オルタナティブ・ブログ > ビジネスライターという仕事 >

ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

デジタルに抵抗するのは、たぶんデジタルが嫌いというのが本当の理由ではないと思います

»

ITに強いビジネスライターの森川ミユキです。

DXがなかなか推進できないとお悩みの企業向けに、デジタル嫌いの社員をデジタル好きにするという研修があるみたいです。Facebookだったと思うのですが、そのような広告を見ました。

私、フラなどを習っておりまして、私のいるクラスでは、実は私が最年少だったりします。60代後半から70代の方がほとんどで、一見デジタル嫌いに見えます。

でも必要であれば、LINEもメールもみなさん使いこなしているんです。知らなくていい機能は、覚えたくないだけなんですね。

ましてや40代、50代の社員のみなさんがデジタルを使いこなせないなんて、まああり得ないです。だって私がまだ30代だった1990年代でも、私がいたのはSI企業だったこともありますけれど、1人1台パソコンがありましたから。

もちろんデジタルが嫌いな人も中にはいるでしょう(と書きながら、スマホを持っている時点でデジタル嫌いのはずもないので、どんな人なのかは想像できませんが)。しかし私がこれまで取材してきた話を元に考えると、DXとかデータドリブンとかいったことに抵抗する人は、デジタルが嫌いというよりもメリットがないことが嫌いなんです。

よくあるのは、デジタル化したことで、余計に仕事が増えたとか、時間がかかるようになったというケースです。

昔、Excelの結果をわざわざ電卓でチェックしたという笑えない笑い話もありましたが、これと同じようなことがAIを使うと起きがちなんですね。

ChatGPTで作成した文書だって最終的な修正は必要です。一般に企業向けに作成されたAIモデルは、ChatGPTほどの精度はないので直す量はもっと多いです。精度を高めるには、修正データを学習データにしないといけないので、用意したアプリを使って修正するルールにするのが普通です。そのアプリが使いやすかったらいいのですが、そうでなければ作成された文書を直接直すほうが早いのでそうするのが普通です。そうなると学習データが蓄積されないので、いつまで経っても精度が上がらない。

そういったことがとても多いんです。

要するに、ユーザーにとってほとんどメリットがない上に、仕事が増えてしまうということです。もちろんアプリを使ってもらえれば学習データが蓄積されて、精度が高まり、便利になる――すなわちメリットが出ることになるはずなのですが、それまで待てないというのが、ユーザーの素直な気持ちだと思います。

そんなところに「デジタル嫌いの社員をデジタル好きにする」なんて謳い文句の研修をやったら、ますます反発を買い、DXはさらに進展しないことにもなりかねません。

社員がデジタル嫌いだからDXが進展しないなどと早とちりせず、デジタルが使われないのならぞれはなぜなのか、ユーザーに率直に話を聞くのがいいと思いますよ。


最新のIT動向やITのビジネスへの応用について、経営者などビジネスパーソンに分かりやすく伝えることができるライターです。経営レベルでのIT活用について書ける数少ないライターの一人とお客様から評価されています。

最近注力しているテーマは、下記の通りです。

特にビジネス戦略やデジタルマーケティングに関しては、ポーター、コトラーはもちろん最新のビジネス理論(デザイン思考、ジョブ理論等)やIT導入・運用方法論(アジャイル開発、DevOps、MLOps等)を含めた深いコミュニケーションが可能です。

クラウド、データ活用基盤などITインフラ関連も得意としています。

▼お仕事のお問い合わせはこちらへ

top001.jpg  

Comment(0)