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"ARM、第2世代のMali-T600グラフィックス・プロセッサを発表し、タブレット、スマートフォン、スマート・テレビのユーザ・エクスペリエンスの向上を促進"

ARMが第2世代のMali-T600を発表しました。Mail-T604の約6倍前後が伸びるようです。ARMがGPUを強化するのはライバルのけん制の意味もあるでしょう。

ARM系GPUは多くあります。分かりやすいのはGL Benchmarkでしょう。"GLBenchmark 2.1 Egypt Offscreen 720p"を参考にGPU種別で最高値を出したものは以下になります(iOSはOSが違うため除外。Immersion.16はいまいち中身が分からないので除外...もしかすると将来的にはもっと注目されるかも知れませんが)。

GPU GL Benchmark
Adreno 320 15,194
Mali-400 MP 11,701
Tegra 3 8,659
PowerVR SGX 544 6,844
Adreno 225 6,402

Mail-604のデータがないことは残念ですが、Adeno 320のデータはGLBenchmarkにはアップされています。Mali-604はMail-400 MPの約5倍の性能がでると言われています。

Adreno 320は225に対して約4倍の性能アップとアナウンスがあります。ベンチマークなどではカタログ性能比でアップしないため320/225が2.5倍程度になっています。このため、Mali-604はMail-400 MPの2~3倍超えの性能に達することができるのではないかと思われます。2倍でも相当な速度アップになります。

Adrenoだけ最新GPUのため頭一つ抜けていますが、MaliもPowerVRも次世代がもう少しで出てきます。ただし、Tegraに関しては、新製品は2013年まで出てきません。

PowerVRはシリーズ6を発表しています。"NGPに採用されたGPUの開発元に聞くPowerVR SGX543MP4+の全てNGPよりも世代の新しいGPUを早くも発表!?"に"PowerVR 6シリーズの演算性能は210GFLOPS"とあります。どのような条件下なのか分かりませんが、PowerVRも近いうちに性能アップが予定されています。

Maliに関してはMali 600がもうそろそろ登場します。既にサンプル出荷(2Q'12)しているExynos 5シリーズはCortex-A15&Mali 6xxを搭載するため、GL Benchmarkで上位に登場する可能性があります(Adreno 320はリークされているのに...)。

スマートフォン・メディアタブレットに強力なGPUを搭載するのは、ゲームや派手なビデオ回りを表現するためです(今は)。このため、今後もCPUと同じくGPUも強化されるでしょう。

PCの分野では既にGPUを取り組んでいます。現時点ではコスト低減の意味合いが強いですが、CPUのコア数をこれ以上増やして明確な性能アップできないため、GPUを強化する方向に向かわざるを得ません。このため、ゲーム以外の一般的な用途においてGPUを活用シーンを模索しています。

同じシナリオがモバイルデバイスに言えるため、同様にGPUは強化されるでしょう。

ただ、現時点ではモバイルデバイスのGPUは複数種類(5種類)存在します。今後、どのように発展するか分かりません。

PC/サーバのCPUアーキテクチャは昔はAlpha等も多くありましたが、現在はx86が主流でせいぜいPOWER系とSPARC系ぐらいしか生き残っていません(Itaniumも生き残っているとも言えなくもないですが...)。

PCのGPUも昔は多くありましたが、現在AMDとNVIDIAとIntelの内蔵タイプしか存在しなくなりました。

このため、ARM系GPUもせいぜい3種類まで収束すると予想しています。ではどのGPUが生き残るのでしょうか?

QualcommがSnapdragonの好調を維持できるならばAdrenoは生き残る可能性は非常に高いでしょう。ARM系CPUメーカとしてはTIに次ぐ売上を上げている半導体メーカのため、CPUも自前で設計できるQualcommは今後も売上を上げることが予想できるメーカです。

Maliに関してはARMがCortex系と連携をとることを行うならば今後も成長する可能性があります。ただし、主要な採用メーカがSamsungしかないのが気になるところです。

PowerVRに関しては6シリーズが高性能を発揮する構成ができることを考えるとモバイルデバイス以外への進出(PCやサーバ市場)を考慮に入れている可能性があります。このため、今後の展開次第で収益を大幅に上げる可能性があるでしょう。

NVIDIAは強力なGPUをどうやってモバイルへ導入するかを検討していることでしょう。ただ、NVIDIAの野望としてはTegraをスマートフォン・メディアタブレットのみではなくPC/サーバ市場も視野に入っています。またWindows RTの登場でTegraはもっと大きな役割を担うことになるでしょうからNVIDIAとしてはモバイルデバイスのGPUをさらに投資し続けるでしょう。

また、この市場にはIntelはAtomで進出しています。ただしスマートフォン用AtomはPowerVRを採用して、自前のGPUを採用していません。今後も同様にPowerVRを採用し続けるのかそれとも自前のGPUを採用するのかはロードマップでもアナウンスしていないと思います。

このため、モバイルデバイスとしてIntelが自前のGPUをプッシュするかは不透明な状況です。ただ、CPUがGPUを搭載してヘテロジニアスマルチコアに進まないといけない状況を考えるとAtomのGPUも自前のものを採用する可能性は高いと考えています。

AMDは現時点ではメディアタブレットまでを視野に入れています。ですが、CEO交代理由がモバイルデバイスへのコミット不足からきているため、モバイルデバイスへの進出を予定していることでしょう。今のところメディアタブレットクラスですが、将来においてはまだ分かりません。

AMDはNVIDIA並みに強力なGPUを持っていますが、モバイルデバイスへの対応できるか分かりません。現状を考えるとQualcommに売却したIPは持ったいなかったも知れません(ただし、保持していても塩漬けでしょうが)。このため、強力なCPUとGPUを持っているAMDですが、モバイルデバイスでは主役に躍り出るにはまだまだ多くの困難が待ち受けていると思います。

このように考えるとどのGPUも生き残る可能性があります。OpenGLやDirectX等の汎用的なAPIでアクセスできるため、GPUのアーキテクチャはCPUほど収束しないのかも知れません。まぁ、たぶん開発コストをいつまで維持できるかによるのでしょうが。

競争があればその分野の発展は飛躍的に向上します。モバイルデバイスのGPUは今ちょうど競争が激化が始まろうとしています(既に始まっているのでしょう)。このため、観察者として見ていても面白いと思います。もしかするとモバイルデバイス以外の分野に進出してあっと言われるようなことが起きるかもしれないのですから。

櫻吉 清(さくらきち きよし)

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