具体的な成果イメージが、結果をもたらす
P.F.ドラッカーは、「リーダーシップの本質は行動にある」と言っていますが、行動の前に、前提条件となる考え方があります。そこで、前提条件となることをお伝えします。
あるとき私は、小売業の人材育成のご担当者から
「顧客満足度向上に向けて、販売現場を強化したい。そのために、現場のリーダーの指導力を高めたい」
というリクエストをもとに、OJT研修の企画とコーディネートに携わりました。
このようなご依頼の場合、成果イメージをお聞きすると「メンバーの動機づけや、指導の仕方の方法論が身につくように」といった内容が一般的で、最初はそのような方向で話しが進んでいました。
しかし、責任者の方にご挨拶し、ご要望を確認すると、次のようにおっしゃいました。
「今回の研修では、スタッフがお客様の目を見て挨拶ができるようになる、そのための指導力を身につけることができれば、それで十分です」
この一言で、OJT研修に携わる全員のゴールイメージが明確になり、仕事が進めやすくなりました。
また、成果検証もしやすく、その後、その会社の販売スタッフのスキルは、年々上がっていきました。
このような経験後、あるとき、次の一文が目に留まりました。
効果的なリーダーシップの基礎とは、組織の使命を考え抜き、それを目に見える形で明確に定義し確立することである。リーダーとは、目標を定め、優先順位を決め、基準を決め、それを維持する者である。
もちろん、妥協することはある。優れたリーダーは自分が支配者でないことを痛いほど知っている。スターリン、ヒトラー、毛沢東などの似非リーダーだけが幻想に取りつかれた。しかしリーダーは、妥協を受け入れる前に、何が正しく望ましいかを考える。リーダーの役割とは、明快な音を出すトランペットになることである。
リーダーと似非リーダーとの違いは目標にある。現実の制約によって妥協せざるを得なくなったとき、その妥協が使命と目標に沿っているか離れているかによって、リーダーであるか否かが決まる。リーダーが真の信奉者をもつか、日和見的な取り巻きをもつにすぎないかも、自らの行為によって範を示しつつ、いくつかの基本的な基準を守りぬけるかによって決まる。
P.F.ドラッカー著 上田惇生編訳 2004年4月 『実践する経営者 成果をあげる知恵と行動』
上記を、当時のOJT研修に当てはめると、「スタッフがお客様の目を見て挨拶ができるように」という責任者の一言こそ、
・目標を定め(顧客満足度を高める。そのために、販売現場の指導力を向上させる)
・優先順位(あいさつができる)を決め、
・基準(お客様の目を見て、あいさつができる)を決め、
に適っていたことがわかります。
おそらく、読者の方も、似たような経験をされているのではないでしょうか?
成果が出しやすかったとき、そうでないときを、上のような観点で振り返ってみても面白いかもしれませんよ。
~夢を創り、夢を育む~出あいに、感謝