自動車が売れない理由に関する私的考察4~「エコカー補助金」という”麻薬”の副作用?
毎年のこの時期がやって参りました。別に誰かに望まれている訳ではありませんが。
11月の第二週目の月曜日は「自動車が売れない理由に関する私的考察」と称して独自の観点から自動車業界に関することを勝手気ままに書かせて頂いてます。
2007年のエントリー
自動車が売れない理由に関する私的考察~それは「デザイン」と「塗料」
http://blogs.itmedia.co.jp/usrtodev/2007/11/1_514b.html
2008年のエントリー
自動車が売れない理由に関する私的考察2~自動車メーカー自ら”単なる移動手段”として商品づくりをしてきたから
http://blogs.itmedia.co.jp/usrtodev/2008/11/post-e85a.html
2009年のエントリー
自動車が売れない理由に関する私的考察3~【番外編】先日のエントリーへの補足および未だに感じる「電気自動車による市場参入」への違和感
http://blogs.itmedia.co.jp/usrtodev/2009/11/post-7a8c.html
・・・昨年などは、別に「自動車が売れない理由」でも何でもないですけどね(苦笑)
ただ、自分の中でこういったルールを作ることによって、一年に一回、自分が自動車業界に身を置く者の一人として、その時考えていることを棚卸ししても良いな、とも思い始めています。
毎年長い文章を書き過ぎなので、今年は思い切って文面を短くしてみます(笑)。
(実は手抜きなだけかも(爆))
昨年から今年に掛けて、「エコカー補助金」なる制度が展開されていました。実際それで自動車を購入された方も多かったのでは無いでしょうか?
次世代自動車振興センターの発表によれば(http://www.cev-pc.or.jp/NGVPC/subsidy/eco/eco_PDF/shintyoku.pdf)、適用対象となった、逆に言えばこの制度を利用できる「エコカー」の販売が、約359万台あった、ということになります。
自動車検査登録情報協会の発表する最新の(といっても7月末ですが(苦笑))自動車保有台数統計(http://www.airia.or.jp/number/index.html)を元に、今回の「エコカー補助金」の適用対象となるカテゴリーの総計を出してみる(※)と、約7,224万台、ということで、時系列が一致していないので正確な比較はできませんが、約5%弱の自動車が今回の「エコカー補助金」の対象となり増車、もしくは代替されたことになります。
おかげで、自動車業界としてはメーカーにしても、販売会社にしても、また部品を供給している会社も含め、本年度の上期だけを見れば、良い決算になったと思います。
しかし一方で、エコカー補助金が終わった途端に各地のショールーム等でお客様が集まらない、といった話も聞くようになりました。元々制度的に一過性のものではありますから、その時期を過ぎてしまえば、「ま、別に今買わなくちゃいけない理由も無くなったし」ということもあるでしょうし、何より、販売の現場ではこの機に買っていただくのが一番お得!とディーラーにて関わられているお客様に総当たりをしてきて、逆に言えば、「それでも買わなかった人」だけを残す形となっている訳ですから、その方に余程の事情が発生しない限り、お買い求めいただく機会が無い、とも言えます。
あくまで個人の主観ですが、過去これほどまでに、前年度実績に対して大幅に販売台数が変化した年は無かったように思います。それは然るに、お客様自身が必要とすべき時に無理の無いタイミングで購入するからであって、代替サイクルが長期化してきている、と言ってもある程度の販売数量は確保できてきた訳です。
今回の補助金制度、一時的な視点から見れば業界的には非常にありがたい制度ではあるものの、これにより、お客様自身の本来判断すべき車両購入タイミングを破壊してしまった、と個人的には思っています。まだまだ、と思っていた人が「じゃあ」というのは、その将来発生したはずの需要を先食いしただけに過ぎません。
また、それは販売、だけではなく、お客様の車両のサービス需要の発生のタイミングの破壊でもあります。例年ある程度発生していた点検や車検、といったタイミングの波が、今回のこの約1年半に販売された車両の分だけ対象が減少し、また、「エコカー補助金」対象車の車検を迎える2012年4月からの1年半だけ一旦集中し、残りの下期は減ることになってしまうので、整備工場のキャパシティ(それは設備も人員も)をどう確保し、減少時はどう対処するか、ということにもつながるのでは、と思っています。
心配ばかりしていてもキリがありませんが、自動車業界に身を置く者としては、今の「エコカー補助金」反動減対策ももちろん重要ではありますが、整備工場のキャパシティ(俗にサービスキャパシティと言ったりしていますが)の方が気になる今日この頃です。
※貨物+乗合+乗用の自家用の合計を求め、この表に書いていない軽四輪車の自家用・事業用については、軽自動車検査協会の7月末統計情報(http://www.keikenkyo.or.jp/statistics/backnumber.html)から求め、事業用を減算しました。