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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

副業がライターならわかるのだが

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今回は、フリーライターが副業をこなすというのとメディアへの進出を狙うということについて、僕の考えを書きます。あくまで僕の経験に基づく個人的な意見なので、参考程度に捉えていただければと思います。

2015021101.png▲クリックすると拡大図。この表の全体はこちら

結局どっちつかずに

まず、副業をこなすということから書いていきたいと思います。

僕は逃げるようにして会社を辞めて独立した経緯があるので、独立したから偉いなどということは思っていません。むしろ組織での仕事を続けられる人をリスペクトしています。

ただ、最初はユーザー企業に常駐するITコンサルタントをやっていたのですが、業態としては会社員と変わりません。なので、せっかく思い切って会社を辞めたのに、これでは単に「保障のない会社員」になっただけだという思いを抱いていました。

そこで2年ほどこの仕事を続けたあげく、フリーランスになろうと決意しました。このときに立てた目標は、執筆と講演(セミナーを含む)で食べて行きたいというものです。

どうしたら実現できるのかが今一つ分からなかったので、ビジネスコーチと呼ばれる人に相談したところ、森川はコンサルティングができるのだからと、下図のような「ビジネスモデル」を提案してくれました。

2015021102.png最初は、上図のそれぞれの四角のコンテンツが食い違っていて(どんなバカだと思うでしょうが、人間夢中になりすぎると自分のやっていることが見えなくなります)、仕事がもらえず苦労しました。仕方なく「副業的」に執筆の仕事をもらって、何とか食いつなぎました。

コンテンツがそろってくると、コンサルティングの受注が徐々に増えていき、一時期は結構な売り上げになりました。でも、しばらくしたら、「何だか自分はどっちつかずだなあ」と悩み始めたのです。

●コンサルタントにとってはライターは副業

鋭い方はとっくに気が付いていると思いますが、上図はコンサルタントとして成功するビジネスモデルの1つです。コンサルタントになりたかったわけじゃないと、成功してから気づいたんですね。

どちらかというと書くほうに特化したい――これがどうも僕の欲求だったようです。

その後、もう一度コンサルタントを目指したりなどしたこともあり、はっきりとこの欲求を自覚していなかったのですが、昨年の夏にそれにはっきりと気が付きました。そこで、書くことに集中してダメなら、どんな仕事でも雇ってくれるのなら甘んじようと覚悟を決めたら、うまく回り出したのです。

さて、僕自身の例をまとめると、ライターになろうとして副業的にコンサルタントをやっていたら、結局は副業が本業になってしまったということでした。この経験があるため、フリーライターが副業に手を出しながら、ライターとしてのアイデンティティを持ち続けるのは難しいと思うのです。

執筆や講演で成功しているコンサルタントや経営者、あるいは会社員も実際にはたくさんいます。専門誌の寄稿などを見ていると、フリーライターよりもこれらの方たちの書く記事ほうが多いぐらいです。しかし、この方たちにとっては、やはり執筆は副業なのです。

ところで、当時は「仕方なくもらった副業的な執筆の仕事」が、現在の仕事に一番役立っているわけで、このあたりに人生の面白さを感じています。

●作家とフリーライターも少し違う

食べるという意味では、作家を目指すというのは、もちろんありでしょう。

ここで、そういう区別に意味があるのかどうかは措くとして、僕の中では作家とフリーライターは違うものです。

たとえば、Wikipediaの「作家」の項には、28の職種がその例として挙げられています。そのうち、いわゆる「執筆業」に該当する職種だけ、以下に引用させてもらいます。

小説家
ノンフィクション作家
シナリオライター
劇作家
コラムニスト
随筆家
放送作家(≒脚本家)
漫画原作者

最近は、ビジネス書を上梓する人を「ビジネス作家」と呼ぶ例もあります。世間的な認知はまだまだなのかもしれませんが、これも付け加えたいと思います。

どれを見ても、「作家」というのは、創作活動を通じて自分の考えや世の中の面白いことなどを伝える職業だと言えます。僕もコラムを書きますし、ビジネス書も出していますから、作家の端くれと言えますが、アイデンティティはフリーライター(肩書はビジネスライター)です。

これはどちらが上とか下とかという話ではないのです。以前も書きましたが、僕はフリーライターというのは専門職だと思っています。「文章化ということに専門性があり、その専門性に対価を払う人がいる」というのが、僕のライター職の定義でした。僕が、自分の仕事とはまさにこれであり、いわゆる作家とは違うと思っているだけのことです。

実際には、作家もライター職の1種という言い方もできなくはありませんし、結局書くことに特化しているわけですから兼業も可能です。作家への転身も全然OKです。

ただ、作家で食べるのも、フリーライターで食べるのも、なかなか難しいという意味では変わりない気がします。

●マルチタレントだってアリ

ライターとしてのアイデンティティを保ちながら、メディアに露出していき、最終的にはマルチタレントを目指すというのが、実は多くのライターがゴールと考えていることなのかもしれません。

僕も憧れていた時期がありました。今は、正直しんどいなと思っています(なるのが難しいという意味と、仮になれたとしてもストレスに耐えられないという両方の意味です)。

そのようになれる人は、本当に一握りです。しかも、実力だけでなく運の要素も強いと思われます。

さらに大変なのは、テレビなどで売れっ子になったとしても、それがゴールじゃないということです。むしろスタートだと言えます。

ヘタに売れてしまって、その後悲惨な人生を歩んでいる芸能人は掃いて捨てるほどいます。

こればっかりは、自分で成り上がるというよりは、「あいつ面白いから使ってみよう」という感じで周りに引き上げられる人のほうが長続きするような気がします。

どちらにしろ知らない世界なので、僕に言う資格はないのですけどね。いろいろな覚悟さえあれば、目指すのはアリだとしか言えません。

実際にマルチタレントを目指している女性ライターに話を聴いてきたので、次回に書きたいと思います。

▼ビジネスライター森川滋之オフィシャルサイト

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