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通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

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2011年6月10日の投稿

2011年6月12日 »

震災に端を発したスーパークールビズの流れ。やれ在宅勤務だ、やれサマータイムだ、やれドレスコード緩和だとお祭り状態な訳ですが、これまた各所で言われているようにそんな状況が今年だけの一過性のお祭りである理由はどこにもありません。そう考えておかないと後から随分と後悔するような気すらします。

 

在宅勤務で済むもの済まないもの

昨今盛んな在宅勤務シフト論。そもそも事業所における電力消費を抑えるために出勤を制限するしかないという発想から来ている現在の在宅勤務シフトの話ですが、担当している仕事の内容によっては当然在宅では全く何も出来ない質のモノは当然あります。自宅にしろどこにしろ、セキュリティレベルは事業所と同じものを確保できませんし、システム的な制限から使えないアプリケーションは当然出てきますし、それが無いと仕事にならないならそもそも在宅勤務にさせられても手も足も出ないわけです。

更に面倒くさいのが実作業自体がオフィスのPC環境に依存するものの場合、そもそもそれを社外で進めるのが不可能なもの。たとえばA3のプリンターなんて自宅に無いよとか、ディスプレイが2面無いとどうしようもないとか、ファイルサーバーにアクセスできないと駄目ですとか、そもそもネットワーク越しじゃ駄目なんですよとか、自宅で作業っていっても夏休みで一日中自宅にいるウチの子供が許してくれないんですよとか、まぁいくらでも阻害要因はあります。因みに労務管理上の問題とか、更には残業代付かないとかになると生活がぁとか、まぁありとあらゆる大変な事が起きたりするわけです。

ならば業務自体を変えるしかないでしょって?

ある意味正しいとは思います。でも大抵の場合にはそんなに簡単な話じゃない。でも何かしら考える切っ掛けにはなるんでしょうね。良いか悪いかは別にして。

 

サマータイムの功罪

社会全体が1時間前にシフトするなら良いんですが、基本的な時間の流れは元のまま自分の勤務先がサマータイムですよとやられると、やっぱり諸々大変。バスや電車は始発を早めるとかダイヤを見直すなんて話も出てますが、私自身で言うと出社を一時間早めるためには始発のバスに乗らないといけない。しかもそれでギリギリなんで何かの拍子に電車が遅れたらアウトですとか、とりえあず困るしかない状況があります。

まぁそれは個人的な問題ではありますが・・・ でも、比較的長距離通勤をする人が多い東京エリアの場合、同じような問題を抱える人って少なくないという気はします。もちろん帰りもおそらくその分だけ早くとなるのかもしれませんが、たとえば早く家に帰っても西日に炙られる灼熱の自宅のエアコンを電力事情の関係で使い辛いみたいな話になるとうむぅと唸るしかなくなります。

ちなみに在宅勤務のところにも繋がるんですが、たとえば電力消費の3割くらいが大口需要家以外で占められる東京電力の場合、そのあたりの影響ってどうなるのかなってのは関心があるところですが、自分的には在宅時間が長くなることによって伸びる電力消費と電気代との関係が非常に気がかりです。

 

では果たしてスーパークールビズは今年だけのお祭りなのかという議論

数多くの問題を抱えたまま時間は進むわけですが、そんな中で震災以前と同じような生産性やら何やらを維持することなんて不可能です。景気動向なり何なりが下振れするのは間違いないわけですが、それが雇用全体やか給与所得に対するインパクトが出始めると結構面倒くさい事になるわけです。たとえば今年の今の状況であれば力任せに乗り切れたとしても、秋になれば全部元に戻るわけでもないわけで、景気動向自体がどの時点でどういう動きをするかという所にはキチンと関心を持つべきだと思うんです。状況次第ではデフレに振れはじめたりするわけですが、インフレだろうがデフレだろうが、今まで想定していたことと違う事が起きる事を前提とするべきだと思うんです。

経済全体が非常に大きいリスクを抱えてしまっているという認識。

そしてそれらが単年度で終わると思っちゃ駄目で、発電能力は簡単には戻らないし、地域的にも岩手宮城の2県の経済問題、福島はそれに加えて避難生活を続けざるを得ない方々をどうしなくちゃいけないかと言う大きな問題。更に海外市場での競争力維持の問題などなどをチャンと見ていれば、今現在直面している問題が今年だけの問題で終わるとは思えないし、来年になればあらかた問題は解決して大丈夫になるんじゃない?なんて能天気でいちゃいけないとも思います。

そう言えば電力問題で言うと、電力各社の原発依存度と昨年の夏のピークの電力の需給関係を見ると笑えなくなるはずなんです。因みに原発云々とか再生可能エネルギーがどうのという議論はここではしませんが、とりえあず現状を冷静に見ておくことは大事だと思います。今ならまだ冷静に見れるような気がするんです。

 

そして「失われる10年の入り口」論

物事は簡単ではありません。でも間違いないのは、現在のこの規模の影響が出てしまっている現状に対して、たとえば一度外れた歯車を元に戻して、直すものは直して、取り替えるものは取り替えて、新しくするなら新しくして、という一連の話が収斂するまでには相当な時間がかかるはずです。

もちろんそれらが杞憂に終わり、秋口から劇的に状況が改善されるのであればそれそれで歓迎するべき状況。でも、それはあくまでも無数に想定できるオプションのなかの一つでしかありません。大事なのはそれと同時に例えば『私たちはドルショックやオイルショック、バブル後にも経験したことがない程のインパクトを受けていて、実は「失われる10年の入り口」に入ってしまった』というオプションを否定することは出来ないという認識を持つことだと思うんです。

じゃぁ何をどうすればよいのか?

それはそれぞれの立場や状況によると思います。でも、嘗て経験したリセッションのどの段階でもそうですが、元通りになることって言うのは無くて、非常に大きな痛みを伴いつつ別の形に変容してきてるんですね。痛みの部分をどう理解するのか、どう受け入れるのかっていうのは難しい話ですが、もう元に戻ることは無いという覚悟だけは必要だと思っています。

 

bibendum_iwa

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プロフィール

岩永慎一

岩永慎一

外資IT、日本のIT系を経由して現在通信事業者に勤務。営業やSE、更にはコミュニケーション系を中心にありとあらゆるマーケティング関連の仕事を経験してきたが、現在は通信業界の特殊部隊として常に完全装備で課題に取り組む。

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