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先輩風を吹かさせる

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昨日に引き続き、「理想の社風」づくりのアイデアを。

 

フレンチレストランの取り組み

先日、地方のフレンチレストラン(東海・近畿圏から車で約2時間)に行ってきました。平日の夜のためか、私たちがいるフロアー(そのお店には個室や、カジュアルなレストランもあります)には私たち1組だけ。ランチタイムや週末には予約でいっぱいの店だけに、なんともぜいたくです。

通常であれば、お料理やワインの説明など、通り一遍のコミュニケーションで終わってしまうところですが、その日は、私たちがどこから来たのか、横浜がどんなところなのかなど、色々と興味を持って聞いて下さいます。

お料理が進んできた時に、最初に接客をして下さっていた方から、若い方に変わりました。1つ1つの動作が初々しく、ちょっと緊張している様子。「横浜からお越しくださったんですね。ありがとうございます。私も行ってみたいです」など、会話を挟みながら一生懸命の接客です。名札の脇には"研修生"というバッチが。アルバイトかな?と思いつつ、「いつからこのお店に入ったんですか?」と質問すると、「今年の2月からです」との回答。半年以上も研修生とは。個店でありながら、ずいぶんしっかりした育成をされていると感心しました。

育成についてもう少し聞きたいと感じたので、次のような質問をしました。

 原田:どうしてこのお店に入ったんですか?

 新人さん:

  私、パティシエになりたくて、専門校に行ってたんです。その専門校とこのお店は、色々とつながりがあって、学校にインターンの案内が来ていたので、それに応募して、昨年の夏、インターンで仕事をさせてもらっていました。そうしたら、このお店も、スタッフも、お客様も本当に素敵だったので、就職したくて応募したら、採用していただけました。ラッキーです。

 原田:なるほど。ということは、普段はお菓子を作ったりもされてるんですね。

 新人さん:

  そうです。普段はお菓子づくりが中心で、ショップのケーキなどを担当しています。けれども、時々フロアーに出て、接客も勉強させてもらっています。接客は、まだまだ難しいです。

と、このようなお話でした。

 

一番育つのは誰?

 このお店には何度かお邪魔しており、主に先輩社員に対応していただいていました。今まではお店も混んでいて、先輩社員にとって私たちは多くのお客様のうちの1組。会話をするゆとりもありませんでした。しかし今回は、"(お客様が少ないとはいえ)ずいぶん丁寧に接客して下さるなぁ・・・"と、感じていたのです。(言葉で表現するのは難しいのですが、接客の姿勢や対応も、かなり教科書的だな・・・とも感じていました)

 新人さんのお話を伺って、腑に落ちました。先輩社員の接客態度が変化した理由は、新人さんが加わったことにより、先輩社員が自分の接客姿勢や対応を、"人に教える"という視点で勉強されている―ということだったのです。

 

先輩風をいかに吹かさせるか?

 後輩が入ってくれば、先輩社員が伸びる効果はわかっても、採用となるとまた別の話し。イメージ通りの機会が作れないのが現状でしょう。ビジネスインターンやアルバイトなど、方法はありますが、双方にとって効果を上げるためには、それなりの準備が必要です。

 そんな時にどうするか。今年あるお客様から依頼されて、取り組んだ事例をご紹介します。そのご依頼は次のようなものでした。「若手社員の研修に、新入社員を参加させる場面を作って欲しい。これから新入社員が育って行く上で、会社全体との繋がりを感じておいてほしいから」ということでした。

 そのリクエストに対し、講師も私も、最初は若手社員と新入社員を一緒にすることは反対していました。一般的に、2~3年目の社員は、自分に仕事を任されている(認められている)実感が薄いため、会社や組織に対して不満を持ちやすい年代です。その状況を見て、"モチベーションが低い"と捉えられることも多々あります。また、ここ数年の経営環境の不安定さの悪い影響を受けているのもこの年代。場合によっては、会社を辞めたいという声が出てくる可能性もあります。そのため、一度全て不満を吐き出させることに特化した方が良いことや、中途半端な状況では、新入社員にも良い影響を与えない恐れがあるともお伝えしていました。

 しかし、そのご担当者様の強いご希望から、"一緒に"という方向となりました。そうなったら、最大の効果を生むためにはどうするか?と考えて取り組むしかありません。講師はかなり運営に気を使い、次のように進めました。研修では、若手社員にテーマを与え、新入社員に対して発表する場面を設けました。発表するための準備として、若手社員に対する動機づけと、発表のための準備時間をたっぷりとりました。

 その効果は?講師も私も想像していた以上でした。彼らは発表の場面で、会社から見たら若手社員全体が力不足であること、まして現状は、経営そのものが大変であり、優先課題はそちらであること。そのような中で、どのような心構えで仕事に取り組み、いかにスキルあアップしていくか、それが大事であること。また、新入社員と一緒にどのように頑張っていきたいかなどを伝えていました。

 その話を聞き、それまで"先輩社員に迷惑をかけてはいけない"と、気持ちを張り詰めていた新入社員たちも、安心したようでした。

研修後、講師と私は、良い方向に進んだことにほっとしたのと同時に、「やっぱり、先輩風は、びゅーびゅー吹かしたいものなんだね~」という感想を得ました。(笑) 

育成の視点から言うと、先輩が直接面倒を見る、マンツーマンの形式で育成することが理想かもしれません。しかし、それが難しくても、新入社員と若手社員が交流する機会を設けることで、先輩社員の意識が変わり、成長につながります。今回いただいたご依頼により、そのことが実感できました。

先輩風を吹かさせる機会も「理想の風土」の一歩かもしれませんね。  

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