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2020年 SIビジネス・10大予想 予想6:「働き方改革」の成否がSI事業の成否を分ける

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「働き方改革」の目的は社員の「幸せ」と「パフォーマンスの向上」を両立させることだ。時短は目的ではなく結果である。

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社員の「幸せ」とは、それぞれの都合や事情に合わせて、働ける環境を提供することだろう。場所や時間の制約から社員を解放することであり、社員がそれぞれの事情に応じた選択ができる自由を提供することである。しかし、それは福利厚生のためではない。自分の成果目標を明確にして、責任を持ってそれを達成するという自覚と自分の成果に対する徹底したこだわりとコミットメントを示すための環境を提供することを意味する。

このような仕組みを実現するには古い時代のテクノロジーや習慣に縛られ、もはや意味を失ってしまった制度や手続きを撤廃し、徹底したペーパーレス化、クラウドサービスの最大限の活用、社内電子メールの撤廃、BYODを可能とするゼロトラスト・ネットワークの適用などの時代にふさわしいテクノロジーの最大限の活用と、それにふさわしい人事制度の変更や業績評価基準の多様化が必要となる。

また、上記とも関連するがもはや意味を失っている事務処理や儀式としての意味しか持たない会議をなくすことは何としてでも成し遂げなければならない。もはやハンコは不要であり、会議はオンラインでもできる時代だ。そんな当たり前を前提に仕事のやり方を見直すことだ。そうすれば、価値を産み出すことに集中できる。

自分の仕事への誇りを持ち、パフォーマンスを出すことに集中できれば、自ずと短い時間でもこれまで以上の成果をあげることができる。

そのための働く環境を整えることが、「働き方改革」の本質と言える。つまり、「働き方改革」とは、人間力を最大限に発揮できる環境を作ることに他ならない。

これから機械ができること増えてゆくだろう。シンギュラリティなど待たなくても、クラウド・ネイティブや5Gなどの浸透により開発や運用に関わる工数は少なくなって行く。一方でアプリケーションの需要は指数関数的に拡大してゆくだろう。それなれば、短いサイクルで、高速にアプリケーションを開発・アップデートすることへの需要が高まる。その時必要なのは、ビジネスの現場を観察し、理解し、目的を明確にしてゆくコミュニケーション能力であり、それを直ちにアプリケーションに仕立て上げることができるデザイン力、新しいテクノロジーやサービスについての知見、直ちに実装できるコーディング力などであろう。

「これをお願いします/はい分かりました」といった一方通行ではなく、「こうしてはどうです/ならばこうすればいいですね/ならばこのやりかたでいきましょう」と対話的に、そして現場と一緒にサービスを実現できるプロフェッショナリティが人間には求められるようになる。

工数需要が機械に置き換えられる時代にSI事業者として生きてゆくには、工数に対する対価ではなく、価値に対する対価を収益源に変えてゆくことだ。そのための人間力を企業の収益基盤にしなくてはならない。それを可能にするのは育成でもなければ給与を上げることでもない。幸せに働ける環境を提供することだ。そうすれば、もっと幸せになるために自発的に学ぶようになるだろうし、結果としてパフォーマンスは上がり、業績も上がって収入も増える。危機感を煽る必要もないし、叱咤激励もいらない。みんなが幸せになればいい。このような好循環を生みだすサイクルをつくることが「働き方改革」であろう。

これができれば優秀な人材は育つ、優秀な人材が出て行くこともない、さらには優秀な人材を引き寄せることもできる。自ずと、SI事業の成否を分けることになるだろう。

「簡単なことではない」や「ウチにそんなことができる人材はいない」という反論が聞こえてきそうだが、そういうコトをいう人たちが、まずは「ぜひ取り組みたい」という人たちに道を譲ることであろう。そして、それを引き受けた人たちは、この変革を必死で実践することだ。それでも変わらない、変われない会社であれば、見切りをつけて辞めてしまえ。必死の取り組みで磨いた感性やスキルは、世の中が求めているから、どこに行っても通用する。そうやって、どんどんと必要とされる人材が転職してしまうことから、経営者が学ぶとすれば、それもまた会社のためかも知れない。

SI事業に人間力が求められる時代に、それにふさわしい働き方改革ができるかどうかが、これからの業績、あるいは企業の存続を左右することになるだろう。

2020年 SIビジネス・10大予想 

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