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― IT部門とマーケティング部門のハザマで ―

【Coffee Break】 MDMとPIMの違い(SoRとSoEの中間はPIM)を知る人は少ない(今のところ)

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 MDM(Master Data Management)とPIM(Product Information Management)はITベンダーによってMDM/PIMと併記されていたり、別の製品になっていたり、と分かりにくいものです。今回はMDMとPIMの違いを明確にし、データマネジメントとしてPIMを捉えること(PIMはMDMの一部)が必要な経営環境に入ったのではないか、という仮説を考察してみたいと思います。

 デジタルマーケティングに携わる方から、SoR(System of Record)やSoE(System of Engagement)という言葉を聞くことはなく、マーケ関連メディアにキーワードとして使われることもありません。しかし、IT部門系のメディアやIT部門の方からは、現在の仕事とこれからの仕事を明確にしたいという意図からか、SoRとSoEはよく使われるキーワードです。念のため簡単に解説しますと、SoRは従来からのERP、ファイナンシャル、HRシステムなど、いわゆるある程度固定化された記録主体(Record)の旧来のビジネスシステムです。SoEはパートナーやお客様などとの関係性(Engagement)を構築するソーシャルメディアなどのマーケティング要素の強い、絶えず変化する俊敏なシステムです。IT部門からすると今までの仕事はSoRで、マーケティング部門からするとSoEは日々の仕事として取り組んでいることです。ならば、SoRはIT部門、SoEはマーケティング部門と棲み分ければいいのでしょうが、話はそれほど単純ではありません。

 IT部門のSoRの仕事は明らかにシュリンクしており、SoEの分野は関われるものならば獲得したい領域ですが、マーケティングはキャンペーンなどで俊敏性が求められ、IT部門の仕事の性格と異なるため溝があります。これらはお互いの部門の事情からの個別の話ですが、経営環境からすると、流通業では国内の人口減少とeコマース新興企業の急速な市場シェア拡大があり、オムニチャネルに競争のまな板がシフトしてきました。同じように国内消費の将来が期待できないグローバル製造業も、従来のマルチカントリーの展開からグローバルに最大パフォーマンスを追求する経営スタイルに変化しようとしています(eg. 外国人役員や外国人CEOの登用、英語の公用化、欧米企業のM&A、ダイバーシティマネジメントの推進、これらの第一歩としての女性の活用など)。

 そこで、経営とITとマーケティングの「三方Good」な方法を見つけ出し、最大パフォーマンスを追求するマスクドニードが表出してきます。

 データマネジメントは全体最適として重要な仕事になりますから、商品マスターの価格や在庫数を一元管理するMDMの構築はIT部門のミッションです。では、マーケティングで活用する商品情報コンテンツやグローバルマーケティングで活用する多言語コンテンツは、ドメステックな国内市場にフォーカスしているマーケティング部門が構築しマネジメントできるのでしょうか。MDMとしての商品マスターはSKU単位ですが、商品情報コンテンツはマーケィング部門でSKU単位で管理されているのでしょうか。マーケティングのグローバルな全体最適を司る基盤を構築する役目はどの部門にあるのでしょうか。おそらく、日々のマーケティング業務に追われるマーケティング部門でそれらを一元化し、PIMとしてマネジメントしている企業は少ないと思います。

 私は以前、IT部門の方々が多く参加する日本データマネジメントコンソーシアムで、「現状の根本的な課題」として「MDMはもちろん、それとSKU単位で連携したPIMもIT部門が構築すべきではないか」(当時は2011年だったので少し早かった)と1年間ほど示唆していたことがあります。IT部門がSoEとしてTwitterのつぶやきの分析を行ったりすることも大切ですが、SoEの基盤としてグローバルPIMの構築を行うことは、前述の経営環境の変化に適応するため、非常に重要なことではないでしょうか。

「MDMはSoR、PIMはSoEのオムニチャネルやグローバルマーケティングの全体最適基盤」

 このように捉えることが、経営環境の変化にも、IT部門にも、マーケティング部門にも、メリットを与える(三方Good)ことにつながることでしょう。

 幸いにして、日本でサポートができるPIM製品も、安いものから高いものまで出揃ってきました。これらはいずれもグローバルに対応できるPIM製品ですが、CMS(Drupal)と連携したり、セルフサービスBI(自利利他のデータディスカバリ)と連携すると、オムニチャネルやグローバルサイトへ展開容易な基盤になります。以下にPIM製品を列挙しておきます。

  • Drupal(with PIMモジュール)
  • Agility Multichannel(with Drupal)
  • SAP Hybris(with Drupal)

※その他、Informatica(MicrosoftとSalesforce.com、53億ドル規模のInformatica買収に参加)などがあります。

 これらのPIM製品はそれぞれに特徴があり、その用途と適応を熟考する必要がありますが、別の機会にSWOT分析などを行ってみたいと考えています。


● 岐路に立っているIT部門?
http://blogs.itmedia.co.jp/CMT/2015/05/1_3_it.html


● デジタルマーケティングを全体から捉えたいIT部門の方は、
【シーズン1】デジタルのマーケティング(全15話)をご参考ください。
https://blogsmt.itmedia.co.jp/CMT/1/

● 雑談のネタ【Coffee Break】
https://blogsmt.itmedia.co.jp/CMT/coffee-break/

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