研修成果を左右する各パートの目的(ねらいと背景)の決め方
本ブログでは、業務を通じて得てきた知識・技術・経験を、未経験者(新入社員、新しく配属された人、中途採用者、社外関係先)に教える「社内講師」になるメリットや、社内講師になるための準備について紹介してきました。
そして前回より、新入社員研修などで「自身の専門分野」を「一コマ」ないしは「複数のコマ」で担当する場合のカリキュラムの構築について話を進め、カリキュラムの構築に必要な要素
1.対象者(誰に、人数、属性)
2.目的(ねらいや背景)
3.ゴールイメージ(何が、どこまでできているか、そのときの状態の目標)
4.期待水準(何が、どの程度、いつまでにできるようになることを意図するか)
5.制約条件(時間、対面orオンライン、設備)
を確認しました。
今回は、担当されるコマの2.目的(ねらいや背景)の決め方についてです。
目的(ねらいや背景)を決める前にやっておきたいこと
新入社員研修を含む階層別研修は、多くの場合、これまでやってきたことをベースにすることが多いです。
しかし、事業環境が変化する今、「これまでやってきたこと」というスタンスでは今後の変化に対応できるか疑問が残ります。
そこで、目的(ねらいや背景)を決める前に、一度次の視点で情報を整理します。
社外の環境変化の把握
政治、経済(金融)、環境、技術など、新しい動きはないか。顧客、取引先や自社に関連する法改正などないか。新入社員が入社する前に受けている教育内容や環境に変化がないか。
社内の環境変化の把握
理念やビジョン・方針、中長期経営計画、組織、制度、新技術・新製品・新サービス、コミュニケーション手段などに変化がないか。
その上で、教えるテーマの位置づけや方法などを確認します。
ではここで、新入社員研修で必ず取り入れられる「ビジネスコミュニケーション」について、一例として考えてみます。
ビジネスコミュニケーションの目的は、自社ビジョンを実現するための、理念、方針の体現です。
それを、
-挨拶やTPOに合わせた表現
-業務を効果的に進めるための確認・報告・連絡・相談
-確認・報告・連絡・相談を確実にするための、論理的な考え方と表現方法
-よりよい人間関係を築くための相手に合わせた表現方法
-チームで成果をあげるためのコミュニケーションの進め方
-電話、メール、リモートなどのビジネスツールに合わせたスキルの習得
-訪問時、来客時の対応
などを段階的に身に付けられるよう、パートにわかれた構成となっています。
以上を前提に、各パートにも「目的(ねらいと背景)」を設定していきます。
「目的(ねらいや背景)」を平易な表現にすると、次のように言い換えられます。
・わが社では、何のためにそれをするのか?
・わが社では、なぜその基準で行うのか?
・そうする必要性がある背景は何か?
参考に「挨拶やTPOに合わせた表現」の目的について考えてみます。
一般的に多いのは、
・社会人の常識
という表現です。
それを「自社ビジョンを実現するための、理念・方針の体現」の視点で掘り下げてみると...
・挨拶はわが社の行動指針の一番目である
・全てのステークホルダーとの関係性を築き、維持、発展させていくため
・最近働き方が大きく変わり対面機会が限られている
マスクをする習慣が常態化している
あらためて自ら率先して挨拶をすることで、関係性を築く効果があるため
社会人としての常識ともされているため
となります。
すると、カリキュラム、伝えるメッセージ、ワークなどが組み立てやすい、と感じられないでしょうか。
このことから、各パートの目的(ねらいや背景)を決める際は、
社内外の環境変化を整理した上で、
・わが社では、何のためにそれをするのか?
・わが社では、なぜその基準で行うのか?
・そうする必要性がある背景は何か?
の順で整理することがとても有効です。
目的(ねらいや背景)が明確になると、ゴールも具体的に決めやすくなり、学ぶ側にとっても身に付きやすくなります。
普段考えていないと、言葉になるまでに時間がかかりますが、一度言葉になるとその後がとてもスムーズです。よかったらチャレンジしてみてください。
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