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Redundant(余分), Obsolete(古い), Trivial(些末)なROT(くだらない)データは消してしまえ

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11/28 月曜にアルカディア市ヶ谷にてAsian Data management Conference in Japanが開かれ、データ管理にまつわる様々な話が取り上げられました。私も分科会リーダーという立場もあって、この日は休みを取ってカンファレンスに参加していましたが、データ管理に関心の強い方々が100名以上も集まって、会場は人でいっぱいでした。 

http://www.dama-japan.org/Conference/Yearly2011

今回のカンファレンスは、昨年11月にDAMA Japanが結成されて以来、初めての全体会議だったため、分科会活動が異なる方がたくさんいらっしゃったのが印象的です。米国から招聘した3人のゲストスピーカーのうち、DAMA International会長のAikenさんが示した「ROT」というデータのムダ削ぎ落としの考え方は、私にとって興味深かったので、ちょっと説明させて下さい。

ROTという言葉は、英単語で「くだらない」という意味ですが、これをデータ管理の文脈で使うと面白いことになります。ROTはそれぞれ、Redundant(余分), Obsolete(古い), Trivial(些末)の頭文字3つを並べたものであり、つまり、そういったデータはROTだから(くだらないから)消してしまえ、ということです。そういう努力は、データ管理をコストからインベストメントへ変化させる土台となり、Cクラス(経営者)が好むマネタイズにつながるとのこと。

最近はビッグデータを使ったビジネスアナリティクスが注目を集めており、これに影響され、「どんなデータでもとりあえず保持してビッグデータに突っ込んでしまえ」いう風潮が散見されますが、基本に忠実、ROTなデータは排除するというポリシーを持つことで、不必要なデータの増大を抑制することができます。

Aikenさんのセッションでは、他に、データ管理の体系整理について言及されていました。世界で最初にデータ管理を公的に研究し始めたのは英国諜報機関なのだそうですが、そういった歴史を経た結果、データマネジメントでは5つのコアファンクションに集約されるという説明がされました。以下は、それらの5つのファンクションとその意味です。

第1. Data program Coodinate (データ一貫性の管理)
第2. Organize Data Integration (個別組織を超えたデータ共有)
第3. Data Stewardship (データ責任者の任命)
第4. Data Development (データを提供する仕組みの構築)
第5. Data Support Operations (データの維持管理)

このうち、第4では新規DBの構築が含まれるのですが、Aikenさんは「某海外銀行では行員数4万人に対して、抱えているDB数は数十万にも上った」という経験を引き合いに、「既存DBが膨大な組織では第5を学ぶ方が先になる」と話していたことを補足しておきます。

ここではさらに、システム構築における取り組み順序についても問題提起がなされ、以下のような発想の転換が必要だと述べていました。

<新規システムの構築に当たっての検討順序 :データ管理を軽視している企業>
 #1 Strategy, 戦略
 #2 Goals/Objectives, 組織の目的
 #3 Systems/Apprications, システム・アプリ
 #4 Networks/Infrastructure, ネットワーク・インフラ
 #5 Data/Information, データ・情報
             ↓
<同上 :あるべき姿>
 #1 Strategy, 戦略
 #2 Goals/Objectives, 組織の目的
★#3 Data/Information, データ・情報
 #4 Systems/Apprications, システム・アプリ
 #5 Networks/Infrastructure, ネットワーク・インフラ

データ管理を軽視している企業では、「データはアプリのためにある」という発想に基づくため、アプリケーション内の利用に制限されてしまいがちで、データ自身を全社的に活用することが困難になりがちな傾向にあります。これを、データ中心の視点に持ってくることで、状況の改善を図ることができるとのこと。

思えば、EA(エンタープライズ・アーキテクチャ)では、BA(ビジネスアーキテクチャ:業務体系)に直結しているものはDA(データアーキテクチャ:データ体系)であり、合理的なアプローチであることは世に認められています。

データセントリック(データ主体)な考え方がされているかどうか、自分の周りのシステムを見回してみると、新しい改善余地が見つかるのではないかと思います。

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