認知行動療法 その5(コラム法)
また更新が遅くなってしまいましたが前回の続きで、"認知の再構成"を行うにあたり、具体的な手法を紹介します。
まず一番大事なことは、ズバリ、"外在化"です。様々な情報を自分の頭の中で考えるのでは無く、一旦書き出して外に出します。
これは客観的に分析するために非常に重要なポイントですので必ず実践して下さい。一度自分の中から見える形で外に出すと言うことで冷静な第三者の目線での分析をやり易い状態にすることが出来ます。
さて具体的な流れを説明します。専門的には「非機能的思考記録表」「コラム表」「思考バランスシート」などと呼ばれたりするフォーマットを使用しますが、形式はどの様なものでも構いません。ネットで前述のキーワードで検索すれば様々なフォーマットを参考にすることが出来ますので、ご自身の好みで使って見てください。また、フォーマット自体は特に気にする必要はありません。重要なのは認知の再構成のステップを外在化することですから、小さな手帳に書き出すだけでも十分実践することは可能です。
<Step1>・・・状況を書き出す
まず最初に、自分の中で感情が動かされた時(怒りや悲しみ、イライラを感じた時)の状況を出来るだけ具体的に記入します。これは5W1Hでその時に状況を鮮明に書き出すことが理想です。
例) 今日の午後、上司にまだ提出期限前の報告書について、『出来ているのか?』と聞かれた。
<Step2>・・・その時の気分(感情)を書き出す
次に、その状況の時に感じた気分(感情)を書き出します。これは"怒り"、"悲しみ"、"不安"、"困惑"など一つの言葉で表せるものでその時に感じたものを書き出します。さらにその気分(感情)にパーセンテージを付けます。これはその時に感じた気分(感情)の強さを数値化することが目的ですので自分の中の基準で付けて下さい。この気分は複数記載してもOKです。パーセンテージ付けは、それぞれの気分(感情)毎に100%をMaxにそれぞれの高さを記載します。※合計で100%になる必要はありませんので注意して下さい。
例) 怒り:90%、不安:60%、困惑:50%
<Step3>・・・自動思考を書き出す
前々回、その3(自動思考を捉える)で説明した、その時に自分の中で浮かんだ考えを出来る限り思い出して書き出します。これは普段から自動思考を意識していないと捉えることが難しいので、少し練習が必要です。(その3で復習しましょう)
例) 「まだ提出期限でも無いのに出来てる訳ないだろ!」、「信用されていないに違いない」、
「提出期限を勘違いしているのだろうか?」
<Step4>・・・根拠・反証を書き出す
次に自動思考を裏付ける、"根拠"を書き出します。ここで注意が必要なのはこの根拠は事実のみを出して、推測や推論が混在しない様に気を付けて下さい。そして次に自動思考とは逆の事実、"反証"を書き出します。もちろんこちらも客観的な事実のみを記載します。
例) 根拠:提出期限までまだ時間があるが出来ているのかを聞かれた。
反証:出来ているか聞かれただけで叱責された訳ではない。
<Step5>・・・適応的思考を考える
根拠・反証を元に、自動思考とは違う考え方が出来ないかを検討します。この時に、根拠と反証を "しかし" で結んで見ると分かり易いです。
例) 提出期限までまだ時間があるが出来ているのかを聞かれた。しかし、出来ているか聞かれた
だけで叱責された訳ではない。単に今の状況を聞きたかっただけかも知れない。
<Step6>・・・気分(感情)の変化を書き出す
適応的思考を考えたのち、それによって、元々の気分(感情)の度合い(パーセンテージ)がどの程度下がったかを書き出します。(ここでもStep2同様に自分の尺度でパーセンテージを決めます)
これで"認知の再構成"のサイクルが完了します。これを行うことで、少しでもネガティブな気分(感情)が低減できれば大収穫です。ストレスは日々無意識の内に自分の中で溜まって大きくなって行きます。
日々のメンタルチェックがストレスを貯めこまないコツですね。
皆さんも、"コラム法" などの手法を有効活用し、"認知の再構成" に取り組んで見てはいかがでしょうか?
※認知行動療法シリーズ第一弾としてはこれで一旦終了します。