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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

ライター発注の費用対効果を高めたいマーケティング部門の方々へ

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ITに強いビジネスライター 森川ミユキです。

「○○は××が9割」というタイトルの記事を書いたらバズるかなと思ったのですが、もはや時代遅れでした(^0^;)。敬愛する出版社勤めの編集者の方々には、くれぐれもこんなタイトルで企画を出さないように老婆心ながら申し上げたく存じます。

さて最近、内製化とかリスキリングなんて言葉が流行っています。データ分析とかシステム開発ならいいのですが、オウンドメディアのコンテンツを内製化されたらいやだなあと思います。私はそれで年収の半分を得ているものですから。

とはいえそんな暴挙に走る会社は少ないでしょうから、ライターへの上手な発注の仕方をお話ししたいと思います。

なぜコンテンツの内製化が「暴挙」なのか?

その前にコンテンツの内製化が暴挙である理由を書いておきたい。それは圧倒的にコスパが悪いからです。

オウンドメディアのコンテンツ作成における私の発注元は、IT企業ばかりです。JISA「2021 年版 情報サービス産業 基本統計調査」のデータから1人当たりの年間売上高を単純計算すると31,484,200円になります。月22日労働として、1日当たり約12万円稼いでいる計算になります。

これは全事業者全従業員での平均ですから、私のお客様の属性(基本的に上場企業であり、取材相手は役職クラス以上が大半で役員も多い)を考慮すると、安く見積もって1日当たり20万円は稼いでいると考えられます。

記事を仮にご本人が書いたとしたら、2~3日はかかると思います。つまり40万円~60万円の売上高(※1)に相当する時間を使わせることになります。しかし私に頼めば、1時間~1時間半の取材で、細かい単価は言いませんが、10万円以内でやってもらえます(計算して安すぎることに気づきました。もっとください!)。

ライターに依頼するほうがどれだけコスパがいいことか!

しかも早いんです。

システム開発を内製化したい理由はコスパだけではなく、スピード感にあるのです。ベンダーに頼むとちょっとしたことで、数十万円の見積もりになり、しかも半月ぐらいかかります。しかし執筆に関しては、絶対にライターのほうが早いです。なぜなら私が取材するような方々はみなさんお忙しく、マーケや広報に頼まれた執筆依頼なんて後回しにするに決まっているからです。そちらを優先してくれるような暇な方に書いてもらってもいい記事にはならないでしょう。

以上で、コンテンツの内製化が暴挙だと十分おわかりかと思いますが、念のために付け加えておくと、社員に書いてもらった文章を直すのはとても大変だということも忘れないでくださいね。

ライターに依頼する際に最低限やっておくこと

代理店も含めて50社以上のお客様とお仕事してまいりましたが、当然ながら発注が上手な会社と下手な会社がありました。

今回は、「基本のキ」ではありますが、発注が上手な会社が必ず行っていることを4つ挙げてみました。

  1. 読者ターゲットを明確にする
  2. ターゲットにどういうことを伝えたいか、何をして欲しいかを明確にする
  3. 簡単な構成案を作っておく
  4. 事前打ち合わせをやっておく

下手な会社はこんなことさえ考えていないということで、一緒になって考えてくれる私のようなライターがいなければ、効果の低いコンテンツを作って、お金をドブに捨てていたのだろうなと想像する次第です。

読者ターゲットを明確にする

オウンドメディアのコンテンツとはいえ、広い意味では「広告」なのです。それなのにターゲットが決まっていないとはどういうことだと思うのですが、一般的なIT企業のマーケ部門って別に広告のプロがいるわけではありません。だから代理店を使うところが多いのです(※2)。しかし代理店もNTTデータとか日立とかならまだしも、中堅クラス以下のIT企業には、だいたいしょぼい担当者をつけます(※3)。

