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【シーズン2 第10話】商用ソフトの商流構造とリードする人

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 今回はあまり語られることのない、無料のオープンソースと商用ソフトとの大きな違いである「商流」について考察してみたい思います。

「私が20代で起業したときに一番最初に行ったのは出版でした。それはなぜかというと、IT業界で顧客の仕事を受注したりする場合、時代により変化するブランド力や営業力のあるITベンダーからユーザーを紹介される関係を築くことが最も近道です。今でも、ブームのITテクノロジーベンダーに近づき顧客を紹介してもらうことを戦術としている人がたくさんいます。」(私のコンテンツマーケティングの歴史とブログより)

 商用ソフトの外資系日本法人は、マーケティングはインバウンドであれアウトバウンドであれ日本法人がリードジェネレーションしてからリードをパートナーに紹介する、という流れをとることがあります。商用ソフトの販売パートナーであるSIerは、オープンシステム以前のIBM、富士通、日立などのホストコンピュータベンダーが、営業なり、マーケティングを行い、リードを獲得してから自社の販売パートナーに端末商談や開発案件を紹介していた流れに馴染んでおり、特にデジタルマーケティングのような新しい分野では、自力でリードジェネレーションを行いリードを獲得できるところは限られています。一般的に日本法人のある有料のオープンソースに大手SIerなどがパートナー契約しているのは、リードを紹介してもらえるという関係が成立するからです。逆に商用ソフトでも有料のオープンソースでも、リードを紹介する力のない日本法人の場合はSIerなどのパートナーはあまり相手にしません。

 デジタルマーケティングが浸透する前の外資系日本法人には、IT部門に人脈と営業力のあるIBM出身者が多かったのですが、現在はデジタルマーケティング分野に強い人が必要になります。その理由は、特に立ち上げ時に、マーケティングに強い日本法人は多くのリードをパートナーに紹介し、パートナーは技術スキルを獲得し確実に実装する、このGive&Takeが成立するからです。

 技術スキルの獲得が難しい商用ソフトの場合は、パートナーを育成するのに工夫が必要になります。欧米の本社からトレーナーを呼んでトレーニングさせたり、実際の欧米のプロジェクトに日本のパートナーの技術者を送り込んで育成したり、どの外資系日本法人でも新しいタイプの製品は立ち上げが難しいものです。

 私が以前に実践した方法は、スキルトランスファーがしやすい共生組織を触媒にする、という方法でした。まず、アウトサイド(外部)の会社を特別に共生関係とするため1社だけインサイドに近い存在にします。欧米の本社のトレーニングやスキルトランスファーは社内の人材にプラスして、共生組織に集中的にビルトインします。同時にデジタルマーケティングなどでリードジェネレーションを行いリードを獲得し、パートナーになりたいと考える会社などに紹介します。しかし、その会社は技術スキルがないので、共生組織をアンダーかサイドに付けた組織にします。これを繰り返していくうちに、技術のスキルのなかったSIerパートナーに共生組織からスキルがトランスファーされ自立することができます。技術スキルを獲得したパートナーは自らのデジタルマーケティングなり営業活動でリードを自力で獲得できるようになれば、それで育成完了です。

 無料のオープンソースの場合は、技術スキルは自発的に獲得したエンジニアが巷に存在しています。しかし、マーケティングを行う日本法人のような組織はありません。したがって、前述の共生組織のような存在の技術スキルの高い会社と信用力のあるパートナーとの連携プロセスを誰かが担い、そのパートナーに技術スキルのトランスファーが行われ、そのパートナーが自らリードを獲得できるように育成する必要があります。この仕組みがエコシステムのように繰り返されるとたくさんのパートナーとエンジニアがマーケットに存在するようになり、その中で競争が生まれ、技術力のない会社や営業力やマーケティング力のない会社は淘汰されます。

 では、オープンソースのDrupalで考察してみましょう。
 グローバルなマーケットでは、Drupalの創始者であるDries BuytaerさんがCTOになり創業したAcquiaという会社が、マーケットを適切な方向へリードしています(eg. SAP Hybrisとマイクロサービス方式)。日本にも適切な方向へマーケットをリードする人が存在すれば、商用ソフト以上の効果をユーザーに与え、たくさんのデジタルマーケティングプロジェクトも生まれてくることでしょう。

● 雑談のネタ【Coffee Break】

https://blogsmt.itmedia.co.jp/CMT/coffee-break/

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