THE SHOW MUST GO ON:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) THE SHOW MUST GO ON

通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

« 2009年6月4日

2009年6月5日の投稿

2009年6月8日 »

一部で話題になっている梅田望夫さんのインタビューについていろいろなブログやTwitterのTLなどで多様な意見が出ているようです。確かにワタシもそれなりに思うところはあるのですが、ここでは元のインタビューと議論を眺めつつふと気になったことをひとつ。「英語圏」ってどこを指すんだろう?

 

考えをまとめる上でのグルーピングとクラスタリングという作業

ある事象を俯瞰する場合、当然のように一定のグループを設定したり、全体をいくつかのクラスターに分類して、相互の反応の違いや状況の違いを比較・評価するということが行われるわけです。この分類方法によって求める結果が出るかどうか、逆に言うと求める結果を出すためにどのように分類するか、というのがとても大事になったりします。やりすぎると作為的といわれるわけですが、何かしら判断するために必要な分類方法を選ぶというのは一般的だとは思います。

 

求める結果に対応する分類、あるいは求める結果を出せる分類、そして・・・

そもそも分析をする人が結果の利用者であれば、その人が一番理解しやすい、一番説明しやすい分類がとられると思います。一方、その結果を利用して誰かに話をするには、その分類が聞き手(受け手)にとって理解できるかどうか説明しきれるか、ということが問題になります。

で、ワタシが気になったのは、梅田さんのインタビューにあった「英語圏」というクラスターの設定。非常にシニカルな立場を取ると、それってどこよ?という話になりかねません。

英語を主たる言語とする国?地域?それとも・・・

とりあえず間違いないのは、少なくとも梅田さんの言う英語圏にアメリカが含まれることだとは思います。ただ、純粋に英語圏というとイギリスも含まれてしかるべきですし、言語圏ということだともう少し広がるかもしれません。

 

ワタシが気になるのは、インタビューの中身の手前のクラスターの設定自体の部分

しかし、アメリカとイギリスでは国情も体制も制度も文化も何もかも違うわけです。非常に近い関係ではありますが、その実まったく別の状況があるわけです。

実際のところ、梅田さんの言う「英語圏」はアメリカであると理解すればよいのだとは思うのですが、そのアメリカでも州によって、都市によって、それぞれの環境によってまったく事情が異なるわけですから、全部まとめて「英語圏では」論を展開されると、ちょっと違和感を持ったりもします。

もちろん梅田さんのコメント自体にはいろいろ思うところはありますが、一通り考えた後にワタシにとって残った違和感の根っこって何だろう?と考えたときに残ったのが、説明しているある一定の層もしくはグループを示す「英語圏」という表現でした。

 

一般化の危険性

特にコミュニケーション系の仕事を担当していると、時に強引に自分が説明しなくてはいけないことの前提を一般化し、それに対してどれくらい有効かとか便利かとかの話に持ってゆくことがあります。以下はワタシの強引な作例ですが、たとえば・・・

(例 1) すでにインターネット環境上で広く浸透したWeb2.0の考え方。私たちの新しいソリューションは今までに無い生産性の向上とすばらしい・・・云々

(例 2) iPhoneがスマートフォンの代名詞となった今、私たちはオフィスのアプリケーションとiPhoneのスムーズな連携を・・・云々

(例 3) すでに広く利用が進むクラウドコンピューティング環境において重要なセキュリティーソリューションを私たちは・・・云々

それなりに強引です(笑) あ、どこかの企業や誰かの何らかの言い回しを持ってきたわけではありません。文例自体は100%ワタシの創作で、最初に前提を「一般化してるんだよ」と言い切ってしまい、その後の話につなげてゆくという手法を文字にしてみました。それを勢い良く言い切れてしまえば良いのですが、何かの拍子に聞き手が一般化した部分に違和感を持ってしまうとまったく逆の効果を発揮します。そこで思考がとまってしまいます。

さすがに大人ですから「ソースを出せ」みたいなことは言いませんが、真剣判らず、それでは困った状況に陥ったとき、その条件のデータをくださいとお話するとGoogleで検索した結果を指差して「ほーら、こんなにこの単語に引っかかるんですよ」と言われたことはあります。「そうなんだー。すごいねぇ」と笑うしかないです。これは。そのあとに会議室か給湯室に拉致して説教たくなります。

ということで、実は前提条件の一般化、あるいは条件のクラスタリングというのは注意する必要がある、注意が必要な手法だといえます。

 

で、最初に戻って「英語圏」というクラスタリングはワタシにどんな効果をもたらしたのか

純粋にワタシの感想ですが、「なんだか判らないけれど、話が腹に落ちない。それほど広くない経験と知識を広く一般化した英語圏全体のものだと言ってしまっているんじゃないのかな?」という印象です。ということで、前提としての「英語圏」ってどこよ?という部分の違和感が残ってしまっている、というのがワタシの素直な感想です。

ちなみにインタビューの場に居合わせたわけでもなく、あくまでもインタビュー記事として読んでいるわけです。実際にはアホなワタシでも納得できるような何かがあったのかもしれませんし、そもそもアホなので理解できないのかもしれません。

それやこれやで、誰かに自分の考えを伝えるのは難しいものだなと改めて考えた次第です。

 

bibendum_iwa

« 2009年6月4日

2009年6月5日の投稿

2009年6月8日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

岩永慎一

岩永慎一

外資IT、日本のIT系を経由して現在通信事業者に勤務。営業やSE、更にはコミュニケーション系を中心にありとあらゆるマーケティング関連の仕事を経験してきたが、現在は通信業界の特殊部隊として常に完全装備で課題に取り組む。

詳しいプロフィール

Special

- PR -
カレンダー
2013年4月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
showbiz
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

カテゴリー
エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