微差で大差につながるー「電話応対」
電話応対の見直しで、効果を上げたケースはたくさんありますが、その中でも特に効果を上げたケースについてご紹介します。
ある大手企業の営業部門(B事業部)のお話です。その会社から依頼された当初のお話は「事務職の意識改革とスキルアップをしてもらいたい」というものでした。
その背景には、次のようなことがありました。
B事業部の顧客は主に各地域の代理店、つまり継続的な取引先です。営業スタイルは「ルートセールス」と言われるものでした。その取引先に対し実施した顧客満足度調査で次のような結果が出たのです。
顧客満足度調査の結果は非常に興味深いものでした。というのは、要望(言葉を変えると不満)は2点のみに集約されていたからです。
その「要望(不満)」というのは、
「電話での問い合わせ」に対する回答を早くしてほしい
「電話での問い合わせ」への回答を的確にしてほしい
ということでした。そこで課題を詳しく整理したところ、次のような現状が浮き彫りになりました。
電話で問い合わせることというのは、ネットで確認しきれない情報や、改めて確認したい内容です。しかも、急いでいる場合がほとんどです。
一方、お問い合わせをいただくタイミングというのは日中で、営業担当者が外出先で商談中、或いは移動中です。すると聞きたいタイミングに、聞くことができないという事態になります。
そこでB事業部では、社内にいる事務担当者の「電話応対」力が向上すれば、問題が解決すると考え「意識改革とスキルアップ」を相談されたのです。
「教える」のではなく「考えるテーマ」を与える
当初B事業部でイメージされていたのは、「電話応対研修」のようなダイレクトなテーマのものでした。しかし、B事業部の状況をお聞きしていると、それではあまり効果がなさそうだと考え「問い合わせ」に対し、「早く」「的確」に対応するためにはどのようにしたら良いか、テーマを与えて考えてもらう「課題解決研修」を実施しました。
すると、事務担当者からは次のような意見が出ました。
・商品知識が不足している。商品知識があれば、自分達でも対応できる
・顧客情報が不足している。顧客のことをもっと知っていれば、対応しやすくなる
・事務作業で2度手間になっていることが多い。無駄な時間を短縮できれば、商品知識、顧客情報を知る時間をつくることができる
ということでした。
そこで、社内では事務職を中心に業務改善と次のようなことに取り組みました。
1.商品知識の不足を補うために
・製造工程をみる(工場見学)
・商品が実際に使われている現場を見る
・営業担当者に講師になってもらい、商品知識勉強会を実施
2.顧客情報の不足を補うために
・事務担当者が担当する顧客を明確にする
・営業担当者が訪問する際に同行し、事務担当者を紹介する(お客様の会社を見学させてもらう、話を聞く)
上記に取り組んだ後、しばらくしてB事業部の顧客にヒアリングを行ったところ、顧客からは次のような反応がかえってきました。
「ちょっとしたことが、頼みやすくなった」
「顔がわかっているので、安心して連絡できる」
「前より回答が早く、確実になった」
実は、B事業部の事務職社員のほとんどは中途採用者でした。新卒で入社していれば、新入社員研修で学ぶ機会があることが、中途採用で、知る機会がなかったのです。
共通テーマで課題に取り組んだことによる、引き上げ湯葉効果
また、一見コミュニケーションが取れているように見えていた事務担当者達でしたが、この取り組みをする前までは必要なこと以外は口を出さない、お互いに遠慮しながら仕事を進めていました。
しかし、共通のテーマを持って課題に取り組んだこと、工場見学など共有できる体験をしたことにより、組織としての一体感が生まれました。
さらに、事務担当者が研修参加や工場見学に行っている間は、事務担当者が不在です。その時、営業担当者は外出せずに事務担当業務をしました。それにより、事務担当者の仕事を知る機会になり、営業担当者のその後の仕事の進め方も変わったのです。
このように、「取り組む価値のあるテーマ」を見つけだし、そのテーマを自分たちの力で解決しようと努力することは大きな「差」を生みます。もし、テーマが見つからなくても(或いは時間的余裕がなくても)、ご紹介した「知識不足を補うための取り組み」をきっかけにしながら取り組み始めることも「差」を生む一歩になるでしょう。
次回は、「部下と上司の面談」に関する例をご紹介します。
本ブログでは、職場で20代(若手)を育てたい方のために、どなたでも、5分でできる人材育成のヒントをご紹介しています。