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自動車が売れない理由に関する私的考察5~いや、そもそもメーカーが車を製造できないなんて・・・。

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もう一年経ったのか・・・。

11月の第二週目の月曜日は「自動車が売れない理由に関する私的考察」と称して独自の観点から自動車業界に関することを勝手気ままに書かせて頂いてます。

2007年のエントリー
自動車が売れない理由に関する私的考察~それは「デザイン」と「塗料」
http://blogs.itmedia.co.jp/usrtodev/2007/11/1_514b.html

2008年のエントリー
自動車が売れない理由に関する私的考察2~自動車メーカー自ら”単なる移動手段”として商品づくりをしてきたから
http://blogs.itmedia.co.jp/usrtodev/2008/11/post-e85a.html

2009年のエントリー
自動車が売れない理由に関する私的考察3~【番外編】先日のエントリーへの補足および未だに感じる「電気自動車による市場参入」への違和感
http://blogs.itmedia.co.jp/usrtodev/2009/11/post-7a8c.html

2010年のエントリー
自動車が売れない理由に関する私的考察4~「エコカー補助金」という”麻薬”の副作用?
http://blogs.itmedia.co.jp/usrtodev/2010/11/post-f140.html

昨年、「自分の中で(毎年独自の観点から自動車業界に関することを勝手気ままに書くという)こういったルールを作ることによって、一年に一回、自分が自動車業界に身を置く者の一人として、その時考えていることを棚卸ししても良いな、とも思い始めています。」なんて書きましたが、こうやって振り返りもしない限り、案外、一年前に書いたことなんて忘れてしまっており(苦笑)

なので、このエントリー群は自分の備忘録にもなってます。

よろしければ、またお付き合い下さい。

今年は、いつもテーマにしている「売れない」というのとは少し違う次元の年だったように思います。

なんせ、自動車を造るのが仕事のはずの自動車メーカーが車を作ることができなかったのだから。在庫がダブついて造っても仕方が無い、というのではなく、そもそも車が製造できない、という。

東日本大震災に伴う部品メーカーの被災。

電力供給不安に伴う、工場の稼動体制懸念。

そして今なお進行中の案件ですが、タイの洪水影響に伴う部品メーカーの被災。

サプライチェーン、という言葉を聞くようになって久しいものの、これほどチェーンが分断されることがかつてあったでしょうか。

たいていの自動車メーカーには、自分達の工業製品としての品質を保つための、その使用部品についての規準を持っています。また、場合によっては、単に規準だけが守られれば良いのではなく、当然製品における企業秘密を、NDA等をしっかり締結することによって、生産を委託したり、基幹部品として位置づけることができる場合もあるでしょう。

そういう意味では、安易に代替先を見つけることは非常に困難なのは、こういった分野に対して専門外の自分でも容易に想像が付きます。

自分達もコストダウンを目的に、供給先を絞り込んで、より大量発注を可能にすることで単価引き下げを狙ってきた、というのももちろんあるでしょう。一方で、供給元も、より一層の効率化を目指して、そもそも部品を作る工場の絞り込み、場合によっては部門ごと売却もしくは買収といった集約を行ってきているのも見て取れます。槇原敬之さんの歌ではありませんが、「ナンバー1よりオンリー1」の方がより企業は存在価値があるようには思います。でも、たいていは自ら「オンリー1」になるのではなく、数多くの敵が自滅もしくは擦り寄って、結果としてその分野でのオンリー1イコールナンバー1となっている構図も多いように思います。

既にオンリー1になってしまっている分野にて、代替を探すのは非常に困難なのでは、と思います。でも、自分達の事業を継続するためには代替を探さざるを得ない、場合によっては、代替先を作るぐらいの覚悟が必要なのかもしれません。

そしてなお、コスト削減努力を行わなくてはいけない。そして、コスト削減、という金勘定だけではなく、品質規準を守れる状態にしなくてはいけない。安ければ良い、ってものではない。でも、高いと製品売価に跳ね返る。この矛盾を解決しなくちゃいけない。

コストの考え方も見直す必要があるでしょう。製造している国の人件費等を勘案した原価、そこから運ぶ物流費、というのもあれば、これからは、その国が被災した場合の回復能力、統治の安定度合いなどもリスクとして見なくてはいけないのかもしれない。そんなことわかるか!ってところも正直あるでしょうね。でもわからないならわからないで、どうリスクを分散するのか、それこそ食品と同じように、「それはどこで作られているのか?」をもっと自分達が把握しておくべきなんじゃないか、と思います。
自分は購買部門に属したことが無いので、もしかしたらそんなことは当たり前に把握している、という話もあるかもしれませんが。だとするとなおのこと、二の手、三の手を用意しておく必要があるように思います。

自動車産業全体、とは言いませんが、自動車メーカー、としては、今年起こったことをきちんと振り返り、明日につなげることができるか、ということが非常に重要なんじゃないかな、と個人的には思っています。

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