茶碗に一人分ずつお茶を淹れると飲み手によってお茶の濃さが変わってしまいます。そのため6個のお茶碗があれば少しずつ6つのお茶碗にお茶を入れていき、最終的に6人分のお茶碗に適正なお茶が入っている状態にします。

もし家でお手伝いを頻繁にする子どもであればお茶を淹れる時の入れ方を連想してペンをわたそうと発想するかもしれません。

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先生の立場で考えてみます。物事の考え方には複数の考え方が存在するので答えが複数あると先生の採点が難しくなってしまいます。そのため学校のテストでは答えが一つと決められている部分もあるのでしょう。

元記事によると

どうやら、
「6×8」と書くと「6本×8人」を意味するのだが、
「8×6」と書くと「8本×6人」を意味することになってしまうのでNGということらしい。
http://blogs.itmedia.co.jp/magic/2011/12/6886-2d5b.html より引用

と解説がありました。

とはいえ「6×8は正解」で数字をかける順が逆ではダメと採点するのであれば、

  • 問題文を読んで8人に1本ずつ渡す行為をループ文のように6回繰り返すことはNGとわかるように、問題文にその旨明記されている必要があるのではないか

と考えました。採点基準が不明確だと子どもが混乱してしまいます。算数や数学を嫌いになってしまっては本末転倒だからです。

子どもたちの算数・数学スキルを伸ばすための授業なので、なぜNGなのかがわからないと授業は答え・解法の暗記になり、大人になってからの応用がきかないのではないかと不安になります。

上記の意見は元記事に登場された算数の先生を批判したいわけではなく、もっとこうしたらさらに良い授業になるのかも? というより良い教育を考えるための考察です。そのため以下は一般論として算数、数学の教え方を考えてみたいと思います。

数学は日本語力も関係している

数学をきちんと理解することは大人になってからも役に立つこと。なので「かける順番は正しく」と教えることには納得がいきます。ただし「式・答え 各10点(20)」と書いてあるにもかかわらず、かける順番が違ったから「答え 48本」が不正解というのは日本語の面で謎があります。

「かける順番が違うのならば答えが48本でもバツ」とするならば「かける順番があっていたけれども答えを計算ミスした場合のみ、各10点が適応される」などと補足が必要にはならないのでしょうか? 

私がなぜ「数学の教え方と日本語力」の考察を試みたかというと、学生時代に数学の研究者をしていた先生の授業を受けていた時期があったからです。先生は数学で博士号を取得された後、研究者をされていらっしゃいました。しかしある時期に研究所を退職され、普通の学校の教員になられました。

私は日本文学専攻に進学し絵巻物や王朝物語を研究しているくらい文学系寄りのICT講師。ですが、先生の数学の話はあまりに数式の世界が美しく、当時、数学の教科書を丸暗記したほど素晴らしく面白い授業でした。

数学の学内試験は先生が作成されていたおかげなのか、問題文は1通りの解釈しかできないようにきっちり作成されていました。そのためかける順番などの順番に混乱したことは先生に習っていた間はありませんでした。

問題文の日本語の構造がかっちりしていれば生徒は問題文の解釈をしやすくなり、不要な部分に気を取られず数学の考えを理解しやすくなりのではないか? という問題提起が私の中に浮かびました。

もしも「問題文に解釈が数通りできる」のであれば、解法においても△などの評価も入れる方が適正ではないかと私見では感じました。

子供の気持ちを尊重したい

私がもしも算数を教える立場だとすれば「○○ちゃん、おしい! 答えは合っているし、○○ちゃんが考えたことも合っていると思う。だけど○○ちゃんは算数をちゃんとわかる子だと思うから、少しレベルが高いことを言うね。実は掛け算ってかける順番がとても大事なんだよ。(以下略)」とお話をするように思いました。

子どもが一生懸命考えた結果は尊重したいですし、より正確な数学の世界も知ってほしいと感じています。子どもを尊重しつつ、頑張った部分は認め、より子どもの可能性を伸ばすために「あえて難しいことも説明するよ」と声をかけたくなりました。

既に亡くなった家族は私が小学生の時にこう言いました。「どの教科のテストも問題文を適正に読解できるかどうかで成績が変わるんだよ。だから日本語のスキルはいちばんしっかり勉強しなさい。そうしたら君が苦手な数学も何を答えれば良いのかわかる。きっと努力が結果につながるよ。」

今、元記事を拝見して琴線にふれた思いがしたのは家族の言葉を思い出したからかもしれません。先生が数学を的確に理解し、適切な日本語で子どもたちに説明し、問題文も適切な日本語で書かれていた場合、子どもは迷わずに数学の解法を使うことができるのではないか? という問題を今回感じました。

まとめ

今回は「子どもに算数を教えるときどうしたらよいのか」というテーマでしたが、何をするにも日本語の理解力はとても大事ではないでしょうか? 大人になってから日本語の理解力、的確に伝える力の大切さを思い知ることが多くなりました。

私が伝えたいのは以下の2点。

  • 「第三者が聴いてもわかるような説明・日本語力は大事」
  • 「第三者の言葉をより的確に理解する日本語力も大事」

ということです。

先生という立場は私もICT講師をしているので生徒を評価したいと行けない面は必ずあります。その際、数字だけでは評価できない面も子ども・大人の気持ちに寄り添って考えていきたいと感じています。

数値で評価しなければいけない場合は評価点をつける際に数値とい事実だけに心を向けないといけない場面もあります。しかし生徒さんたちが頑張ったという気持ち・行為を忘れずに教える立場として心を寄せていきたいと改めて感じました。

>>「かけ算の順番問題はなぜ今、目立つのか」に続く

編集履歴:2011/12/28の20時すぎに加筆訂正しました。2011年12月30日 表記の揺れの修正と特に批判は来ておりませんが特定の人物を論じるものではないことを追加しました。2012/1/9に画像を追加しました。恐れいります。2012年7月31日 23:56 見出しと等価交換の項を追加しました。2013.11.25 21:51 題名を「「6×8は正解でも8×6はバッテン?」の話は教える先生の日本語力・読解力しだいな気がしました」から「「6×8は正解でも8×6はバッテン?」の話は教える先生の日本語力・読解力次第か・私考」に改めました。同日21:57 イメージ画像を追加しました。2013.12.12 22:26 題名に「(かけ算の順番)」を追加しました。

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