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Oracleといえばデータベースが有名ですが、2009年にSunを買収してからは、ビジネスパフォーマンスの向上をミドルウェアとハードウェアの両面で本格的にサポートするようになっています。

最初に発表されたのはExadata(エクサデータ)V2というサーバとストレージのI/O性能を考えられる限り高速化したソリューションでした。HP社ハードウェア製のV1(第一世代)では、ストレージ側でのクエリー処理が売りでしたが、V2ではフラッシュメディア搭載によるさらに高速なI/Oを実現するようになり、データウェアハウスマシンとしては他社製品の10倍速いと評される代物でした。

ですが、ExadataはあくまでもディスクI/Oの高速化が主たる方向性であり、アプリ側が最も気にするメモリ領域の高速かつ効率的な利用まではカバーしきれていません。つまり、大量かつ同時にトランザクションが発生しても、Exadata側では十分な性能発揮ができなかったわけです。

この問題に対するひとつの答えが、昨年Oracle社より発表されたExaLogicです。

幸運にして、このExalogicを実際に目にし、かつOracleや他のオルタナブロガーの方々と意見交換する機会を先日得たため、今回のエントリーで報告します。

【Exalogicのココがスゴイ!】

これまでメモリの効率化はミドルウェア側のパラメータでコントロールしてきましたが、ExaLogicではハードウェア側の機能を活かして、複数サーバを跨いだメモリ管理を行えるようになっています。
※WebLogic、Coherence、JRockit、Oracle Linux/Solarisの上でEnterprise Managerを走らせて制御します

ノードを跨いだ共有メモリ+並列処理について、他の追随を許さないレベルの効率化が図られているので、大量のリアルタイム情報を速やかに処理する用途にピッタリであり、ExadataはDBアクセス高速化に特化させ、これとExalogicを組み合わせることで、オンライン処理とバッチ処理のどちらも高速化できるようになるわけです。

導入クライアントとしては、通信系・金融系・流通系からの引き合いが多く、EジェネラやシスコのUCS(ユニファイド・コミュニケーション・システム)を利用、もしくは導入検討しているようなクライアントに向いているとのこと。

メインフレームとの違いは、垂直型の拡張性だけではなく水平型の拡張性も持っている+Java EEというオープンな標準技術を使っている点に尽きます。

言い換えると、ベンダーロックインされにくい統合ソリューションということであり、Oracleの方によれば、他社製のWebアプリサーバを稼働させることも現在検討中とのこと。

【Exalogicのココが課題!】

いいことばかりに思えるExalogicですが、やはり課題はあります。一番大きいのは、ハードウェア性能とミドルウェア性能の双方パフォーマンスを意識したシステム実装をすることができる技術者が世の中に全然いないこと。

ExadataはOracleが一式全てを設定してから納品する、ほとんどアプライアンスに近い扱いであったため、ユーザ側で技術者確保に苦労することはありませんでしたが、Exalogicは業務アプリをユーザ側で用意しなければなりません。

どんなに優れた技術でも、それを使うことができる人が少なければ、世の中に普及することはありません。Oracleがデータベース領域で圧倒的なシェアを誇ることができた最大の理由は、Oracle Master制度を代表する教育プログラムや資格認定制度の充実にあったというのは、衆目の一致するところ。

ゲーム業界にしても、サードパーティが作りやすいプラットフォームをなかなか提供できなかったPS3は、なかなかゲームコンテンツが揃わず、次世代ゲーム機競争で当初大きく出遅れました。(Wiiはゲームキューブの拡張プラットフォームであったため、開発者が比較的多くいた)

過去のMaster制度同様のアプローチだけではなく、大学や専門学校などのアカデミックな世界で講義を持つこともやり方としてあり得ると思います。

次回エントリーでは、Exalogicの持つ可能性について取り上げます。

NAKA

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中 寛之

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