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通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

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2011年5月7日の投稿

2011年5月9日 »

大学時代にオーケストラでコントラバスを弾いていた私なのですが、記憶の限りこの曲に最初に触れたのは大学を卒業した後でした。今でこそあまり映画は見ない人になってしまいましたが、1985年から1987年にかけてのころは一人暮らしでテレビも持っていないけれど特に土日の時間は余っていたので、ときどき映画館に足を運んでいました。

なぜか時期的にベトナム戦争を見直す流れのなかでいくつか話題となった映画が公開されましたが、その中のひとつ、PLATOONのエンディングでバーバーの弦楽のためのアダージョが流れた時、そこまでの話の流れと映画の最後の部分の映像と重なって不覚にも大泣きしたのを今でも覚えています。正直、一人で見に行っていて良かったと思ったほど。

 

オリバー・ストーン監督の経験を下敷きにした映画なわけですが

大学を中退して陸軍に入隊し、ベトナムに赴いた主人公の話。そう。ちょうど年齢的にそれを見ていたい自分と同じくらいの年齢なわけです。もちろん(というか当時すでに普通以上かもしれませんが)ベトナムをはじめとする近代戦史と地政学的な部分に比較的強かった私。戦争肯定とかそういう話ではなくそのあたりの歴史についても比較的良く勉強していたほうだと思っていました。

そもそも自分自身が生まれたのが戦後17年で、すでに大学に入学した時点で太平洋戦争終結から自分が生まれるまでの年月よりも多い年月が経ってるんだよねみたいな事を思っていたりもしました。自分の前の世代である「団塊の世代」の動きやらその前の戦中・戦後派と言われた世代の事、記憶にある高度成長期、中東紛争に起因したオイルショックなどの話、ベトナムやアフリカ諸国の話、中国での文化大革命の話、鉄のカーテンの向こうにあるソビエトの話など、すでに歴史のかなたに行ってしまった話が全部自分の周りにあったわけです。

もちろんこれは私だけの話である訳じゃなく、その当時に生きていた人すべての周りにあった話。ただし何を気にしていたか、それらから何を見たかというのはそれぞれの個人的な経験となるわけです。

たとえばベトナム戦争で言うといろんな情報はテレビで小さい時からずっと見ていました。小学校入学したころだったはずのテト攻勢の話はなぜか覚えていましたし、サイゴン陥落のときは中学生でしたから、テレビで見た避難民を乗せたヘリが空母に着艦し、その後給油して再度離陸させる時間すらなくなって甲板から海中にどんどん落としていた映像などは今でも鮮明に覚えています。

ただし、それらは子供として大人の話に触れていた訳で、自分の話ではありません。そもそも舞台も関与してる人たちもすべて外国人。それよりも満州事変以降から太平洋戦争に至る部分のほうが自分の直接知っている人が関与していることもあって実態感があったのは事実。

 

初めて自分にとってその時代の実態感を持ったのがPLATOONだった

実はこの時期に見た戦争映画は、PLATOONだけではなくFULL METAL JACKETやTOPGUN、Humberger Hillなどがありました。アメリカの戦意高揚というか米軍リクルーティング映画的な側面をもったものもありましたし、ベトナム(というか戦争そのもの)の実態って実はさという話が主であったものもありました。

実は戦争自体をきちんと描いた映画というのはそれら以前からあったのですが、制作側や見る側がどの時点でのどういう戦争を体験してきたかということと、制作された時代の時代背景などによって同じようなことを描いていても非常に異なった表現になっていたのは事実。

このあたりの話は映画のオーソリティではない私が多くを語る必要はないと思いますが、たとえば1960年代の映画で言うと第二次大戦のころの戦闘機や戦車、装備品や制服にいたるまで実物が出てくる「空軍大戦略」や「史上最大の作戦」などが単純に冒険活劇だったかというと決してそんなことはなくて、非常に冷酷な状況がそのまま描かれているわけですが、時代背景から何かを告発したり強いメッセージを訴えるものではなかったとは思います。

 

冷静に考えれば当たり前なのだけれど、そこにいたのは、映画を見ている自分と同じ年代なんだということに気がついたときの衝撃

まさに映画を見ている自分と同じ年齢の人たちがそこで戦っていて、あるいは怪我をして、あるいは死んで、あるいは帰還していたという事実。それまでは何を聞いても歴史の話であったし、リアルタイムの話であっても基本的に外国の話。物理的にそこで何かをしている人の顔が見えるわけじゃない。

それに対して、この時期に戦争映画をいくつか見たことで受けた衝撃というのは、そこにいるのが実は映画を見ている自分と同じ年代であるということ。それに気付いたのが実は大学を中退して入隊し、ベトナムに赴いたという設定であったPLATOONだったんです。

映画の冒頭でそれに気付いた後、映画館に入るまでの気持ちと見る姿勢が全然違ってしまったんだとは思うんです。多分気持ちの入り方みたいなものなんでしょうけど。そして心身ともに大きく傷ついた主人公(チャーリー・シーンですが)が泣きながらヘリコプターで後送されるシーンで終わるのですが、戦場の上空を飛ぶところからエンディングロールにわたる部分で流れたのが、バーバーの弦楽のためのアダージョ。

 

正直今でもこの曲を聴くと泣きそうになります

そのあたりの話が実は背景になっているのですが、それ以前に戦記物に触れていた姿勢が大きく変わったのは事実ですし、それらを踏まえつついわゆる地政学や国際政治、あるいは経済論に対する姿勢が変わったのも事実です。

良い悪いの判断は何かしらそれぞれの立場でできることですが、その立場によって評価は変わるし、求めるものによっても評価は変わるということ。でも必ず何かしらを実際にやっている現場があり、指示命令系統の中で非常に辛いことや難しいことを直接担当するところがあるし、それを命じるところがあるし、それを必要とするところがあればそれに反対するところもあるし…

 

私にとって、そのあたりのうわ~っとしたもの全部がなんだかこの曲に詰まってしまっているんですよね。まぁあくまでも個人的感情ですが。

因みにこの曲は元々弦楽四重奏の組曲から抜粋されて作曲者自身がオーケストラのために編曲したものですが、故ジョン・F・ケネディ大統領の葬儀に使われたことからそれ以降葬儀に使われる事が多くなった曲。ただ作曲者のバーバー自身はそれを「心外である」と非常に憤慨していたという話も漏れ伝わっています。またPLATOONだけではなくいろんな映画やドラマ、あるいは9.11の合同慰霊祭の際などにも使われていますけれど…

たまたま弦楽四重奏による原曲を聴く機会があって、ふとそんなことを思い出しました。

bibendum_iwa

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岩永慎一

岩永慎一

外資IT、日本のIT系を経由して現在通信事業者に勤務。営業やSE、更にはコミュニケーション系を中心にありとあらゆるマーケティング関連の仕事を経験してきたが、現在は通信業界の特殊部隊として常に完全装備で課題に取り組む。

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