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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

本当は恐ろしいシンギュラリティ~今さらですが「シンギュラリティ」とはそんな意味ではありません

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ITとマーケティングに強いビジネスライター森川ミユキです。

最近、美術でも音楽でも文学でも、AIが人間同様の作品を生み出し始めていると言われていて、アーティストやクリエイターが職を失うみたいな話が盛んです。確かにグラフィックアートなどを見ていると素晴らしいクオリティで、しかも世界観などを示すワードを渡すだけで絵ができちゃうみたいな感じで、脅威を感じる人たちがいるのは理解できます。

ですが、私にはCGやMIDIなどと同じで、コンピュータが人間のサポートをしているだけにしか見えません。

なぜなら精神性のようなものは、AIにはまだないと思うからです。いろいろ組み合わせていろんな音楽ができるとしても、どれが一番いいかを選ぶのは所詮人間なのです。

それが素人にもできるようになると怖れているプロがいるのかもしれませんが、芸術や文学においてもっとも大切なのは精神性であり、精神性が高い人はちゃんと残るはずです。技術で劣る人がAIのサポートで台頭してくるかもしれませんが、精神性がなければその人の「作品」は評価されないわけで、結局残るのは精神性の高い芸術家だけです。その手段が今までより「民主化」されるだけの話だと思います。

これは芸術だけでなく、武術でもスポーツでもダンスでも何でも、技術よりも精神性を身につけるほうがずっと大変です。これらをやられている人は共感してくださるのではないでしょうか。

おそらくこういうことで人間が職を失うと思う人は、受け手側の精神性をあまり信頼していないのでしょう。まあ確かに・・・。やめておきましょう(笑)。

私が問題に思うのは、こうした一連の動きを称して、「シンギュラリティが既に始まっている」という意見です。しかし「道具」が人間の能力を超えることを「シンギュラリティ」と言うのなら、それは打製石器の発明(発見?)以来、そうだったのではなかったですか?

(あ。でも『2001年宇宙の旅』のエンディングを見ると、シンギュラリティ=技術的特異点かもしれないなあ・・・)<すみません。混乱を招くことを書きました。

AIとは人工の知能ですから、道具が人間の能力を超えることを「シンギュラリティ」というのであれば、AIが人間の知性を超えることがシンギュラリティと言っていいでしょう。しかしながら、AIが人間の知性を超えることがシンギュラリティではありません。シンギュラリティの言い出しっぺであるレイ・カーツワイル博士は、これから7年後の2029年に「AIが人間の知性を超える」と予想しています(これはいわゆる「汎用人工知能」の登場を意味しています。が、人によって基準は違いそうです)。

AIにおける「シンギュラリティ」とは、AIが自分より優れたAIを作れるようになることを意味しています。少なくともカーツワイル博士はこの意味で言っているのですが、彼のあの分厚い本を読んだことのある日本人がほとんどいないために、エセAI専門家による「AIが人間の知性を超えること」が日本では採用されているようです。しかし上に書いたように、これは間違いなのです。

AIが自分より優れたAI作れるようになるとその先のAIはどうなるのか、もはや人間には予測できなくなります。だから「技術的特異点」というのですね。予測不能なので、もしかしたら人類にとって素晴らしい世の中になるかもしれませんが、地球を残すなら人類は邪魔だとAIが結論すれば全力で人類を滅亡させようとするかもしれません。

そういうSFみたいな話です。実際そういうSF小説もあります。『未来の二つの顔』(J.P.ホーガン)がそれで、小説はちょっと読みにくいのですが、星野之宣さんのマンガ版は絵もきれいでとても読みやすいです。ちなみにカーツワイル博士は、ネットワークの中で人間とAIが一体化し、真の「不老不死」が達成されるといったような、こちらもSF的なビジョンを描いています。

要するに「信じる信じないはあなた次第」のお話だったりするのですが、実際に起きたとしたら誰も制御できません。これはマジで恐ろしいです。2045年に本当にシンギュラリティが起こるのでしょうか?

そのとき私は82歳で、まだ生きている可能性は高いです。その前に、2029年までに汎用人工知能が登場するのかをまず見届けたいと思います。


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