【自由と自分軸】「他者の欲望」に忠実なことをまず自覚する
今回は、「他人に選択を委ねている」ために不自由な人がどうしたらいいかについてお話ししたいと思います。
何度か見ていただいている図ですが、「他人に選択を委ねている」時点で、「選択肢が少ない」わけですから、不自由だと言えます。
●他人に選択肢を委ねていることを気づいていない
ところが、「あなたは他人に選択を委ねている」と言われてもピンと来ない人がほとんどなのです。
たとえば、独立起業したいのだが家族や親戚の反対でやめた、中小企業に就職が決まったので親に報告したら反対されて再び就活を始めた――などなど、第三者的に見たら「自分がない」、「あなたの人生は親のもの?」と思うような事例でも、本人からすれば「結局、自分が決めたことだ」となります。
それが、悪いこととは言いません。僕も、長い間そうやって生きてきましたし、そのときの自分の選択を責めるつもりもないのです。
選択の責任は自分にある、というのは当然のことでしょう。だから他人を責めるのは論外だし、かといって自分を責めてもいけないと思うのです。
ただ、「自分で決めた」というのも、違うのではないかと思うのです。
●「他者の欲望」であることに気づく
というのは、こういうことは無意識に行われていることだからです。
ラカンという心理学者は「欲望は、他者の欲望である」(『エクリ』)と言いました。ラカンは難解で、深入りするとボロが出るばっかりなのでこの引用だけに留めさせてください。
だが、僕はこの言葉を聞いて初めて、今まで自分が決めてきたと思っていたことが、実は周囲に決められていたということに気が付きました。
卑近な例でいえば、「優等生だったのは、本人が選んだというよりは、親がそうあって欲しいという欲望を叶えた」というようなことです(ラカンのいうことは、そんなに単純ではなく、もっと複雑なメカニズムがあるのですが、煎じ詰めればこういうことです)。
よく「今の自分は、自分の選択の積み重ねできている」という人がいます。僕は、これはちょっと嘘だと思うのです。
ただ、このように言い切れる人は、ある意味自由かもしれません。裏に「他者の欲望」があるということを、なんとなく自覚した上で言っているように聞こえるからです。
どちらにしろ自由への第一歩は、自分が他者の欲望にどれだけ忠実に生きているか(繰り返しますが、それは普通のことなのです)を自覚することではないかと思います。
●自分軸と比較する
では、どうすればそれができるのでしょうか?
それは、自分軸と比較することだと思います。そのための自分軸を作成する際には、「なぜ」を突き詰めて考えてください。
- とりあえず思いつくままに「なぜ」を挙げる
- 特に引っかかる言葉を探す(複数あれば、それぞれに以下の手順を繰り返す)
- その「なぜ」を思うようになったきっかけの経験を思い出す
- その時、自分がどう感じたかを思い出す
- その時、自分が本当は何が欲しかったのかを思い出す
まるで「カウンセリング」のようですが、「無意識」に沈んでいることなので、このぐらいしないと見えてきません(それでも、たぶん本当の「欲望」は見えないと思うのですが、健全な精神の持ち主であればそれで十分です。もし、心の病のような自覚があるのなら、それはもう自分軸でどうにかなる範疇ではありません。専門家に相談してください)。
僕は、セミナー中に20分から30分で初めて会った方の自分軸を言語化する「コンサル・ライブ」というのを10回ぐらいやりました。
その結果、本人が極めてすっきりし、その後実際に自分軸にしたがって行動し始めた方は例外なく、上記の「なぜ」の深堀りがうまくいった方です。
●それが誰の欲望であっても自分の選択肢となり得る
「他者の欲望」を全否定するということではありません。「自分の欲望」(心理学者の目から見れば仮のものかもしれませんが)と「他者の欲望」を仕分けできた瞬間に、どの欲望も自分の中では単なる「選択肢」となり得るということなのです。
これが「他者の欲望」は全部捨てて、「自分の欲望」にだけ忠実に生きるとなると、それはそれでひとつの選択ですが、多くの人には苦痛でしょう。
では、どうやって選択していくかというのも、結局自分軸全体を見て判断していくことになります。
納得性の高い自分軸が作れれば、周囲の関係者との話し合いも実のあるものになるでしょう。彼らは「彼らの欲望」を言ってくるでしょうが、自分軸さえあれば、それをどこまで受け入れるかの判断もしやすくなってきます。
話し合いの中で妥協することも出てくるかもしれませんが、それでもあなたの主体性がおかされたという感じは小さいでしょう。
最小限、この1つだけは譲らないというものがはっきりしていて、それが通れば、僕はそれで十分自由だと言えると思います。
▼ビジネスライター森川滋之オフィシャルサイト