原発問題:海外からの「風評被害」を沈静化させるアイデア
既に様々な報道がなされているが、最近の日本製品の放射能問題に関して、国内のみならず海外の過剰反応が激しいようだ。
さらに農産物だけでなく、自動車部品のような工業製品にまで放射能汚染がなされていないかどうかの検査が要求されているという話もあるとのこと。
また、被災地とは無関係な地域における観光客も激減しているとの話がある。
これを逆手にとって、香港では、期間中にM6以上の地震があれば料金返金という日本ツアーも登場し、日本通のリピーターには好評らしい。
中国に立ち寄ってきた外人からは、「最近の中国料理店では、日本から食材を輸入していないので安全だと言っているらしい」という話を聞かされた。
「ギョーザ事件を忘れたか?」とか「こんなほとんど無意味な厳しい検査を課すとは何事か?」と言いたくもなるが、米国のBSE(狂牛病)問題のときは、全頭検査を主張した「潔癖症 日本人」である。立場が変わって因果応報と言われてもやむをえないところがある。
ジャーナリストの田原総一朗氏は、「米国による”80km圏内撤退”判断が原因であったが、当の米国は既に判断を”日本並み”に変えている」と説いている。
この問題の根幹には実は、「対外人向けコミュニケーション」の問題が多いと思われる。
そこで、グローバル企業として弊社の社内のCommunityでもDiscussoinがあったので、
- チェルノブイリの時には、欧州人は、いつごろからキャビアやロシア(ウクライナ産)の食品を食べるようになったか?
- AREVA、GE、IAEA、米軍など外国の参加メンバーに同席させ、彼らから語ってもらうというアイデアはどうか
など、私も聞いてみた。
外人たちの反応はこうであった。
- 長期的な観点で見ると、暴動が起こらなかったり、電柱が立ち始めて電気が復旧する速さなど、「日本人の底力、日本ブランド」に対する認識・信頼は底堅い。今回の件で、改めて、日本の規制が世界標準以上に安全重視であることを知った
- 基本的には、短期的なTransparencyの問題。下手な言葉よりもデータを開示するべし。
- IAEAや、米国・フランスなど多国籍のメンバーによるendorsementは、信頼性を増すので有効。日本だけでなく、どこの国でも、文化を超えたコミュニケーションは簡単ではない。
- どこの国でも、TVや新聞などメディアはキャッチーにするためにセンセーショナルな内容を好むが、「東京が無事だ」などという話はニュースにならないので報道しない。しかし、ソーシャルメディアなどでしっかりとデータに基づいた情報公開と議論を行うことにより、有識者の意見は沈静化するだろう。いまやネットの力は報道機関を仰ぎ、信頼されている。
- NHKニュースの海外版など、日本から英語で発信されているメディアで使われている表現がまずい。いくら過去最大規模でも、HugeとかMassとか言うと、いかにも日本全国が汚染されているような印象を受けてしまう。「想定外」を繰り返すと、「あの几帳面で保守的なリスク回避主義の日本人ですら想定できなかったぐらいヒドイ」というイメージになるので、さっさと「想定が甘かった」と言った方が論理的には後々有利
言われてみて、改めてNHK英語版のサイトを見てみた。例えば、こちら。
- レベル7でチェルノブイリと同じレベルになった。
- 実は東京近郊の千葉の浦安もひどい。(浦安も場所次第だし、肝心の東京はほとんど無傷なのだが。。)
- 日本の首相は、米国に引き続き支援を要請
等々。
日によってニュースの内容は異なるが、確かにいくつかのニュースを固めて見出しを見てみると、日本人の自分が見ても「危ないから来ないで。日本は大変なんだ」というメッセージに見えてしまうこともある。「備えよ常に」の観点から国内向けにはこれでよくても、国営放送のあるべき姿として
- 日本の姿を海外に正しく伝えるための報道という観点からは、国内向けと同じ内容でよいのか? (日本人を代表する)社説的なメッセージがあっていいのでは?
- 他の外国メディアと同様に外人にウケる(買ってもらえる)コンテンツを配信するだけで存在意義があるか?
という新たな問題を感じてしまった。
また、英語での情報発信を目的とした首相官邸のFacebookはどうなっているかというと。。 記者会見の日付の羅列だけ。見出しには全くメッセージがない。
まだまだ日本人としては、やることがありそうだ。