こんな時期に合わせた戦略とマーケティングを考え直してみました
本稿は自分自身の一人ブレーンストーミングによる「頭の体操」です。震災以降多くのイベント・セミナーが中止され、原発・電力問題の先が見えない中でマーケティング担当者は何ができるのか・するべきかを、本年の目標再検討として考えるためのものです。いろいろ「ツッコミ」を入れていただければ幸いです。
まず、「悩んだときには、より根源的な(高い次元の)定義や基本の志に戻って考え直す」という観点から、マーケティング・セオリーに即して世の中の状況を再整理してみます。
「外部環境変化(STEEP)」
Society : 引き続く緊張感・不安感(計画停電、原発問題)から、防災対策やBCP(Business Continuity Plan)の実践に注目が傾斜。体験して初めて感じられた「不都合」の発見(例えば、セキュリティ重視のバランスを変えて、PCを持ち出し在宅勤務へシフト)や、今後さらに想定される事態への備えが重要視される。
- 必要なものは即断・即決で即利用開始。スピード重視で合い見積もりや入札などのプロセスは簡素化の方向
- 被災地(岩手、宮城、福島、茨城の東北4県)、準被災地(東京を含む関東圏、日本海側の東北3県など被災地周辺)、非被災地(西日本、中部、東海)の地域別温度差あり。セグメントに地域を考慮する必要が高くなる。
- 被災地周辺で大規模な人・モノの移動が発生。
- サプライチェーンの再構築が必須、買占め騒動から個人レベルでの備蓄ニーズや自己責任・受益者負担の意識が高まる。B2B分野でも、部品の欠品による生産停止などへの対応が急務
- 希望を探すムード、共に復興を目指す共感のメッセージが期待される。
Technology : ITの要素技術的には、以下のような分野への関心が高まるものと予測。
- バックアップ&リカバリー関連、
- Webサイトの予期せぬピーク対応、Webコンテンツ管理 (情報発信)
- シミュレーション(放射能関連)、
- 情報集約・共有(安否確認、避難状況、交通情報、災害情報、対策の進捗確認など)、地図とのマッシュアップや衛星画像の活用が身近に
- テレワーク(在宅勤務)、
- Twitter/SNSによる情報発信・伝播・共有
Economics : 中長期的な投資が控えられる。一方、ダメージを受けた設備は一新せざるを得ない。復興対策費用を捻出するため、更なるコスト削減が求められる
Ecology : 電力が制約条件になる。したがって、
- 当座の不足電力を補う方法や、中長期的に電気を使わない仕組みに注目が高まる(省エネグッズ)。
- 原子力に変わるエネルギーが注目される(蓄電池、スマート・グリッド、風力発電など)
Politics :
- 物流、交通、電力に関して、突然停止や価格変更などの混乱が予想される。
- 買占め騒動に対応するための増産要請や、配給型販売の要請・行政指導などが想定される
- 上記のような混乱を回避するための規制緩和が、なし崩し的に行われる可能性が高い
- 復興対策のための予算バラマキなど、お客様の行動基準に影響を与えるものが多い
「SWOT分析」
上記からSWOT分析の外部環境に属するOpportunity、Threatを炙り出す。
今回、Opportunity部分は各自の立場で異なりますし、Threatは山ほどあって暗くなりそうので割愛しますが、「仮説によるOpportunityの捻り出し」が肝だと思います
なお、IT業界ですでに顕在化しているOpportunityで言えば、以下のようなものが挙げられるでしょう
- バックアップ・リカバリー関連の機器、サービス
- 在宅勤務のための、リモートアクセス環境、VPNなど
- ホームページへのアクセス増大時に対するリソース提供(IaaSのクラウド)
- 災害時の本社機能切り替え(東京→関西、日本→海外)に伴うインフラ整備
「4P/4Cの視点によるアクションプラン」
1) Product/Customer Value
- 自社が提供する製品・サービスの再構築。今まで以上にターンキー型/パッケージ型にして「即断・即決・即利用」のニーズに応える必要あり。
- Chasm理論で言うところの「ホール・プロダクト(関連製品)」をしっかりと揃える必要あり。例えば、熟練オペレータ付きのオンサイトでのアウトソーシング(サービス提供)など
- 従来のような、部品積み上げのSIや要求仕様から「じっくり作り上げるプロジェクト型」は通用しなくなりそう
- さらなる防災や復旧・復興につながるValue提案
2) Price/Customer Cost
- 即断・即決分野に関しては、納品確保のために、即払いもありえる。価格よりもスピード重視のため、入札などのプロセスは短期化。
- 全般的には、被災関連企業ほどキャッシュフローが厳しくなり、ファイナンス関連の条件に関する提案も重要性を増す
3) Place/Convenience
- 物流・交通・情報網の混乱から、直販カバレッジの重要性が高まる。チャネルが多重化するほど、情報が錯綜しフルフィルメントも不確実になる。
- 確実な納期・在庫の重要性が高まる。
- ホール・プロダクト整備という観点で、自社とパートナー企業の一層堅いアライアンス(確実なTeaming強化)が求められる
- 品薄時における重要顧客への対応という観点から、CRMの実践的運用力が試される
4) Promotion/Communication
- PushからPullへ更なる傾斜。Twitter/SNSなどデジタル・マーケティングへの傾斜。イベント・セミナーに来る余裕(精神的・時間的)が薄れているため、リアル・セミナーからWebinarへシフト
- 直近の防災や復興につながるシナリオを盛り込んだコンテンツ(セールストーク)の作成
やはり、1)のCustomerValueが肝であることに、それほど異論はないと思います。ただし、スピード感への対応が重要でしょう。ストレートな防災や現状に復旧するだけの提案はたやすいが、それ以外のものは、シナリオの出来栄えが勝負。復興として「過去を上回るもの」を再構築する場合に、重要性・緊急性を訴求するところがポイントになりそうな気がします。