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HRD(人材の育成、教育研修)の現場から、気づいたこと、アイデアを発信します。初めて人材育成や教育担当になった方でも、わかりやすく、取り組みやすい情報提供を目指します。特に、20代~30代を元気にしたいご担当者様、是非このブログにご参加ください。

研修営業 初めて物語6~成長力の源泉『ES(従業員満足)』

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CS(Customer Satisfaction:顧客満足)につながるES(Employee Satisfaction:従業員満足)に取り組む会社は増えています。働く人が成果を出しやすい環境を提供することで、業績への好循環が生まれる。ESに取り組むことは理に適っているといえます。今回は、ESの取り組みの着眼点をご紹介します。

 

強い組織の取り組み例ー2 カーディーラー

1990年代後半、私が研修の営業に取り組んでまだ2~3年目、新規開拓でお伺いしたある日本のトップブランドのカーディーラーのお話です。

その会社の人材育成についてお聞きしていると、次のお話となりました。ご担当者様との会話を再現します。

 

好きで入った会社を辞める理由は?

ご担当者様:うちの会社にね、入ってくる人って、基本的に車が好きで入ってくるんですよ。

私:なるほど、そうですよね。きっと御社の車が一番好きで入社されますよね。

ご担当者様:そうなんですよ。でもね、入社してしばらくは頑張っているんだけれども、そのうち辞めてしまう。辞める理由を聞くと、「家庭の事情」とか「実家に帰る」とか言うんですね。せっかく育ってきて、"これから"という時に辞める人が多いんで、育成する側の私たちとしては、少なからずショックが大きいんです。

私:そうですよね。関わった方の退職は、お辛いですよね。

ご担当者様:そうなんですよ。でね、辞めてしまった社員の同僚に、彼らがどうしているかを聞いてみたことがあったんです。すると、「あぁ、あいつなら、別の会社のディーラーに転職しましたよ」と言うんです。驚きましたよ。実家に帰るっていうのは、建前だったんですね。

私:うわぁ、それはまたショックですね。

ご担当者様:そうなんですよ。で、他の辞めてしまった社員についても調べてみることにしたんです。するとほとんどが他のディーラーに転職している。彼らは、車は好きだけれども、会社が嫌で辞めてるんですね。これにはさすがに衝撃を受けました。

私:うーーん、それはお辛いですね。

ご担当者様:いやぁ、本当に辛いですね。でも、これをこのままにしてはいけないと思ったんです。そこで、研修で対策を取ることにしたんです。

私:どのようなことをされるんですか?

ご担当者様:辞めてしまった人間に話を聞いたんですよ。すると、会社は嫌ではなかったんだけれども、上司との関係が上手くいっていないことがわかりました。上司が自分の考えややり方を押し付けるので、合わないと感じて辞めて行くようなんですね。

私:なるほど、そうなんですね。

ご担当者様:そこで上司の層を対象に、部下とのコミュニケーション力を高める研修を導入することにしました。

私:コーチングのようなものをされることにしたんですか?

ご担当者様:いや、コーチングはやらないです。ではなくてね、"話を聞くことの大切さ"というテーマで、それだけやることにしたんですよ。それも、精神医学の専門家の方に、1時間ほど話をしていただいた上で、研修を進めるやり方にしたんです。

私:それは、面白い取り組みですね。

ご担当者様:そうでしょ?上司も悪気があってやっているわけではないし、知らないことも多いので、できるだけ客観的に話を聞いてもらえるようにしたかったんです。いきなり方法論を伝えると、なんかやらされ感になるでしょ?

私:えぇ、わかります。

ご担当者様:なので、まぁ、そんな取り組みをこれからしていこうと思っているんですよ。

私:なるほど、そうなんですね。

 

ESの着眼点とは? 

私としては研修実施が決まった後のお話でしたので、お仕事にならずその具体的な取り組み結果を知ることが出来ていません。しかし、数多くのメーカーがある中で、その会社の車が売れ続けている状況から判断して、この件に限らず、考え方やアプローチが奏功していると推察しています。

特に私自身がこの件から学んだことは、"自社に対して後ろ向きな行動をとる人から学ぶ姿勢"でした。

CSの考え方の1つに、"The customer is always right.(お客様は常に正しい)"がありますが、この会社は、従業員もその会社のファンであり、お客様でもあると考えているのです。

本来は一番の理解者に成り得る人が離れて行った時に、どのように考え行動するか。その考え方とアプローチ次第で、会社の成長力に違いが出るのです。

自社の商品やサービスをエンドユーザーとして利用する仕事であってもなくても、"入社時は、誰でも会社のファンである"と考えてみると、考えられること、できることが見つかるかもしれません。

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