"教える"だけでは、なかなか育たない理由
「あ~、あの時上司や先輩がしてくれたことは、こういうことだったのか」という経験は、誰でもお持ちですよね。その時はわからなくても、成長する時やその立場や役割になって、ハッ!とするようなことです。そうした気付きこそ、プロと言える仕事に近づく上で、大切だと感じている方も多いのではないでしょうか?今日は私の経験をご紹介します。
経験1:毎日が研究
アルバイト先がホテルが直接経営するレストランだったため、そこで働く人のほとんどがホテルからの出向社員でした。料理をする調理担当、パンを焼くベーカリー担当、レストランを運営する接客担当。全員立場は違いましたが、彼らには2つ共通していたことがありました。それは1)ライバル企業よりもより良いものを提供したいという意識の強さ、2)"次はこういう仕事がやってみたい"という目標。
そうした背景からか、彼らは日常的に「この前、あそこのホテルが新しくやりはじめた☆☆、行ってきたよ。確かによかったよ。」とか、「元○○の料理長がオープンするあの店、今度の休みに行かないか?」、「今度のキャンペーン用の新しいメニューの試作を作ったんだけど、ちょっと感想聞かせてくれる?」、「こういう商品作ったんだけど、売れるかな?」といったことを話し、取り組んでいました。
そんな彼らが常にチェックしていたのは、ホテルやレストランの新しい取り組みや、商品・サービスの情報を提供する業界専門誌でした。その雑誌が届く頃になると、「雑誌来た~!?」と必ず聞かれ、「来たらすぐに見せてね」と予約が入ります。渡したら渡したで、われ先にと奪い合うように回し読み。(インターネットが普及する前の古き良き時代だったのかもしれません)
とにかく、誰がどんなアイデアを持っていて、何をしようとしているのか、業界誌はどのように取り上げて、どう反応しているのか、それに対するお客様の反応はどうなのか、といったことを、常に情報収集し研究しているのです。
といっても、その職場ですぐに活かせる訳ではありません。ただ、必要なことはメモを取ったり、調理をする人であれば、14時~15時のアイドルタイム(お客様が食事をしない時間帯)を使って、実験?したりしていました。みんながそれを、当たり前のこととしてやっていました。
実験?後は、接客担当者に実験結果(=試食)が待っているので、私はそれが何よりも楽しみだったことは言うまでもありません(笑)
経験2:一緒に遊びに行く
私は接客部門に属していましたが、その部門では、時折アルバイトを遊びに連れていってくれました。といっても、全く関係のないところに行く訳ではなく、その会社が経営する他のレジャー施設に連れて行ってくれるのです。
私が最初に連れて行ってもらったのは、"ゴルフの打ちっぱなしの練習場"でした。「ゴルフをやったことがない」と言っても、「いいよ、全然」と言って、先輩2人に連れていかれました。
全くボールが当たらない私の様子に大ウケされることもありましたが、"楽しもう!"という雰囲気で接してくれたため、あっという間に時間が過ぎました。その時の楽しかった記憶は今でも鮮明です。
当時の私には、"上司・先輩が、一緒に遊んでくれ、楽しかった!"という記憶として残りましたが、その後、お店にお越しになるお客様から、自社が経営する他の施設について、行き方などの質問をされたり、他施設との共同キャンペーンの際のご案内などがあり、施設に行った経験やそこで得た体験が役に立ったことは言うまでもありません。
それも、"教えてますよ~"という先輩社員の思惑を感じながら体験したのではなく、"楽しいこと"として体験したので、お客様に伝える際も、"提供者"と"利用者"という感覚ではなく、意識せずにお客様にその施設を利用する本当の意味での楽しさを伝えられていたと思います。
バリエーションは豊富に
何年か前に、某国でオリンピックで金メダルを取れるレベルの選手を複数育成した実績のあるコーチにつき、その指導方法を学んだコンサルタントの方と一緒に仕事をしていたことがありました。そのコーチの指導法には様々な工夫がなされていたのですが、その中に、今回のお話しに通じる点がありました。それは、次のようなことでした。
「"感性"が大事」
そのコーチは、「映画や演劇など、たくさん見るように」と日頃から言い、観たものの感想を聞いてみたり、ある時は夕方皆で夕焼け~夜景がきれいな場所まで行き、ただ皆でそれを見る時間などを取っていたそうです。
その話を聞いた時に、私は"試食で意見を求められたこと"や"先輩が連れて行ってくれたゴルフ場"のことを思いだし、"あ~、あれはこういうことだったのか"と感じたことがありました。
"感性"と言われると、唐突に感じる方もいらっしゃるかもしれません。その際は、上司や先輩と言う立場を忘れて"一緒に出来ること"や"思っていることを伝えられること"と考えると良いようです。
このように考えると、"自分も相手も楽しむ"ーという発想で良いので、自分にとってもワクワク出来ることが増えそうですね。