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【シーズン2 第9話】アドテクの構造変化とMicro-Momentsのイノベーション

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 「マイクロサービス方式の組み合わせとペンシルのようなイプシロン」で、システム合成からデジタルマーケティングの4つの構成要素からアドテク(【B2】 コンバージョン、クッキーまで)を除外しました。

「B2B企業は、広告を求人目的に活用することがありますが、素材や部品の販売に直接的に結び付くものとして捉えていないので、一般的にアドテクにフォーカスすることはありません。逆にアドテクにのめり込みやすいのはB2B2C企業です。なぜなら、自社の商品を販売するのは小売なので、どんな人が購入したかなどの情報を得にくい立場にあるため、広告をできるだけ『個』に向けて効率よくしたいという欲求が強くあるからです。」(アドテク=デジタルマーケティング?より)

 B2B2C企業にとりアドテクは「個」を認識する大切な手段のひとつです。ID-POSなどで把握することも必要でしょうが、顧客の行動をMicro-Momentsから察知できるかどうかが大きな差別化要因になります。購買プロセスにおいて、顧客の行動がスマートフォンに移行し、顧客は目の前にあるデバイスを使う瞬間、つまりMicro-Momentsをキャッチできるかが重要になり、マーケティング的にスマートフォンはMicro-Momentsのセンサーという位置付けに再定義されるでしょう。

 Micro-Momentsを察知する最も重要なセンサーであるスマートフォンで日本のシェアが高いiPhoneはiOS9からアドブロック機能を搭載します。アドテクを駆使して配信される広告は、利用ユーザーにとり邪魔になることがあります。例えば、少し前までクライアント常駐型のメーラーには迷惑メールを自動振り分ける機能がなく、毎日削除したり、手作業で振分けリストに登録したりしていましたが、今はどうでしょう。メールマガジンや楽天でうっかりチェックを外さず購入したお店のメールなどはどんどん迷惑メールに直行させてしまう人が多いのではないでしょうか。

 PCブラウザーに広告ブロックのAdBlock Plusなどのプラグインをインストールすれば、ほとんどの広告が表示されず軽くて快適な環境になりますが、そのため広告主側の損失額は2兆4千億円だという調査結果もあります(損失額は2兆円以上 メディアに死をもたらす「広告ブロック」ソフト)。 このような広告ブロック機能がiOS9に搭載されると、大きな影響を受けるのはモバイル広告収入の75%がiPhone経由のGoogleのようです(Googleのモバイル広告収入、なんと75%がiPhone経由)。

 スマートフォンがMicro-Momentsのセンサーとして重要で、日本はiPhoneのシェアが高いという環境下で、iOS9の広告ブロック機能搭載はユーザーには朗報ですが、広告主にとっては大きな環境変化です。AppleはiAdという独自のテクノロジーでAppleという生態系に閉じた広告展開を行うようになります。同じようにfacebookも広告は自社のエコシステムを推進しています。

 このような環境下の中、PCブラウザーで共通の「個」を認識する手段であるクッキーはどうなって行くのでしょう(アドテク=デジタルマーケティング?)。アドテク業界の人たちは、この問題はテクノロジーの進歩がいずれ解決すると楽観するか、あるいはクッキーのようにディファクト化されていない先進のテクノロジー(Adtruthなど)で解決するか、何らかのMicro-Momentsのイノベーションが必要なことだけは確かです(50% of people do zero searches per day on mobileにあるようにGoogleの示唆するMicro-Momentsをそのまま鵜呑みにはできませんが、購買意思決定プロセスにおけるひとつのフェーズとして捉えれるか否かは重要な差別化要因になる)。

 さらに、NetFlixやHuluで時間を取られてしまう人も多くなり、地上波TV番組の閲覧人数は減るばかりで、紙の新聞はもう読まれません。そこでデジタル広告として登場するのはネイティブ広告ですが、広告にも拘わらず「広告と言わない手合」や「新種の巧妙な手段」が増え、エシカルでは制御しにくくなっています(グレーゾーンが一番儲かる)。ネイティブ広告は業界のガイドラインなどのエシカルでは制御できず、リーガルで防御する方向に進むと指摘する人もいます(ネイティブ広告はコンプガチャの轍を踏む)。

  • PCブラウザー:AdBlock Plusで広告ブロック⇒軽く快適へ
  • スマートフォン:iOS9から広告ブロック機能⇒Micro-Momentsセンサー機能へ
  • TV媒体:NetflixやHuluとの可処分時間の取り合い⇒魅力あるコンテンツへ
  • ネイティブ広告:エシカル制御⇒リーガル制御へ

 これらの環境変化は、コンテンツマーケティング(私のコンテンツマーケティングの歴史とブログ)や、その一部分であるインバウンドマーケティングのシステマテックなプロセスなどをオムニチャネルにトータルにビルトインする必要性がますます高くなった、と認識せざるを得ないのではないでしょうか。

● 雑談のネタ【Coffee Break】
https://blogsmt.itmedia.co.jp/CMT/coffee-break/

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