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Nokiaが2Q'12で決算を発表しましたが、苦しんでいます。

そのNokiaがどの程度苦しんでいるのか2010年から決算を表にしてみました。

売上高
(億ユーロ)
営業利益
(億ユーロ)
1Q'10 95.2 8.2
2Q'10 100.0 6.6
3Q''10 102.7 6.3
4Q'10 126.5 7.5
1Q'11 104.0 7.0
2Q'11 92.8 -3.7
3Q'11 89.8 -0.7
4Q'11 100.5 -9.5
1Q'12 73.5 -13.4
2Q'12 75.4 -8.3

(出典:Nokia)

2Q'11から赤字に転落してそれ以降未だに苦しんでいます。2Q'11でなぜ赤字に転落したかと言えば、たった一言にすみます。それはMicrosoftと提携してSymbianを放棄したからです(廉価なカテゴリはSymbianを採用し続けますが)。

2011年02月11日:Nokia、Microsoftと提携 Windows Phoneをスマートフォンに採用

この賭けはよかったのかどうか分かりませんが、今のところ収益には反映できていません。ただ、Windows Phoneではなく、AndroidかIntelと共同開発のまま進んでいたらどうなっていかはわかりません。

Appleはすぐに発売できるまで製品の発表しないことで有名です。これは現在販売されている製品の買い控えを起こさないためです。開発者に対して不親切かも知れませんが、この方法で収益減を回避できたのではないかと思われてなりません。

Microsoftの様なOS販売メーカ出身者では、Nokiaの様な製品を販売している場合とは売り上げが違いを理解できなかったのかも知れません。ただし、早めにアナウンスすることはアプリ開発者にとっては真摯な態度だと思いますし、もしかするとMicrosoft側から早く提携をアナウンスしたかったからかも知れません。

NokiaがWindows Phoneを採用してから経緯は以下になります。

2011年10月26日:Nokia初のWindows Phone「Lumia 800」「Lumia 710」発表

2012年03月27日:NokiaのWindows Phone「Lumia 900」、米AT&Tが100ドルで発売へ

2012年07月16日:Nokia、Lumia 900を米国で半額の50ドルに値下げ

Windows Phone採用製品であるLumiaは2011年の秋に販売され、その後Lumia 900で売り上げを伸ばしていますが、100ドルとか50ドルにして投売り状態になっています。そのおかげで2Q'12でLumiaは400万台に到達したとアナウンスされています。

2Q'12のスマートフォン販売台数はまだ出ていませんが、1Q'12で1.44億台に到達しています。2011年の2Q/1Qのスマートフォン出荷台数の伸び(6%増)を参考にすると2Q'12のスマートフォン出荷台数は1.54億台以上はあるのではないかと思います。

Windows Phoneの出荷台数はまだ未定ですが、Nokiaの分(400万台)の1.2倍程度が販売されると予想すると、せいぜい500万台前後で4%に到達しない程度でしょうか。

そのように思うとNokiaとWindows Phoneは未だに一定のファン層を確保はまだまだ険しい道に見えます。

ただ、NokiaのWindows Phone採用に少しばかり光がないこともありません。決算にはカテゴリ毎のASP(平均価格)も記載されています。それを表にしてみました。

全体 ASP
(ユーロ)
スマートフォン
ASP(ユーロ)
1Q'11 65 146
2Q'11 62 142
3Q'11 51 131
4Q'11 53 140
1Q'12 51 143
2Q'12 48 151

スマートフォンのASPがあがっています。100ドルで販売しているため意外でしたが、よくよく考えればMicrosoftの支援があるのでしょうか。となるとMicrosoftがWindows Phoneに並々ならぬやる気が持続する限りはNokiaのスマートフォンのASPは維持され続けるか伸びることになります。Windows Phone 8から高額な製品が作れるようですから(解像度もアップされる)、ASPがさらに増加する可能性があります。

ただ、上記を見ているとスマートフォンのASPがあがっているのに売り上げ減少しているのは?と思うかも知れませんが、端末の出荷台数がまったく違います。1Q'11ではスマートフォン出荷台数が2,400万台もあったのですが、2Q'12では1,020万台と大きく減らしています。ASPが出荷台数減少をすくうほど伸びていないため、収益も悪化するというものです。

ついでにフィーチャーフォンも同じ時期に8,430万台から7,350万台まで減少しているので、どこもカバーできていない状況です。

NokiaがWindows Phoneを採用してからNokiaの収益は綺麗に赤字に転落しました。この一事を持って、Nokiaの選択が間違いだったと判断するのは私は早計だと考えています。

NokiaがWindows Phone採用する前からNokiaが支えていたSymbianにはスマートフォンとして将来性が見えませんでした。このため、Intelとの提携もしていましたがうまく製品を作れていない状況でした。Windows Phoneを採用しなくても最終的には似たような状況に陥ったことでしょう。

ただ、遅く判断しては体力がなくなってひっくり返す余力もない状況になっていたと思います。そう考えると正しいかどうか分かりませんが、早いうちにモダンなスマートフォンOSを採用したことは大きく間違っていないと思います。ただ、Windows Phoneが2大巨頭と戦うことができるかはわかりません。

Microsoftは今後もWindwos Phoneを支えることでしょう。そうしないとGoogleとAppleから市場コントロール権を奪い返すことが出来ないためです。このため、運命共同体であるNokiaを見捨てることはないと思います。

ただ、Windows Phone 8で挽回できるかどうかはまだまだ怪しいと思います。

過去、"新製品で挽回する"と言った話をいろいろありましたが、どの程度達成できたでしょうか?多くはその目標を達成することは出来ませんでした(達成できた製品もありますが)。

スマートフォン・メディアタブレットでiOSとAndroid以外で後発で成功したものはいません。webOSも成功できませんでしたし、RIMもタブレットで苦戦が続いています。スマートデバイスで未だに第3勢力が浮上できないのは戦略的に少し問題があるように思えてなりません(その中でWindows Phone 8は最もまともには見えますが)。

NokiaがWindows Phoneを採用して投売り戦略で出荷台数を地道に伸ばしています。Androidは今でこそ1四半期で8,000万台販売できていますが、400万台に到達するのに4四半期かかっています。Windows Phone 7以降は400万台到達するのに3四半期で到達しました。

この点だけ見ると悪くない感じがしなくもありません。また、Androidは3四半期目でようやく市場の3%を超えました。Windows Phone 7登場以降でも3四半期でMicrosoft系は3%市場を取ることが出来たと思います。

Windows PhoneはAndroidと同じペースで成長しているようにも見受けられます。ただ、Android登場時期はSymbianとRIMぐらいしか強いのがいませんでしたが、現在はSymbian以上のシェアを持つAndroidとRIM以上に固定ファンがいるiOSがいます。この2巨頭に対してWindows Phone及びNokiaがシェアを奪うことが出来るかは過去の歴史からは紐解けません(と言うか私はには予想できません)。

このように思うとNokiaとWindows Phoneは今後も苦戦を強いられる気もしなくもありませんし、調査会社が予想しているように将来的に大きなシェアを持つかも知れませんが、Android過去に記録した四半期あたり5%以上もシェアを増加させるような成長はWindows Phoneには実現できない気がしませんが...

櫻吉 清(さくらきち きよし)

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