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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

やっぱり本人の話を聞かないうちに勝手に決めつけてはいけないと思い知りました~研究者・技術者のキャリアパスについて

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ITに強いビジネスライターの森川ミユキです。

DXやデータドリブンといった観点からリスキリングという言葉が流行し、キャリアパスに関しても全面的に見直そうという動きがあるようです。そういう流れの中で、働き方改革とか多様性とか女性地位向上といったテーマ(いろいろ重なっていますが)も一緒に考え、改善していくことで日本全体が変わっていくのではないかという期待をしております。

それはさておき。

キャリアパスの話でよく出てくるのは、「技術を極めたいのでマネジメントはやりたくない」という人をどう処遇していくのかということです。AIをはじめとして、あらゆる分野でテクノロジーが高度化する中、技術を極めながら部下をマネジメントするのは年々難しくなっているのかもしれません。

ただ、だからこそ1人で研究・開発するのも難しくなりました。たくさんの人数で共同して行っていくのであれば、やはり技術力の高い人にマネジメントをしてもらわないと進まないというジレンマもありまして、簡単に研究・開発に専念してくださいとも言いにくいのです。

そういう中で、ちょっと膝を打つような意見を見かけました。それは「ノーベル賞を獲った山中伸弥教授でも、600人もの所員がいるiPS細胞研究所の所長をしているではないか。マネジメントしたくないというのはわがままだ」というものです。

やっぱり両方やれるスーパーマンでないと上にはいけないと、私は妙な納得をしたのでした。

ところがですね、今朝になって、やっぱり私は浅はかだなあと思い知ったのです。

この記事を読んで、大きな勘違いをしていたことを知り、私自身のスタンスについても大いに反省したのです。

「先生、なんか万能細胞ができてます」「99.9%、これは何かの間違いだ...」山中伸弥教授による《iPS細胞の作製成功》はいかに実現したのか?・・・

この記事、前編・中編・後編の3回にわたっています。ご自身のキャリアパスに悩みや迷いのある研究者・技術者の方は、ぜひ3回ともお読みになることをおすすめします。

で、私も3回全部読んで知ったのですが、山中教授はノーベル賞を獲るまでも研究リーダーをされていましたが、そのときは600人ものマネジメントをしていたわけではないということです。そうなったのはノーベル賞を獲得して以降で、ご本人も社会貢献や後進育成が自分の使命と考えて引き受けられたのでした。

そして60歳になった今、やり残した研究があるというので所長を辞め、再び小チームの研究リーダーとして新しい研究に取り組んでおられるということらしいのです。

ノーベル賞級の実績がある方でも、やはり600人もいる組織をマネジメントしながら、研究に没頭するのは難しいということなんですね。あたりまえと言えばあたりまえなのですが、つい「超一流なら」と思い込んでしまったのでした。

そしてもっとあたりまえのことなのですが、本人の話も聞かずに(最低でも本人のインタビュー記事を読まずに)勝手に決めつけてはいけない――と改めて心に刻みつけたというわけです。

普段、取材して記事を書いているので、本人から話を聞くことの重要性をよく知っているはずなのに、この体たらく。反省しております。

ただ本当に技術や研究を極めたいなら、一人では一線級のテーマには取り組めない時代ですから、小チームのマネジメントができないとやはり務まらないというのは変わりません。だからマネジメントは嫌というのはわがままとまでは申しませんが、自らの目標を狭めることにはなると思います。


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