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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

フリーライターの営業

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facebookの友達がリンクしていた記事を読み、まったくその通りと思ったので、まずはそちらをシェアします。

フリーのクリエイターがジリ貧になり食えなくなる4つのパターンとその対策

ひと言でまとめると、「一つの取引先に依存せず常に複数の取引先とつきあい、変なこだわりを捨てて世の中のニーズに応え、請負仕事だけではなく自ら仕事を作り出し、リアルだけでなくネットも活用せよ」ということです。

当たり前のことと思うかもしれませんが、僕もきちっとできるようになって、まだ1年も経っていません。そして、できるようになったら、本当にひっきりなしに仕事が入るようになりました。

できなかった理由は簡単です。

リンクした記事に書かれているようなことが必要(必要と思わない方は、ここでお帰りください)だと思っていても、「クリエイターの営業」の全体像が分かっていなくて、営業そのもので試行錯誤してしまっている――これに尽きます。

試行錯誤すべきことは、もっと細かいところにあります。営業の大きなパターンで試行錯誤していては、さすがに時間がかかると思います。

そこで、フリーライターの営業の全体像について、お話ししたいと思います。

他のクリエーターと言われる職種にもあてはまると思いますが、職業として携わった経験がないので、内容的にはフリーライター限定でお話したいと思います。

なお、ライターに関しては他に本業がある人が多いと思います。そういう方は本業経由の営業のしかたがいくらでもあるはずで、この記事の対象ではありません(参考になることはあるかもしれませんが)。対象は、ライター専業またはそれを目指す方です。

最初は自己認識

ライターの営業のステップは3つです(下図、クリックすると拡大図)。


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最初は、自己認識です。分野を絞り、さらにその中での強みを見つけて、ライターとしての「ウリ」を確立することです。

「何でも書けるライター」という需要はありません(あっても、文字単価1円を切るような仕事でしょう)。すでに功なり遂げた人に、自由なテーマでエッセイを頼むことはありますが、一介のライターにそんな依頼はありません。

編集者は、紙媒体でもWeb媒体でも関係なく、特定のテーマについて書けるライターを探しています。そこでの競争相手が少ないほうが営業は楽です。

たとえば、僕はITに強いビジネスライターと名乗っています。職業としてはフリーライターですが、分野はビジネスです。その中でも強みは「ITに強い」ということです。

ただし、プログラミングの指南が得意というわけでもなく、プロ向けに深い技術解説ができるわけでもない。また、子供のころからお金がないのでガジェットなどにも詳しくありません。

しかし、ITのビジネス活用というテーマなら、たぶん日本のライターの中ではトップクラスだと思います(これ以上を求めるのなら、IT系のコンサルタントに記事を書いてもらうしかありません)。

さらに、システム運用専門誌の編集部に深く関わっていたことがあり、年々重要性が増しているのにあまり書ける人がいない「システム運用」の記事を書くのが得意です。

以上が僕の強みなのですが、今年に入るまではこの強みで勝負していませんでした。勝負するようになってからは、今のところ仕事に困っていません。

なんとなく仕事がないのであれば、自分の強みをまず見つけましょう。

応募とHPで、実績と人脈を作れ

僕自身のライター歴は8年ほどですが、専業でやろうと思ったのは昨年の8月でした。

幸い過去の実績はありましたが、それで仕事が取れるほど甘い世界ではありません。

ほぼ新人と変わらない状況の中で、僕が最初にやったのはHP作りでした。WordPressのフリーのテンプレートを使って、スマホにも対応したページを2日ぐらいで作り上げました。。

