サッカー日本代表監督ザッケローニ氏の契約秘話は、企業における外人マネージャー採用プロセスに通じる
2週間前にサッカーアジア大会での快進撃を見せた日本代表チームについて、試合の回顧録やザッケローニ監督の生い立ちを語る本が出始めてきた。
中には、サッカーファンでないと興味の湧かない戦術論のようなものもあるが、Number最新号(#772)の特集は組織論に応用できる切り口で秀逸である。
以前、「ClosureとBroker」という「ネットワーク型組織論」の概念で歴代の日本代表監督について論評し、ザッケローニ監督の言動からある程度の活躍や期待を予測していたが、まさにそのとおりになった格好だ。
裏話で語られているエピソードについても、
- 選手個人とのコミュニケーション重視の姿勢
- ハンズオンで細かい指示を出し、背景にある理論まで教え込んで応用が利くようにする(要は「頭も使え」といっている)
など、この理論を裏付けているような気がする。
また、「特集:ザックを探し当てた男たち」では、協会側がザッケローニ監督と契約するまでの裏話が結構詳しく記載されており、こちらも面白い。
記事によると、以下が、日本代表監督を人選するにあたっての判断基準だったそうだ。
- 高いレベルの指導暦
- 日本の良さ(組織力、団結力、俊敏性など)を生かせる
- アジアの戦いに対応できてアジアの文化、伝統を理解してくれる人
- オリンピック、ユース育成の指導経験があるか、意欲のある人
- 日本人、日本文化へのリスペクト
- Jリーグなど日本のカレンダーの特異性への理解
- 日本人スタッフの入閣、および日本人スタッフともうまくコミュニケーションを取れる人
この条件は、まさしく、「よきマネージャーの条件」に匹敵する。
グローバル化を目指す企業が社長を外部から(しかも外国人から)探すときの条件として、そのまま採用してもいいようなものだ。
日本人=既存社員、日本=既存企業と読みかえれば、そのままヘッドハンターに渡してもよさそうな条件リストに見える。たとえば、こんな感じだ。
- 高いレベルのマネージャー経験
- 既存社員の良さ(組織力、団結力、俊敏性など)を生かせる
- 当面の新規市場であるアジアの市場に対応できてアジアの文化、伝統を理解してくれる人。特に、チャネル戦略など
- 若手社員育成の指導経験があるか、意欲のある人
- 既存社員、既存企業文化へのリスペクト
- 既存の(日本の)業界慣行の特異性への理解、競合対応や官公庁の規制対応など
- 既存社員スタッフの入閣、および既存社員スタッフともうまくコミュニケーションを取れる人
特に今回の日本代表は、世代交代の観点から、本来は国内組日本人同志の「あうんの呼吸」でマネージされるであろうディフェンスのメンバーにおいて、人材育成やイノベーションが期待されていた。そういう意味で、外国人監督においては、より高いレベルでの「日本人化」が要求される難しい人選であったと思う。
そこに、守備重視の伝統を持つイタリアという国の監督というのがぴったりハマッたと思われるのが、後講釈ではあるが非常に納得できるところだ。
ちなみに聞くところによると、ザッケローニ氏と日本サッカー協会の契約は、2年延長のオプション付き2年契約で2012年8月末までとのこと。
結果が芳しくない場合に備えて日本側が拒否する可能性と、本人が他からの魅力的なオファーが出てきた場合の両方を加味した結果であり、代表監督の契約としてはよくあることらしい。
次回2014年のワールドカップまで、ザッケローニ氏の契約が延長されるのか興味あるところである。