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コミーに学ぶ「チームマネジメント」の知恵(その2)

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 防犯・安全用のミラーを「気くばりミラー」として製造・販売し、銀行のATM、コンビニ、航空業界などで採用され、8割のシェアを持つコミー株式会社(以下、コミー) 代表取締役 小宮山 栄氏の、「小さな会社の競争しない戦略」の講演をもとにお伝えしている「チームマネジメント」の知恵。今回は2つ目の知恵―「確認」についてです。

コミーの「チームマネジメント」の知恵―確認
 実は、講演冒頭から気になっていることがありました。それは、演台におかれた小さな「のぼり旗」。

 講演も終盤。小宮山社長は、その「のぼり旗」を持ち上げ、次のような話を始めました。

 「"確認"も大事。この、のぼり旗には「確認型応答」と書いてあります。確認が大事なので、対話法研究所の浅野先生にお越しいただき、会社で勉強会を開いたんです」

 このお話を聞きながら(社員とは、わかりあえないから、確認が大事なのかな)と、ぼんやり考えていると、

 小宮山社長は、
 「海外にも出て、大きな会社と仕事をすると、いろんなことが起こります。(お客様側の)担当者もちょくちょく変わる。そうなると、口約束なんてことはダメで、書類に残さないといけない。そのときに「確認」が大事になる」

 そして、小宮山社長は茶目っ気たっぷりに「"確認"と張り紙をしていても、効果がない。でも「のぼり旗」だと、動かせるから都合がいい。机においておけば、気づきやすい」とおっしゃいました。(写真は、対話法研究所制作による「ミニのぼり旗」)
確認型応答.JPG

「確認」=「できないやつ」という思い込み
 
部下に指示を出したとき、どんな返事が返ってくることが多いでしょうか?

 「はい、わかりました」

 という返事があると、安心しませんか?

 実は、私は20代の頃、これが一番よい返事だと教わりました。
 当時の文化では、
 ・あ・うんの呼吸で
 ・つべこべ言うな
 ・いちいち聞くな
 ・仕事は見て盗め
 ・上司には口答えするな 
 などのキーワードが、どこからともなく聞こえてきて、なんとなくではありますが、細かに確認することは「失礼にあたる」と思い込んでいました。
 また、イチイチ細かく聞くということに対して「センスがない」という捉え方をし、「できないやつ」と思われたくないという気持ちもあったのかもしれません。

 そのため、30代前半でリーダー的な立場になったとき、メンバーから質問を受けると、心の中では(なんだかなー)と思い(意を汲んでくれ)などと思ったこともありました。

 しかし、年を重ね、さまざまな経験をするうちに、この考え方こそ、組織運営を阻むものであることを悟ります。
 というのは、社内で確認や質問がしにくいということは、確認や質問をする習慣そのものが薄れるので、たとえば、お仕事のご相談をお客様からいただいたとき、ご希望やその背景にあるものを、確認したり質問したりすることができません。
 そうなると、お客様のご希望に合った提案ができずお仕事にならないことや、お仕事になったとしても、微妙なズレが生じご満足いただけなかったりと、確認や質問をしなかったことによる弊害のほうが大きい、といった経験をしました。


コミー流「確認」の取り組み(「仕事心得」より引用)
 コミー株式会社「社員心得」の「仕事心得」(小冊子)には、次のような記載があります。
・ロボットになるな:何のための仕事か理解せよ。目的をしつこく考えたり、聞け。
・わからないことはすぐ聞け:担当者が忙しそうにみえても、疑問や問題点があったらすぐ聞くこと。(以下略)
・メモ用紙はいつも持っていること:メモは仕事の記憶、整理、計画のもと。毎朝「メモを見る」「メモを消す」を繰り返すこと。

新人・若手社員の傾向から 

 近年、新入社員研修や若手社員研修で、上司や先輩とのコミュニケーションについて話を聞くと、「上司や先輩に、質問や確認をするのはちゅうちょする」と、ほとんどの新人・若手が言います。
 それでは、新人・若手がどのように、知りたい情報を得ているか。多くの場合、ネット検索や質問コーナーをヒントにしていたり、同期や友人に聞いたりしています。聞かない場合は、考え続け堂々めぐりした結果、仕事が止まっています。

 ネット検索で知りたいことのあたりをつけることや、同期や友人に聞いて解決できるのであれば、それも悪くはないかもしれません。しかし、一番怖いことは、確認しなければならないことを確認しなくなることです。問題が起きるのは、判断の境目が微妙なときです。

きやすい環境づくりの重要性

 コミーのように、トップが自ら「職場ルールとして明文化」し、聞きやすい環境をつくる。私たちの職場に置き換えると、部や課の単位で聞きやすい環境をつくることは、マネジメント上いろいろな意味で有効だと思いました。

 なお、管理職研修などで「同じ質問を何度もしてくる部下」や、「どうしたらいいですか?」と、自分の考えを持たずに質問する部下についての悩みをお聞きすることがあります。

 部下がこのような質問をするときは、部下が「間違いたくない」、「叱られたくない」という気持ちが強くなっていることが多いようです。そのような兆候が見て取れたら、こちら側がゆとりを持って接し、「以前ノートにメモしたことを確認しようか」や「あなたは、どうしたらいいと思う?」と相手の意見を聞いてみてはどうでしょうか。すると、最初は戸惑うかもしれませんが、少しずつ、自分の意見を言えるようになります。
 このように、部下の気持ちに寄り添った対応も、試してみる価値があるので、参考になれば幸いです。

 そして、「確認」というテーマで、コミーが大事にしているもう1つのキーワードが「現場」。
 製造業では、3現主義という言葉で、「現地」「現人」「現物」を確認することの大事さを伝えています。
 一方で、私たちの仕事環境は、「現場を見た気」になりやすいツールが普及しています。たとえば、インターネット上の「写真」や「動画」を見ると、その場に行った気持ちになってしまうようにです。
 そのような環境だからこそ、「現場」を「確認する」というのも大事なポイントだと感じました。

 一人ひとりが抱える仕事量も多く、「効率」が重視される上、物理的に上司と部下の距離も離れるなど、コミュニケーションが最小限になりがちな時代。だからこそ、マネジメント職は、「確認」など、コミュニケーション環境を整えることが重要である。と、改めて気づかされました。

 小さな組織が大きな成果を上げるための知恵。(その3)に続きます。お楽しみに。

2015年10月6日追記:ミニのぼり旗の制作者について、加筆しました。

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