オルタナティブ・ブログ > 野石龍平の人事/ITコンサル徒然日記 >

人事領域(上流/elearing/ERP)コンサルでの人材開発/人事の一歩先の動向を考えます!

世界のタレントトレンド2024-2025に見る「人とテクノロジーの再構築」

»

近年、世界中の企業が"人"と"テクノロジー"の関係を根本から見直しています。
Mercerの「Global Talent Trends 2024-2025」では、130カ国の経営者・人事リーダーを対象にした調査から、組織の未来を方向づける4つのトレンドが浮かび上がりました。
一方で、同様の視点はDeloitte、PwC、Willis Towers Watsonなどの調査からも共通して確認されています。
ここではそれらを横断的にまとめ、今後の働き方の行方を整理してみたいと思います。

---
世界各社の調査に共通する主要トレンド

**人間中心の生産性**
AIやオートメーションの導入によって、単に効率を上げるのではなく、"人間がより良く働くための生産性"へと視点が移っています。
Deloitteの「Global Human Capital Trends 2024」でも、テクノロジーの進化に合わせて「人の集中力・創造性・目的意識」を再設計することが最大の課題とされています。

**信頼と公平性の再構築**
報酬やキャリアの透明性、ジェンダーや年齢を問わない公平な評価制度が、企業の信頼を支える土台となっています。
PwCの「Hopes and Fears Survey 2024」では、従業員の6割以上が"AI時代の職場で最も重要なのは公正な評価とスキルアップ機会"と回答しました。

**組織のレジリエンス(免疫力)**
変化の激しい時代において、組織がどれだけ早く立ち直れるかが競争力の源泉になっています。
Willis Towers Watsonの報告でも、「心理的安全性」「健康経営」「柔軟な労働構造」が、リーダーの最優先課題として挙げられています。

**デジタルカルチャーの成熟**
Generative AIの時代において、"AIが人を置き換える"のではなく、"人とAIが共創する"文化を育てることが重要になっています。
学び続ける企業文化、内省と実験を繰り返す組織風土が、イノベーションの持続性を支える鍵となります。

---

**日本企業への示唆**

・いまだに「時間×在籍」で働きを測る文化が根強い中で、「価値×スキル」で人を評価する仕組みが急務。
・AIを単なる"効率化ツール"ではなく、"チームの一員"として設計段階から組み込む発想が求められる。
・信頼と公平性を軸とした人事制度が、少子高齢化・多様化の中で企業の持続性を支える最大の資産となる。
・変化を前提とした柔軟なキャリアデザイン、報酬設計、再教育の仕組みが不可欠。

---

**私の視点:働き方改革の「第三章」へ**

ここ数年、日本では「働く時間を減らす」「残業を減らす」という議論が中心でした。
しかし今必要なのは、"時間ではなく生産性の中身を変えること"。

成果を決めるのは時間の長さではなく、目的の明確さ、裁量の大きさ、信頼の厚さです。
AIが業務の一部を代替し、人がより創造的な領域にシフトする今こそ、
人事の使命は「人の仕事の意味を再定義すること」だと思います。

---

**参考資料**
・Mercer: [Global Talent Trends 2024-2025]
・Deloitte: [Global Human Capital Trends 2024]
・PwC: [Hopes and Fears Survey 2024]
・Willis Towers Watson: [Global Future of Work Survey 2024]

Comment(0)