なんか業界裏話みたいになってきましたが、とにかく広告なんですから、誰に読んでもらいたいかをハッキリ決めないといけません。

しかも絞ることが大切です。

たとえばIT業界のBtoB企業の記事ですと、大きくわけて3つの読者対象が考えられます。

  1. 経営者も含むユーザー層
  2. 情報システム部門の担当者
  3. 自社の製品を顧客に提案してくれるかもしれないIT企業のエンジニアや営業

当然ながらそれぞれで訴求する内容は違ってきます。1はいかにビジネスに役立つか、2はいかに安く・確実に導入できるか(効果もあればなおいい)、3はいかに自社が儲かるか(お客様が喜べばなおいい)ですよね。それなのに全部に響く記事をなんて言われた日には、全部にそっぽを向かれる記事しか書けないわけです。

まあこれは製品広告(事例記事含む)の場合で、コンテンツマーケティングではもっと広い読者セグメントが考えられますが、いずれにしても読者対象を列挙されても困るんです。

1回限りのお付き合いと割切れば何だっていいのですが、できればリピートが欲しい。そうなると効果が出ないといけないのですが、読者ターゲットがハッキリしなければ効果の出しようがないわけです。

ライターを1、2回使ってみてはすぐに変える会社が多いようですが、だいたいターゲットが明確でなく、また次項の伝えたいことやしてほしいことが明確でない会社がそういうことをします。自分に問題があるのにライターのせいにするんですね。

とはいえ絞るのが怖いという担当者も多いので、最近は「その中からメインターゲットを選んでください」という言い方をするようにしています。「メインに向かって書きますが、その他の人が読んでも面白いようにします。それでいいですか?」という感じです。

ターゲットにどういうことを伝えたいか、何をして欲しいかを明確にする

「だからさあ、広告(の一種)なんだからさあ、これ決めないでどうするの?」と思うのですけれど、そんなことを決めないといけないということさえ知らない人がたまにいるんですよ。

まったくノーアイデアではなく、漠然とあれもこれも伝えたい、あれもこれもして欲しいというのが、ターゲットと同様ですが、多いです。

伝えたいことはメイン1つにサブ複数(せいぜい3つぐらい)、して欲しいことは1つだけにしておきましょう。Webサイトのランディングページでも、して欲しいことが複数あるとコンバージョン率が下がるでしょ? それと同じです。

簡単な構成案を作っておく

これは次項の事前打ち合わせでライターと一緒に作ってもいいかと思いますが、先に簡単でいいので作っておけば、事前打ち合わせの時間がかなり節約できると思います。

5,000文字ぐらいの記事であれば、見出し5つ程度。各見出しごとに3~5個の箇条書きの項目があれば十分です。

それを元に議論して、ライターに質問票(インタビューシート)を作ってもらえば、意図から外れたひどいコンテンツにはならないと思います。ちなみに私は、構成案さえあれば質問票を作らなくても取材できますが、取材相手がしっかり準備したい人の場合にはインタビューシートを作成することをお勧めしています。

システム開発と同じで丸投げは失敗の元です。イメージに近いものを作ってほしいのであれば、構成案ぐらいは作っておくに越したことはありません。

事前打ち合わせをやっておく

30分でいいので、事前の打ち合わせはやっておきましょう。

説明する内容は既に挙げているとおりで、読者ターゲット、記事の目的・目標、構成案の3つです。これらについてライターにも意見を求めます。またライターに疑問点があれば(普通あります)、それにも答えておきます。

あとは取材当日の段取りを説明したり、締切を確定したりします。

以上をやっておけば、イメージと大きく違わない、質が良くまた効果もあるコンテンツが作れることでしょう。あとは良いライターを選んで、報酬をケチらないことが大切です!

脚注:

※1:あくまで少なく見積もってですよ。役員クラスなら100万円以上になるかもしれません。

※2:ここは内製化して、ライターにもっとお金を払おうと切に言いたいです(※3も参照のこと)。

※3:代理店経由の仕事は中抜きがひどくて、もはやよほどの友情がないとやらないことにしているので言いたい放題です。なぜ中抜きがひどいことを知っているかと言いますと、ある代理店の営業担当者が前代未聞の愚か者で、外注の私にCCでしたが見積書を送ってきたんです。「うわあ、こんな営業担当に払う給料があるのなら、私に払えよ」と思ったのは言うまでもありません。なお幸いなことに相手が一部上場企業でも外資系企業でも、直接ライターと契約する企業が増えています。


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