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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

大谷選手が私の言いたかったことをとてもわかりやすく実践してくれて感激です

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ITに強いビジネスライターの森川ミユキです。

前回こんな記事を書きました。

正解のない時代に最も大切なことは数打つことで、そのためにはあたりまえですが、これを捨てなければなりません

それをお友達がFacebookでシェアしてくれまして、彼は完全に理解してくださっているようなのですが、そのお友達(私のお友達ではありません)の何人かの方が、どうも気に入らなかったみたいなんですね。

まあ私自身、いつものことですが、今月は特に戯れ言ばかり書いていると思っていますし(そのエクスキューズもあったりするのはバレていると思いますが)、そもそも正解がないと言っているのですから、自分の言っていることも正解かどうかわかりません。だから腹が立つということはなかったのですけど、ちょっと落ち込みました。

「何人かの方」と書きましたが、気に入らなかった点として共通していたのは、「正解がないから自意識を捨てるというのが違う気がする」というものでした。

ああ、これはもしかしたら自意識の定義が違うんだと思い、改めて自意識とはどういう意味か調べ直したら、まあこれが詳しいわりにわかりやすかったです。

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「自意識」の意味・わかりやすい解説

いわゆる「近代的自我」というものでしょうか。確かに、私が中高の頃は、これって何かすごく大切なもののように教わりました。しかし今ではけっこう批判されている考え方のように思います。

しかし私が言いたかったのは、自我や自己意識の否定なんて話ではなく(それらを批判しようと思ったら、とてもとても2,000文字弱では書けません)、「自意識過剰」でいうところの「自意識」です。だから「強すぎる自意識」「過剰な自意識」などと書けば、批判された方々の琴線に触れなかったのかもしれません。

ただ「普通?の自意識」も私はないほうがいいと思うので、あえて「強すぎる」といった形容詞を書かなかったのでした。なんてエクスキューズを書いているのは、私もやっぱり自意識過剰なのだろうと。まあこういう話題は難しいですね。どうしても自己言及(矛盾の温床です)を伴うことになるからでしょうか。

正直に言うと「自意識」なんて言葉も、それ以前に「正解」なんて言葉も、私などには定義できないんですよね。状況や前提が変わると「正解」も変わる、だから正解などないというような意味合いで「正解はない」と言っています。

よけいごちゃごちゃしてきましたか? ならこういうときは、たとえばなしがいいのでは。

昨日(2023年3月16日)のWBC準々決勝「日本×イタリア」戦をご覧になったでしょうか。そこで大谷翔平選手がまさかのセーフティーバントをしたのです。

ご覧になっていなくても、検索すればいくらでも記事が出てくることかと思います。というか、リンクすればいいのか。

大谷翔平が見せた勝利への執念、先制点を呼ぶ奇襲セーフティバント ファンは驚き「世界中の全員が驚く大谷バント」「なんでもできるなこの人w」

引用もしておきましょう。

エンゼルス・大谷翔平投手が「3番・投手」でスタメン出場、投手として1回から溢れんばかりの気迫で吠えまくった大谷だが、打者としては3回に球場中の意表を突くセーフティバントを決め、待望の先制点へと結びつけた。

 なかなか得点に繋がらない3回、大谷が第2打席に立つと1死一塁からまさかのセーフティバントの構え。相手の守備位置を見た上での奇襲で、そのまま三塁線へと転がすと、相手投手が必死にさばくものの悠々セーフ。1死一、三塁とチャンスを拡大に成功し、先制点を呼び込んだ。

 この技ありバントで空気が変わったかのように打線がつながり、先制した直後には6番・岡本の3ランなどで計4得点。大谷が投手としても打者としてもチームを鼓舞した。

1死一塁で、稀代のホームランバッターの登場です。ホームランでなくても2塁打で先制得点、なんてことを日本中が期待していたと思うんですが、まさかのバントですよ。見てて震えました。そしてこの記事の通り、それに続けとみんなが打ち始めたのでした。

試合後のインタビューで、「(大谷シフトが敷かれる中)一番リスクが小さくて、最もリターンが大きそうな選択をしたら、たまたまうまくいった」といったことを大谷選手はおっしゃっていました。

彼は、それを正解だったとはけっして言っていないんですね。「一番リスクが小さくて、最もリターンが大きそうな選択」だったと言うんです。リスクがゼロではありません。だから失敗する可能性も十分にあった。でも彼はやったんですね。

失敗して、しかも負けたりしたら何を言われていたかわかりません。まあ好感度がむちゃくちゃ高いから「大谷がやって失敗したんだからしょうがない」と言う人が大半でしょう。でもWBCみたいに日本中が注目している大会だと、ひどいを批判をする人が少なからずいて、そういうやつに限って声がでかく、また書き方もむちゃくちゃひどいんですよね。

とはいえ、それを気にする大谷選手じゃない。だからできたこと。彼は「変なプライドはなく、勝利に貢献することだけ考えた」といったことをおっしゃっていましたが、私のいう「自意識」はまさにこの「変なプライド」のことです。

大谷選手は、自意識よりももっと大きな何かに突き動かされて生きているのでしょう。だからこんなチャレンジを日々、やり続けることができたのだと思います。挑戦を続けるがゆえに失敗も多いです。このCMが如実に伝えてくれています。

Salesforce CM 出演:大谷翔平「次の世界へ。失敗の数だけ、成長できる。」篇 30秒

私は実は、外資系IT企業の意識高い系CMが好きではなく、このCMも「SFDCが金にものを言わせて、我らが大谷くんをつまんないことに使うんじゃねえよ」など毒づいたりしていたのですが、このたびちょっと好きになりました。批判的なコメント(しかも間接的だけど、私の目に触れるかもしれないのを計算しているような、嫌な底意地を感じる)に私の自意識が傷ついていたのでしょう。これぞまさしく「自意識過剰」と反省しております。


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