HPには、公開できる全実績を載せています。これがあるとライター募集への応募が楽になるからです。

僕は、HPを作り直したぐらいで注文が来るとは思っていませんでした。それよりも、ライター募集に応募するほうが確実だと思いました。

ライター募集では、かならず過去の実績を書くように求められます。そのときにHPへのリンクだけで済むというのが、HPを作り直した動機だったのです。

仕事がないのなら、ライター募集に応募しましょう。そのためには、HPに実績を載せましょう。

嘘を書いてはいけませんが、実績豊富に見えるようにしましょう。テキストだけでは無理がありますが、写真や図版が載せられてレイアウトも自由なWebであれば、いろいろと工夫できるはずです。

断られるのが嫌で応募しない人が多いのですが(僕も昔はそうでした)、仕事がないときにはそんなことも言っていられないし、応募して断られるのにHPがあれば仕事が来ると思っているのだとしたら、ちょっと浮世離れしていると言わざるを得ません。

とにかく近々の実績を豊富にすることです。そして、仕事を通じて人脈も作ることです。

人脈や実績は、どんどんHPに載せます。守秘義務があるのなら、匿名にして差し支えない範囲で公開してください。

あと、HPのSEOは必要です。SEOは「分野と強み」でやります。

僕の場合は「ITライター」、「ビジネスライター」で検索すると常に1ページ以内に出て来るようにしています。

今どきのSEOには、お金は掛かりません。上位表示したいキーワードについて毎日のように自分のHPに書くだけです。ライターにとってはうってつけの作業です。

月に1万回以上も検索される激戦区キーワードで勝負する必要はありません。月に10件も検索があれば十分です。検索時にトップ3にあり、discriptionが検索者の琴線に触れるようならば、確実に見てもらえるでしょう。3カ月に1つずつでも取引先が増えて行えば万々歳です。

僕の場合は、分野が特化しているためリピーターが多く、月に1社ずつ増えてしまったら、とても仕事が追いつきません。

紹介が出始めたら、業績拡大のチャンス

ライター募集に応募しまくり、HPのSEOにも取り組むだけで、仕事は増え、顔も広くなります。

続けていると、「紹介」で仕事が来るようになります。

そうなったら、そろそろ自分の企画を出版社や媒体側へ出していくことも考えましょう。

紹介で仕事が来るというのは、力量が認められている状態です。編集部に自分がやりたい仕事の企画を出しても、耳を貸してもらえるようになっています。

すぐに採用してもらうのは難しいかもしれませんが、知恵は貸してもらえるでしょう。フィードバックをもらって、さらに企画を練り直します。

自分の企画が、連載されたり書籍化されたりする。するとまた、仕事が広がっていきます。そのときには、新しい自分を認識するために、ステップ1に戻りましょう。

逆に、なかなか紹介が来なかったり、企画が通らなかったりする場合は、ステップ2に戻って実績と人脈作りに精を出しましょう。

紹介も企画通過も、母数が多いほど得やすくなります。

試行錯誤は細かいところで

フリーライターの営業の全体像は、お分かりいただけたでしょうか?

繰り返しになりますが、この3つのステップ自体を試行錯誤しないことです。ステップは4つのほうがいいのではないかなどと考える必要はありません。

試行錯誤するのなら、そこではなく、たとえばSEOだとか、応募書類の書き方だとか、企画の出し方だとか、そのようなところですることです。

本記事では、そのあたりの具体的なことは割愛します(それぞれ1冊の本になりますし、しかも、既にたくさん本が出ています)。

最後に、「このようなノウハウを無料で公開して、お前に何の得があるんだ?」と言われるかもしれません。

僕が一番怖れているのは、実力のあるライターが必要以上に安い報酬で執筆することです。同じ分野にそういう人がいたら仕事が回ってこなくなるし、単価も下がってしまいます。

実力があっても営業力がないと、安い仕事を請けてしまいがちです。そうなると、その人には損なことだし、僕には脅威となります。

実力があるのに稼げていないという自覚があるライターさんには、ぜひとも営業力をつけていただきたい。そうしていただけると、僕も助かるのです。

▼「ITに強いビジネスライター」森川滋之オフィシャルサイト

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