中年期の危機(ミッドライフクライシス)との付き合い方
定年延長時代、50代以降も意欲的に活躍してほしいという社会的、組織的ニーズがある中で、知っておきたいのが「中年期の危機(ミッドライフクライシス)」の存在。
私がこの言葉を知ったのは正に40代半ば。得も言われぬ不安や焦りがふつふつと湧き上がっていた当時。「何かやらないと...」と思っていたタイミングに見つけた国家資格化されたキャリアコンサルタント資格。その2016年6月~スタートしたスクーリングの講義の中で、「あっ、今の自分、これかもしれない」と思ったのが、「中年期の危機(ミッドライフクライシス)」でした。
「中年期の危機(ミッドライフクライシス)」はユングによる研究がベースになっており、次のように紹介されています。
ユングは、人間の人生を4つの時期
少年期 childhood
成人期 youth and young adulthood
中年期 middle age
老年期 old age
に分け、それぞれ次の時期に移行するには転換期を通過するとしました。そしてこの4つの中でも、特に中年期には人生最大の心理的危機を迎えるとし、「中年期の危機(ミッドライフ・クライシス)」と称しました。職業経験も積み上げ、社会に根づき、家庭を築いてきた中年期において、自分の人生はこれで本当によかったのだろうかという喪失感を味わい、これまでを振り返り、人生の意味を問い直す時期だとしています。
また、この時期を、ユングは人生の午前から午後への移行期、たとえると「人生の正午」にあたるとしました。「太陽は予測しなかった正午の絶頂に達する。予測しなかったというのは、その一度限りの個人的存在にとって、その南の頂点を前もって知ることができないからである。正午12時に下降が始まる。しかも、この下降は午前の価値と理想の店頭である。太陽は矛盾に陥る」(ユング,1979)
ユングは、人生の午前は社会に適応しやすい自己を築き上げながら生きてきたとし、実現する時期だと考えました。彼はこれを「個性化の過程」、あるいは「自己実現の過程」と称し、人生の究極の目的としました。
個性化(individulation)とは、ペルソナ(社会的仮面)にとらわれるのでなく、自分にとって唯一無二である心理的現実を意識化させることにあります。」
引用:『(国家資格 キャリアコンサルタント養成講座~CDA資格(キャリアカウンセラー)対応~TEXT2カウンセリングに関する理論 日本マンパワー刊(201604) 14ページ
そして私が思うに、研究され始めた頃と比較すると、社会はますます複雑化・個別化しており、40代半ば~50代後半にかけては、
・組織からの成果期待や責任が重くなる
・家族の変化(受験を迎える人、高齢家族の不調や介護をする人)
・年々大きくなる自然災害に対する漠然とした不安
なども重なり、本人が思っている以上に心理的負担は増しているのではないかと思います。
さらに、組織や周囲には心の内は見えないこと、それ以上に自分自身が気づけないこと。このことが中年期の危機の厄介さだと思います。
中年期の危機(ミッドライフクライシス)との付き合い方ー私の場合
さて、それでは中年期の危機をどう乗り越えるのか。
いや、たぶんその時期は長く続くのでどう付き合うのか。
その付き合い方は数多く紹介されていますが、中でも私が当時を振り返って「よかった」と思ったのは、新しいコミュニティに参加したことでした。
その理由は大きく分けると2つあります。
1つ目は、自分のことをほとんど知らないから客観的にフィードバックをもらい、自分を客観視できたこと
2つ目は、自分が感じていた漠然とした不安や焦りは、誰もが通るもの。そしてそれは避けて通れないこと
特に1つ目「自分を客観視できた」ことはとても大きな意味がありました。
というのは、それまでの自分は仕事の
・抱えすぎ
・こだわりすぎ
という傾向があり、人に任せることや、使える時間はすべて仕事に投入するようなところがありました。
つまり「仕事のし過ぎ」で、心も身体も疲れ切っている。その上に変な責任感があるので、手が抜けない。休めない状態。でも本人はそのことに気づいていない。
新しいコミュニティで得られたもの
しかし、新しいコミュニティ(私の場合は「キャリアコンサルタント資格取得」)の中で自分の心身の状態は「脳疲労」の蓄積が極まっていることがわかり、そのような状態の時に必要なのはゆとりや休むことであること。
それに気づかされたため、
・誰かにお願いすること
・レベルを定めたら、そのレベルを満たせばよしとすること
・自分が望むよい仕事をするためには、休むことも仕事のうち
と、考えを変えるように努めました。(最初は不安がいっぱいでしたが...)
そして、意識的にゆとりや休むこと、無理しすぎないようにしていったところ、結果的には仕事のパフォーマンスはあがり、仕事以外の時間も充実するようになりました。
このような経験を経て、「客観的に自分を見られるコミュニティ」に参加してみることで、自分を見つめなおす時間の必要性がわかりました。
本ブログをご覧の方の多くは、様々なコミュニティに参加し、自身を充実させている方も多数おいでになると思います。
ぜひそのような方はご自身の経験を周囲に伝えていただくとよいのではないかと思うとともに、
「そういえば...、仕事関係者以外との人間関係をつくってこなかったなぁ...」と思いあたる方は、少し今のコミュニティの外に出てみてはいかがでしょうか。
コミュニティは、地域、趣味、新しく学んでみたい興味・関心分野、なんでもいいと思います。
ご自身が「なんとなく気になること」を思い起こしてみる。意外と、学生時代に興味や関心があったことなども面白いかもしれませんよ。
ここからはご案内です。
私が属しているコミュニティの1つ。NPO法人ドラッカー学会(以下、ドラッカー学会)で、下記概要で、オンライン/対面でご参加いただける無料イベントがあります。
日時:2025年5月31日(土)13:00~17:30
テーマ:何によって憶えられたいか
今なお経営者や起業家に大きな影響を与え続けているマネジメント思想家P.F.ドラッカー教授。
そのドラッカー教授に生前直接指導を受けた方の基調講演(対談形式)やドラッカーの考え方を実務や人生に活かす研究実践をもととした研究発表なども予定されています。
また、ドラッカー学会は40代~60代の会員も多く、多岐にわたる活動をされています。定年を見据えた活動の参考になる取り組みをされている方も多数いらっしゃいます。
この機会をご活用いただければ幸いです。
▼詳細・お申し込みは イベント予約サイトPeatixより▼
2025年春の年次大会 2025年5月31日 何によって憶えられたいか
研修体系構築・見直しのコンサルティング、研修、キャリアコンサルティングのお問い合わも承っております。
ウェブサイトには、コラムや公開セミナー情報なども掲載しておりますので、ご覧ください。
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