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【シーズン2 第11話】意外と知られていないフォンブラウンの失敗研究方式

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 このブログの最初の記事【シーズン1 第1話】「マーケティングテクノロジストとペンシルロケットの神髄」で、マーケティングテクノロジーを導入し運用するリスクを小さくする2つの方法を紹介しました。ひとつは②ペンシルロケット方式で、マイクロサービスで徐々に連携するマーケティングテクノロジーを増やし、完成型として「マイクロサービス方式の組み合わせとペンシルのようなイプシロン」を目指すものと、もうひとつは①失敗研究方式で、マーケティングテクノロジーに関った先人で経験豊富な人がいたら、その人をチームに入れ、自分たちが成功する(失敗しない)ためにその人の失敗経験を活かす方法です。今まで②ペンシルロケット方式はいろいろな角度から解説してきましたので、今回は①失敗研究方式について考察してみたいと思います。

 ①失敗研究方式で参考になるのはアポロ計画を推進したフォンブラウンの人生ではないでしょうか。Wikiによると、ドイツで生まれ、大学で液体燃料ロケットエンジンの試験(ペンシルロケットやイプシロンは固体燃料)を行い、その後ドイツが第二次大戦の劣勢から、ロケット技術をミサイルに活用するようになったためV-2ロケット(弾道ミサイル)を開発しました(個人的な願望である宇宙探索ロケットの夢を語り続けたため国家反逆罪で逮捕された)。

 ドイツが連合軍に敗北すると、彼はアメリカに亡命。新しく設立されたNASAで、サターンVロケットを開発し、アポロ11号が月の「静かの海」に着陸したことは有名です。実際のサターンVロケットをケネディ宇宙センターで見たことがありますが、その巨大さには驚きました。

 Wikiに書いてあるのは経歴だけですが、フォンブラウンはドイツでV2ロケットを開発していた時代と、アメリカでサターンVロケットを開発していた時代には大きな違いがあります。

  • ドイツ時代のフォンブラウンは失敗経験を蓄積

 歴史上はじめて大気圏を脱出したのはV2ロケットですが、V2ロケットは失敗の連続で近くの飛行場に落下したり、振動で空中分解したり、失敗は度を越していたようです(1回の失敗で65,000箇所の改善を行う)。

 自動車の部品は数千個(電気自動車はもっと少ない)、ジェット機は数万個、ロケットは数十万個、と部品数が桁違いに違うため失敗も桁違いだったようです。しかし、V2ロケット計画は戦時下のドイツの最優先プロジェクトだったため、膨大なお金と労働力が無尽蔵に投入されたのです。

  • アメリカ時代はドイツで蓄積した失敗経験が活かされた

 日本のロケット研究は予算40万円で全長23㎝のペンシルロケット(固体燃料)からはじめましたが、アメリカはフォンブラウンのドイツ時代の膨大なお金と大量の労働力による失敗経験を伝承できたのは幸運でした(フォンブランも初志貫徹できた)。

 同じようにベンチャーキャピタリストの世界でも、シリアルアントレプレーナーのように、人の投資したお金で経験(成功も失敗も)を積んでいる人はコストパフォーマンスが高い
マーケティングオートメーションの実態は契約更新率で明らかになる!
、とされています。

 また、TOC(制約条件の理論)を発案したイスラエルのエリヤフ・ゴールドラット博士は、失敗研究方式のことをインタビューで次のように語っています。

「愚か者は失敗に学ばず、才人は己の失敗に学ぶ。そして賢人は、他人の失敗からも学ぶのだ。」

● 雑談のネタ【Coffee Break】
https://blogsmt.itmedia.co.jp/CMT/coffee-break/

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